バイデン政権、イラン報復阻止に失敗 中国への影響懸念
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, April 16, 2024
バイデン政権は、イランがイスラエルへの大規模な軍事攻撃を準備していることを数日前から知っていたが、それを阻止することはできなかった。
これは、過去2年間の外交重視政策の2度目の失敗だ。いずれのケースでも、差し迫った攻撃を事前に警告したにもかかわらず、深刻な地域紛争を抑止できなかった。
米情報機関は2022年、ウクライナ侵攻に向けたロシアの軍事計画について極めて詳細な情報を提供した。それでも、侵攻を食い止めることはできず、欧州で第2次世界大戦以来最大の紛争が発生した。
これらの失敗は重大な結果をもたらす可能性がある。中国の指導者らは、米国の力が低下し、中国軍が自由に行動できるようになったと考え、大規模な地域紛争を起こすのではないかという懸念が高まっている。
中国の習近平国家主席は、民主主義が支配する台湾を占領すると宣言している。同時に、東シナ海の尖閣諸島をめぐって日本に敵意を示し、南シナ海のフィリピンにも敵対している。
日本とフィリピンは米国の同盟国である。中国が攻撃すれば、米国はベトナム戦争以来のアジア地域紛争に巻き込まれる可能性がある。
台湾という火種
台湾を巡る火種はくすぶり続け、いつ発火するか分からない。
最近まで海軍情報部の司令官を務めていたマイク・スタッドマン退役少将は、最近台湾の指導者らと会談したと語った。中国が今後10年以内に台湾を封鎖するか、全面的に侵略する準備を進めていることを示す兆候が強まっている。
スタッドマン氏は中国の台湾侵攻について「問題は、するかどうかではない。いつするかだ」と述べた。
専門家らは、バイデン政権がこれらを阻止できなかったのは、軍事行動への脅威や、侵略者に制裁を科すような懲罰的措置を欠く弱い政策に起因すると批判している。ロシアがウクライナに侵攻して以来、米国はロシアに対して強力な金融制裁を科しているが、こうした措置はロシアの意思決定にほとんど影響を与えていないようだ。
さまざまな理由から、敵対国の指導者らは、軍事攻撃による利益はリスクに見合うと結論づけているようだ。
バイデン氏が直接警告したものの、ほとんど効果はなかったようだ。12日、米国はイランが「いずれ」イスラエルを攻撃すると予測していることを明らかにした。だが、バイデン氏はイランに対して、ただ一言「攻撃するな」と警告を送っただけだった。
マイク・ポンペオ前国務長官は、この警告で攻撃を阻止できないのは明らかだと述べた。
「バイデン氏は『するな』と何度も言ったが、『するな』は国家安全保障政策ではない。抑止力にもならない」
バイデン氏の発言は、イラン軍が中東での米国の重要な同盟国であるイスラエルへの大規模な攻撃の準備を進めているという、情報機関の具体的な警告を反映したものだった。イランの兵器のほとんどは、イスラエルに到達する前に撃墜された。
イランの攻撃は、イスラエルが4月1日にシリアのダマスカスにあるイラン大使館を空爆し、イランの軍事関係者数人が死亡したことに対するものだった。
イランは、この攻撃は主権侵害に対する報復だと述べた。
イラン政府とつながりのあるイラン人テロリストらは、これまでに複数の大使館攻撃を実行している。米情報機関は、中央情報局(CIA)職員を含む63人が死亡した1983年のベイルートの米大使館爆破事件はイランによる犯行とみている。
今、世界はイスラエルによるイランへの反撃に注目している。米国はエスカレーションを避け、外交で解決することを求めているが、イスラエル軍幹部らは反撃が近いことを示唆している。
専門家らは、バイデン政権のイランへの対応は、新たな外交上の失敗だと指摘した。
フーバー研究所のビクター・デービス・ハンソン研究員は、「目の前にいるのは、週休3日制で、テレプロンプターを読むのに苦労し、米国の敵よりも保守的な自国民に向かって声を荒げる米大統領だ」と語った。
米国の警告を一蹴したロシア
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻するまでの数カ月間、米情報機関はウクライナの軍司令部に入り込み、ロシア軍幹部らが侵攻の計画段階に深く入り込んでいることを知っていた。
しかし、政権の対応は、ロシアの侵攻を食い止めるために、中国の共産党政権に情報の一部を提供したに過ぎなかった。
ホワイトハウス当局者は後に、中国政府がロシアの侵攻を予告する米国からの情報をロシアと共有していたことを認めた。
中国を抑え込むための政権の取り組みは、遅く、予算も十分には拠出されていないようだ。
退任するジョン・アキリーノ米インド太平洋軍司令官は先月、議会に対し、政権の動きは遅く、中国の動きを止めることはできないと警告した。
米議会は昨年9月、台湾への武器供与を加速させるため、政権に10億㌦の予算を承認したが、まだ3億4500万㌦分しか供与されていない。
アキリーノ提督は、武器供与は遅すぎると述べた。
「政府も産業界も一丸となって、もっと早く動かなければならない」
マイク・ロジャース下院軍事委員長(共和、アラバマ州)は、政権の政策が中国、ロシア、イラン、北朝鮮に対する抑止力を損ね、弱めていると述べた。
特に中国は、米国が欧州の同盟国やパートナーとの約束をどのように果たすかから教訓を得ようとしている。
「米国の抑止力を回復させなければならない」
「それは、この政権が最終的に勝つための戦略を明確にすることから始まる」
ハンソン氏は、バイデン氏が苦難の末に築き上げた米国の抑止力を著しく弱めたと指摘した。2021年のアフガニスタンからの悲惨な米軍撤退がその端緒になったという。米国の撤退後、タリバンは米軍の武器を掌握した。
ハンソン氏は、バイデン氏は抑止力を理解していないか、その有用性を信じていないかのどちらかだと述べた。
「いずれにせよ、結果は外交政策の大失敗であり、それはカーター政権の戦略的失敗を超える」
バイデン政権は昨年、米国内を通過する中国の監視用気球を放置し、世論の圧力がかかってようやく大西洋上空で撃墜した。
また、新型コロナウイルスの感染拡大について、中国政府の責任を追及することに失敗した。武漢の研究所が発生源の可能性があり、そこでは、ウイルスの危険な機能獲得実験が行われていた。
ウクライナについては、バイデン氏は侵攻の1カ月前、ロシアのプーチン大統領に対し、西側の反応は攻撃が「軽微な侵攻」なのか「大規模な行動」なのかによって異なると述べ、誤ったシグナルを送った。
イランに関しては、関係緊密化とオバマ政権時代の核合意「包括的共同行動計画(JCPA)」の復活を求めている。この合意は、経済制裁の緩和と引き換えにイランの核開発を制限するものだった。トランプ前大統領は2018年、この合意から離脱した。
バイデン氏はイラン融和策の一環として、500億~1000億㌦の対イラン石油制裁の解除に同意した。
抑止政策は失敗し、バイデン政権はイエメンの反政府武装勢力フーシ派のテロ組織指定を取り消すなど、米国とイスラエルの敵を強化しかねない措置をとった。イランの支援を受けたこの組織は数カ月にわたって、紅海や周辺海域で商業船の往来を妨害してきた。
バイデン氏は、大統領選を巡る政治的駆け引きが外交政策の意思決定に影響を与えていると非難されている。バイデン政権は、パレスチナ自治区ガザのハマスへの攻撃を批判してきた。イスラエル批判はさらに強まり、一部の政治的左派との連携は一層強まっている。