高い物価・犯罪率に苛立つ有権者から離れてしまった民主党

(2022年11月8日)

カリフォルニア州プレザントンのグローサリー・アウトレット店で冷蔵品を見る客(2022年9月15日撮影)。高インフレの中、経済的な弱さを感じている米国人成人が増えている。AP通信-NORC公共問題研究センターの新しい世論調査によると、約46%の人が現在、自分の個人的な財政状況を悪いと感じている。この数字は3月の37%から上昇した。(AP写真/Terry Chea、ファイル)

By Susan Ferrechio – The Washington Times – Sunday, November 6, 2022

 11月8日に迫った中間選挙の直前、民主党は好感度の経済ニュースとして、先月の国内求人増が26万1千人だったと吹聴した。しかし有権者には実感が乏しいようだ。

 民主党の候補者は最近、共和党の強い州で犯罪が多い、と主張した。しかし民主党系の飛び地に住み、屋外に出るのを怖がっている有権者には、何をか言わんやだろう。そうした地域では共和党候補者が勢いを得ている。

 つまり民主党の広報戦略はドタバタ騒ぎに終始しているようだ。種々の世論調査では、インフレ、エネルギー価格の高騰、犯罪の増加、管理できない違法移民などのせいで、民主党を批判してきた共和党が全国的に勝利することが予想されている。

 「共和党は人々の心をもてあそんでいる」、民主党の参謀の一人、クリストファ・ハーンは主張する、「そして民主党は人々の心に呼びかけている」。しかし犯罪の問題だけは、民主党が有権者と共鳴できていない好例だ、ハーン氏は苦言を呈した。「人々は犯罪の問題を痛感している」、「その気持ちに対応すべきだ。『そんなことはない!』などと突っぱねるわけにはいかない。」

 民主党のまずい広報戦略は州単位の選挙でも現れており、民主党の強力な地盤のニューヨーク州でも、民主党の現職キャシー・ホチュル知事に対して、共和党のリー・ゼルディン氏が驚くほど善戦している。ゼルディン氏は犯罪の問題でホチュル知事を容赦なく叩いてきた。同州の一部地域では犯罪が急増しており、この木曜日にもニューヨーク市で女性が昼間のジョギングの後にレイプされた。加害者は前科25犯の男性だった。

 「犯罪はニューヨークの有権者にとって最優先事項だ」、下院共和党会議議長のエリーゼ・ステファニク女史はワシントン・タイムズに語った。「この州では犯罪の危機を物語るような記事を目にすることなしに新聞を開けないほどだ。」

 全国の選挙戦では、首都ワシントンのユニオンステーションでバイデン大統領が最近行った演説は、民主党の見当違いな選挙広報の典型かも知れない。

 大統領はその演説の際に、民主党に向けられた脅迫と暴力について警告し、有権者が火曜日に「MAGA(=偉大なアメリカの再建をアピールする)共和党」の候補者を選択すれば、「米国の混沌への道」を開くだろうと訴えた。

 有権者に向けたバイデン大統領の最後の訴えだったが、有権者の一番の懸念に焦点を当てられず、代わりに上下両院の選挙戦であまり話題にならない事柄に終始してしまった、民主党の選挙参謀の一人はワシントンタイムズ紙に漏らした。

 「大統領は自らに投票してくれた人々と、トランプを拒否した人々に広く訴えたつもりだったのだろう」、この参謀は説明した。しかし浮動票の多い地区や州で勝利するには、あまり熱心でない民主党員や無党派層にも訴えなければならない。そうした人々に、バイデン式の反MAGA演説は効力が弱い。なぜなら世論調査は、これら有権者が経済を一番懸念しているからだ。

 新手の世論調査「エコノミスト/YouGov」が示すところによれば、経済は上昇中だとバラ色の絵を描き続けている民主党の主張にもかかわらず、回答者の61%が米国は不況の中にあると思っている。

 「これは民主党にとって大きな問題だ」、世論調査アナリストのロン・フォーシュー氏は語気を強めた。「共和党の75%、無所属の57%、民主党の43%が不況だと見ているのに、バイデン政権はそうではないと言い張っている。悪いことに、今はまだ不況でないと考えている人々でも、その約4分の1は、今後12ヶ月以内に不況に突入すると予想している。

 民主党は妊娠中絶を可能にするキャンペーンに努力を注いできた。決定的な数の無所属有権者が、連邦最高裁判所での「ロー対ウェィド判決」を覆すことより、経済の方を懸念しているとの世論調査結果もあるのに、民主党の活動家は中絶問題が浮動票レースで共和党を叩き、民主党を後押しできると見なしてきた。

 彼らはニューヨークの第19選挙区で八月に実施された特別選挙で民主党のパット・ライアン氏が勝利した時、中絶を合法化した1973年の「ロー対ウェィド判決」を覆した連邦最高裁判所の判決に、「否」を投じた国民投票に似た意義を感じたようだ。

 民主党は中間選挙に先立ち、妊娠中絶へのアクセスを政策綱領の中核に据え、多額の投資をしてきた。他のアジェンダを排除したわけではなかった。

 下院民主党の選対本部は候補者たちのために合計205本のラジオ・テレビ広告を流したが、その半数は中絶について触れていた。それに比べて87本の広告、つまり42%が経済を扱った。

 民主党議会キャンペーン委員会の広報担当クリス・テイラー氏は、有権者が関心を寄せる幅広いテーマについて広報してきたと主張した。

 民主党とバイデン大統領は制定された「インフレ削減法」、すなわち税金を引き上げ、グリーンエネルギーに投資し、高齢者向け処方薬の価格設定を改善し、1兆2千億ドルの超党派インフラ支出法などの成果を頻繁に誇示してきた。

 「民主党は橋を架け、雇用を救い、大感染を鎮圧したいと米国市民に訴えた」、テイラー氏は主張した。「我々はこれら全ての傍らで、女性の自由と投票権を守ると繰り返し訴えてきた。」

 ともあれ有権者は火曜日、広報戦争の勝者が誰なのかを宣告することになる。

 ステファニク女史は共和党の勝利を確信している。彼女は木曜日、州北部でゼルディン候補のために三千人の集会を開いた。これは同地域では相当の数の集まりで、同じ夜にホチョル現職知事がヒラリー・クリントン女史とカマラ・ハリス副大統領を迎えたイベントを小さく見せたほどだった。

 ステファニク女史によれば、有権者の関心事項に寄り添った共和党のやり方で、これまで20年近く共和党知事を選出できなかった同州でも共和党に勢いを付けることになった。

 彼女は下院共和党議員選挙のための広報戦略を考案し、数十議席を獲得して民主党から過半数を取り戻す可能性を開こうとしている。

 「私が下院共和党会議の議長に就いたときに誓約したことの一つは、アメリカ国民にとって大事な問題を話し合おうということだった」、ステファニック女史は述懐した、「インフレの危機、犯罪の危機、国境の危機などを広報した。我々は今、これらすべての問題について優っている。なぜならこれらの問題こそ米国民の最大の関心事なのだから。」

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