バイデン氏、大企業の競争促進へ大統領令

(2021年7月16日)

President Joe Biden hands out a pen after signing an executive order aimed at promoting competition in the economy, in the State Dining Room of the White House, Friday, July 9, 2021, in Washington. (AP Photo/Evan Vucci)

By Aamer Madhani and Marcy Gordon – Associated Press – Friday, July 9, 2021

 ワシントン(AP)-バイデン大統領は9日、ハイテク、医療、その他の経済分野での競争を阻害する慣行を対象とした大統領令に署名し、「真の資本主義は公正で開かれた競争に依存する」という米国の理想を強化すると強調した。

 この包括的な命令には72の行動と提言が含まれており、バイデン氏は、生活費を下げ、賃金を上げ、イノベーションとより速い経済成長を促進すると述べた。しかし、バイデン氏の政策をルール化するために各省庁が新たな規制を作れば、大きな法廷闘争を引き起こす可能性がある。

 具体的には、賃金引き上げにつながるよう、競争を阻害する合意を禁止または制限する、ドラッグストアでの補聴器の店頭販売を可能にするためのルール変更を認める、インターネット会社による過剰な早期解約料を禁止するなどの要請が盛り込まれている。また、運輸省に対しては、手荷物が遅れたり、機内サービスが広告通りに提供されなかったりした場合に、航空会社に料金の払い戻しを義務付ける規則の制定を検討するよう求めている。

 ホワイトハウスで行われた署名式で、バイデン氏は大企業の一部について次のように述べた。「消費者のために競争するのではなく、競争相手を消耗させ、労働者のために競争するのではなく、労働者に対し優位に立つ方法を探している」と述べた。

 「はっきりさせておきたい。競争のない資本主義は資本主義ではない。それは搾取だ」

 ホワイトハウスは、バイデン氏の大統領令は、企業の力を弱めるために行動を起こした過去の大統領の伝統に従ったものだとしている。セオドア・ルーズベルト政権は、スタンダード・オイルやJ・P・モルガンの鉄道会社など、経済の大部分を握っていた強力な信託を解体した。フランクリン・D・ルーズベルト政権は、1930年代に反トラスト法の施行を強化した。

 しかし、専門家は、バイデン氏の壮大な構想は、競争を義務付けるものではないと指摘している。

 独占禁止を専門とするミシガン大学のダニエル・クレイン法学部教授は、「これは伝統的な大統領令というよりも、計画、課題のようなものだ。これは、バイデン政権にとって非常に幅広く野心的な政策課題であり、政権の方向性や優先事項について多くの示唆を与えてくれるが、実際にどうなるかは分からない」と述べている。

 大統領令には、新たな連邦規制につながる可能性のある消費者重視の取り組みが数多く含まれているが、労働者や消費者の保護を強化するための行動を各機関に促す、意欲的な文言も多く含まれている。

 企業や業界団体は、新型コロナウイルスの大流行から立ち直ろうとしている米経済の成長を阻害するものだとして、すぐに反対を表明した。

 全米製造業者協会(NAM)のジェイ・ティモンズ会長兼CEOは、「きょう発表された措置の中には、役に立つかどうか分からない、無意味なものもある。自由市場を損なうことで、これまで築いてきたものを台無しにしようとしており、また、労働者に任せれば成功はないという誤った考えを前提としている」と述べた。

 ホワイトハウスによると、約3600万人から6000万人の国民が影響を受けているとされる非競争的条項に対処するため、連邦取引委員会(FTC)に競業避止義務を禁止または制限するよう働きかけ、職務上の免許への不必要な制限を禁止し、雇用主が賃金や福利厚生の情報を共有することで協力して賃金を抑制したり福利厚生を減らしたりすることを防ぐため、反トラスト法に基づく指導を強化している。

 非競争的契約は、さまざまな業界の労働者がより高い賃金を求めて他の雇用主のもとへ行くのを阻止することが多い。バイデン氏は、州によってはファストフードのフランチャイズ店でさえ、低賃金の労働者にこのような条項を盛り込んでいると指摘した。

 「おいおい、パティの中身に企業秘密があるのかよ」とバイデン氏は言った。

 また、大統領令は、フェイスブック、グーグル、アップル、アマゾンなどのIT大手を対象に、合併への審査の強化を求めている。「特にインターネット上の支配的なプラットフォームによる」合併について、「新興の競合企業の買収、連続的な合併、データの蓄積、『無料』の製品による競争、ユーザーのプライバシーへの影響などに特に注意」を払うよう求めている。

 また、バイデン氏はこの大統領令の中で、連邦海事委員会に対し、「米国の輸出業者に法外な料金を請求している」とする荷主に対して措置を講じるよう求め、陸上運輸委員会に対し、線路の所有者に「他の貨物会社を公平に扱う義務を強化する」よう義務付けることを要求している。

 ホワイトハウスは、海運業界の急速な統合と急激な価格上昇により、米国企業が市場に商品を送り出すためのコストがますます高くなっていると主張している。ジャーナル・オブ・コマースによると、2000年には海運最大手10社で市場の12%を占めていたが、現在は約82%を占めている。

 業界団体である世界海運評議会は、「規制ではなく需要の正常化」がコスト上昇を解決する方法との声明を発表した。

 評議会のジョン・バトラー社長兼CEOは、「『解決』すべき、市場の集中という『問題』は存在しない。誤った経済的仮定に基づいて船会社に懲罰的な措置を課しても、混雑問題を解決することはできない」と述べている。

 また大統領令は、米国で過去20年間に、銀行の70%が失われ、約1万件の銀行が閉鎖されたと指摘している。その結果、有色人種や地方のコミュニティーが大きな影響を受けてきた。

 この傾向に対処するため、司法省、連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)に、ガイドラインを更新し、合併の審査を厳しくするよう求めている。また、消費者金融保護局に対しては、顧客が銀行のデータをダウンロードして、乗り換え時に持っていけるようにするための規則を定めるよう促している。

 この命令には、農業に影響を与える可能性のある条項がいくつか含まれている。農務省に対し、食肉に「米国製」と表示できるかどうかを定義する新たな規則の制定を検討するよう求めている。また、農機具メーカーが、独立した修理店への持ち込みや自身での修理を制限するのを規制するよう、FTCに奨励している。例えば、農家が自分でトラクターを修理することを、トラクターメーカーが妨害する場合などだ。

 民主党の議員や組合のリーダーは、この命令を歓迎した。

 上院司法委員会競争政策小委員会のエイミー・クロブシャー委員長(民主、ミネソタ州)は、議会はバイデン氏の大統領令を支援すべきだと訴えた。

 「競争政策は、米国の独占問題に対処するために、新たなエネルギーとアプローチを必要としている。それは、反トラスト法を更新するための立法だけでなく、現在の法律の下で競争を促進するために連邦政府が何ができるかを見直すことをも意味する」

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