映画「レーガン」が好調 評論家には不評

(2024年9月11日)

新しい伝記映画「レーガン」は興行成績が好調で、シネマスコアの観客評価でAを獲得したが、ほとんどの映画評論家はそれを聖人伝だと揶揄している。

By Sean Salai – The Washington Times – Monday, September 9, 2024

 新作伝記映画「レーガン(Reagan)」の興行成績が好調だ。調査会社シネマスコアによる観客評価で「A」を獲得したが、ほとんどの映画評論家からは理想化された聖人伝と厳しい評価が下された。

 保守的な業界ウオッチャーによれば、これは、評論家らがダブルスタンダードを持っていて、観客の評価が高くても、右寄りのコンテンツに否定的だからだという。これらの評論家らは、2016年のバラク・オバマ元大統領の伝記映画「サウスサイドであなたと(Southside with You)」を絶賛していた。

 また、否定的な評価によって、この映画を嫌うリベラル派を遠ざけ、観客評価がさらに上昇する可能性があるという。

 映画批評サイト「ワース・イット・オア・ウォーク(Worth It or Woke)」の創設者ジェームズ・キャリック氏は、「このダブルスタンダードは、しばしば歪んだ、知的に不誠実な批評を生む。不完全ではあっても、『レーガン』は、観客が求めているものを提供している。それが映画好きを引き付けている理由だ。評論家が先入観を乗り越えられるかどうかの問題ではない」と述べた。

 アカデミー賞を取材してきたロサンゼルスの映画ブロガー、サーシャ・ストーン氏は、この断絶はハリウッドと、ハリウッドから認められたい評論家らが原因だと指摘する。映画評論家らは近年、民主党の「もう一つのプロパガンダ部門」になっているという。

 「彼らがオバマ氏の映画をいいと思ったわけではない。ただ、悪意を持って批判することはない、それだけだ」

 ストーン氏は、オバマ氏が動画配信大手ネットフリックスと契約していること、民主党を象徴する人物、ジャック・スミス、ジェームズ・カービル、ヒラリー・クリントン氏らがレーバーデー(労働者の日)の週末にテルライド映画祭に出席し、共和党の大統領候補ドナルド・トランプに批判的なドキュメンタリーを宣伝したことを指摘した。

 保守的な第40代大統領をデニス・クエイドが演じた映画レーガンは、この長期休暇の週末に公開され、大ヒット映画「デッドプール&ウルヴァリン」「エイリアン

ロムルス」に次ぐ第3位だった。2500万ドルをかけて製作されたこの独立系プロダクションの作品は、2750カ所で、予想されていた500万ドルの2倍の1030万ドルの興行収入を上げ、評論家らを驚かせた。

 配給元のショービズ・ダイレクト社は9日、レーガンが2週目の週末にさらに520万ドルを売り上げたと発表した。この結果、興行成績は3位をキープし、今週末までに2000万ドルに達する勢いだ。

 ショービズ・ダイレクト社の創立者ケビン・ミッチェル氏は、「好意的な口コミが広がり続けているため、長く上映されると思う」と語った。

 同社によると、レーガンのチケット売り上げが、2週目の週末に24カ所で興行収入王者「ビートルジュース・ビートルジュース」を上回った。これは、ニューメキシコ、テキサス、ミシガン、ノースダコタ、ペンシルベニア、カリフォルニア、ニュージャージー、アリゾナ、バーモント、ミネソタ、ニューハンプシャー州の劇場での売り上げだ。

 映画はレーガン氏の生涯を長期にわたってカバーし、イリノイ州の田舎町での幼少期、ハリウッド俳優時代、2番目の妻ナンシーとの交際、キリスト教信仰、そして1980年代に共和党の大統領を2期務めた際の共産主義との闘いなどが、共感をもって描かれている。

 9日午後、映画批評サイト「ロトゥン・トマト」によれば、レーガンに対して好意的な評価を下した映画ファンは98%、評論家ではわずか20%だった。

 このサイトで取り上げた劇場映画で、評論家と映画ファンの間でこれほどまで評価が分かれたのは初めてだという。これは、1999年のR指定アクション・コメディー「処刑人(The Boondock Saints)」の65ポイントという記録を上回るもので、ファンの91%、評論家のわずか26%が好意的に評価した。

 ロトゥン・トマトの評論家らの総評では、「この映画がレーガンという人物を称賛していることは間違いないが、その陳腐でもっともらしい歴史描写は、第40代米大統領を茶化しているように見える」と述べている。

 一方、1989年のシカゴでのオバマ氏とミシェル夫人との初デートをロマンチックに描いた「サウスサイドであなたと」は、映画ファンの71%、映画評論家の91%が好意的に評価した。

 ロトゥン・トマトの総評はこの映画について、「運命的な現実のデートを、力強い演技と魅力的な会話で振り返り、ロマンスを盛り上げ、非常に良質な作品になっている」としている。

 HollywoodInToto.comの編集者クリスチャン・トト氏は、この数字は、映画評論家が「圧倒的に左寄り」であることを示すものであり、「レーガン大統領を嫌悪する」映画ファンはこの映画を見ないと述べた。

 ワシントン・タイムズ元記者のトト氏は、「この映画の物語の広がりと、大統領時代の重要な瞬間を再現している点は、政治状況をどう捉えるかとは別に、評価に値する」と好意的に評価している。

 レーガンは、信仰を基にした保守的な独立系映画の最新作であり、過去10年間、評論家からこれほどまで評価されずに興行的に大成功を収めた映画は存在しない。

 宗教的で保守的な映画としては、2014年に始まった「ガッズ・ノット・デッド(God’s Not Dead)」シリーズから、昨夏のエンジェル・スタジオによる人身売買ドラマ「サウンド・オブ・フリーダム(Sound of Freedom)」まで、さまざまな作品がある。

 サウンド・オブ・フリーダムは、評論家の評価は分かれたものの、エンジェル・スタジオの続編「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」よりも高い興行収入を記録した。

 レーガンは、1450万ドルの予算で2億5000万ドル以上の興行収入を上げ、独立系映画史上最も成功した作品の一つとなった「サウンド・オブ・フリーダム」ほどの成功を収めることはなさそうだ。

 しかし、キリスト教系のレビューサイト「プラグ・イン」のエンターテインメント評論家ポール・アセイ氏は、レーガンの成功によって、ハリウッドのスタジオが重要な観客をないがしろにしてきたことを思い知らされる可能性があると指摘した。

 アセイ氏は「保守派も映画を見に行く」と語った。

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