FRB、インフレは収まる兆し無く利上げを断行と報告

(2022年5月13日)

上院銀行委員会の公聴会で証言するジェイ・パウエル連邦準備制度理事会議長(2022年3月3日、ワシントン州キャピトルヒル)(Tom Williams, Pool via AP, File)

By Haris Alic – The Washington Times – Wednesday, May 4, 2022

 米連邦準備制度理事会(FRB)は4日、進行するインフレに対抗するために主要政策金利を0.5ポイント引き上げたが、対応が遅すぎると批判を浴びるとともに、一部のエコノミストは景気後退の危険性があると指摘している。

 中央銀行は政策金利を0・5%ポイント引き上げ、少なくとも2000年以来最大の引き上げとなった。FRBが加速するインフレを抑え込むために利上げを行ったのは、ここ数カ月で2度目となる。

 インフレ率は昨年から8・5%上昇し、1981年以降で最高水準となった。値上げは米国民の財布に驚くべき打撃を与え、バイデン大統領と議会民主党はこれに何らかの形で対応するか、さもなければ11月の中間選挙で有権者からのしっぺ返しに直面する状況に置かれている。

 FRBのジェイ・パウエル議長と同理事会は、ロシアのウクライナ侵攻による経済的影響と新型コロナウイルスによるパンデミックの長引く影響に言及した。

 パウエル氏は記者会見で、中央銀行の当局者は、高いインフレ率が米国人に引き起こしている財政的苦痛を理解していると述べた。同氏は、FRBが金利を大幅に引き上げているのは、まさにその理由、つまり高いインフレ率を抑制し、経済の健全性を維持し、何百万もの世帯が直面している負担を緩和するためであると強調した。

 パウエル氏は「インフレ率はあまりにも高すぎる」と述べた上で、「我々はそれが引き起こしている痛みを理解している」と語った。

 パウエル議長は、6月と7月のFRB会合で、大幅な追加利上げが予定されていることを明らかにした。また、FRBが0・75%ポイントの利上げを検討している可能性があるとの憶測を和らげようとした。

 同氏は「(0・75%ポイントの)利上げは、委員会が積極的に検討しているものではない」と述べ、株価指数を急騰させた。

 ダウ工業株30種平均は2・8%上昇して932ポイントとなり、2020年5月以降で最大の1日の上昇となった。ナスダックとS&P500はともに3%近く上昇した。

 FRBの幹部は声明で、ロシアのウクライナ侵略により石油と食料価格が上昇し、インフレ圧力を強めていると指摘した。また「中国での新型コロナに関わるロックダウンはサプライチェーンの混乱を悪化させる可能性が高い」とし、価格をさらに押し上げる可能性があると付け加えた。

 金利引き上げとは別に、FRBは主に米国の住宅ローンと国債からなる9兆ドルの保有資産を減らす動きを見せている。これらは、新型コロナパンデミックの最中にFRBが記録的な低金利を維持するために買い取ったため、大幅に増加している。

 FRBは現在、これらを減らすことで、金融機関に対し消費者への融資や信用供与に関するコストを引き上げるよう促している。その結果、米国人は住宅ローン、自動車ローン、クレジットカード債務のために、より多くの利子を払うことを余儀なくされるだろう。

 保守的なビジネス擁護団体「ジョブ・クリエーターズ・ネットワーク」のアルフレド・オルティス会長は、利上げがすべての経済的苦痛を終わらせるわけではないと述べた。

 「金利の上昇は、歴史的なインフレを和らげるのに役立つだろう。しかし、より高い借入コストは、消費者、起業家、そして経済全体を傷つける」とオルティス氏は述べた。

 4日の発表は、FRBが今年予定している6つの利上げ計画のうちの2番目だ。先月インフレ率が40年ぶりの高水準に達し、減速の兆しが見られないことを考えると、利上げはすでに手遅れとの見方もある。

 ガソリン価格だけでも、この1年で48%も跳ね上がった。一方、食料価格は8%上昇し、住宅費は5%上昇した。

 同様に、電気と家庭の暖房価格は、電気の11・5%、天然ガスの21・6%の価格上昇に対応して、昨年より13%以上増加した。エネルギー情報局によると、天然ガスは米国で発電される全電力のほぼ40%を供給している。

 共和党議員らは、バイデン氏の政策がインフレ率を上昇させているとして非難している。彼らは、米国がサプライチェーンの危機に直面する中、2021年に成立したホワイトハウスの1・9兆ドルのコロナウイルス救済法が、経済に余分な資金を溢れさせたと指摘している。

 「バイデン政権が本当に過去最高インフレの原因を見つけたいのであれば、鏡を見れば良い」と、上院予算委員会の共和党トップであるサウスカロライナ州選出のリンゼ―・グラハム上院議員は述べた。

 バイデン氏はこれに先立ち、ホワイトハウスの記者会見で自らの経済政策を弁護した。自らの政策が国家債務を返済し、商品やサービスのコストを削減するのに役立つと強調した。

 「共和党の友人たちから赤字について指摘があるが、 私はそれらすべてを歓迎している」とバイデン氏は述べた。「就任1年目で3500億ドル削減した。9月末までに過去最大の落ち込みとなる1兆5000億ドルの削減に向けて順調に進んでいる」

 FRBの利上げ決定は、これらの計画を困難にする可能性が高い。利上げにより、米国政府は長期債務に対してより多くの利息を支払うことになるなど、経済全体に影響を及ぼす。

 政府が支払う金利が高いということは、短期的には債務総額が増加することも意味する。

 エコノミストはまた、積極的な利上げが景気後退を引き起こすことを懸念している。バンク・オブ・アメリカは先月、サプライチェーンの問題と過度に寛大な新型コロナ救済法に悩まされている経済は、金利が上昇するにつれて不景気に入る準備ができているようだと顧客に警告した。

「過去75年間、インフレ率が4%を超え、失業率が5%を下回るたびに、米国経済は2年以内に景気後退に陥った」とラリー・サマーズ元財務長官は最近ワシントン・ポスト紙の論説で警告した。「今日、インフレ率は6%を超え、失業率は4%を下回っている」

 このような話は、バイデン氏と議会民主党にとって11月の中間選挙に向けた政治環境を厳しくしている。民主党はすでに厳しい政治環境に直面すると予想されていた。

 歴史は、ホワイトハウスを握る政党が新大統領就任の最初の中間選挙に議席を失うのが一般的であることを示しているが、経済状況はこれを増幅させる可能性が高い。

 「ジョー・バイデン氏は、パンデミックからの回復途上にある力強い経済の中で政権に就いた」と、テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員(共和党)は述べた。「彼はひどい政策を実行に移した」

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