中国、チベット・印パへ攻勢拡大 米印関係の悪化受け

(2025年8月26日)

2025年8月20日水曜日、中国西部チベット自治区のラサに駐留する軍人の代表と会談する習近平国家主席。(李剛/新華社AP通信より)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Friday, August 22, 2025

 【ソウル(韓国)】 中国政府は今週、チベット、インド、パキスタンに派手な微笑外交で攻勢をかけ、この地域を重要視していることをアピールした。この地域での米国の外交は失敗とみられており、そこをうまくついた格好だ。

 中国の習近平国家主席はチベット自治区を2日間訪問し、王毅共産党政治局員兼外相はニューデリーとイスラマバードを訪問した。

 中国にとって戦略的に重要な3つの地域への訪問の背後で、2つの問題がくすぶっている。

1つは、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世とその後継者をめぐる中国政府との対立だ。これは、中国のチベット同化政策とそれに伴って生じている緊張を浮き彫りにしている。

 もう1つは、インドと米国の関係の悪化だ。アナリストらは、この状況が中国政府に、長く緊張関係にある中印関係をリセットする機会を与えたとみている。

チベットの問題

 新華社通信によると、習氏はチベット訪問で、「安定の確保、開発の促進、環境保護、地方の強化という4つの主要な課題を引き続き推進する」ことを求めた。訪問は12年間の任期中で2度目だ。

 新華社は、「60年の歴史的進歩」を祝う訪問だと報じた。チベット自治区は1965年に中国政府によって設立された。

 中国は1950年にチベット(中国語で「西蔵」) に侵攻し、1951年に併合した。漢民族によるこの地域への入植を促進し、現在、中国が支配している。

 中国政府は、チベットの近代化と発展を称賛する一方で、中国による支配を批判し、世界的に広く尊敬されているダライ・ラマと対峙しなければならない。

 ダライ・ラマは、米国が支援した1959年の中国支配に対する蜂起が失敗に終わった際にチベットから逃れた。それ以来、インドのダラムサラで亡命生活を送り、1962年には自国の民主的な憲法を公布した。

 チベット仏教の精神的指導者ダライ・ラマは現在90歳。7月、支持者らとともに後継者を指名することを明らかにした。中国政府は、後継者を指名する権利を主張しており、これに異議を唱えた。中国は公式には無神論の国だ。

 習氏は訪問中、ダライ・ラマについて言及しなかった。しかし、国営メディアはラサで習氏が表明した優先課題に言及した。

 「習主席は就任以来、一貫して国家の統一と民族の連帯を西蔵関連政策の最重要課題として強調してきた」(新華社)。

 民族的・宗教的少数派への漢族支配への抵抗は歴史的に、国家の分裂と内戦を恐れる中国の指導者らを悩ませてきた。

 フロリダ大学のジメナ・アンティベロス氏は、「チベットとその住民の自治権が強まれば、少数民族の支配に関する中国の正当性を著しく損なうことになる。チベット人に対する支配を失えば、分離独立を主張する他の少数民族グループもチベット人に倣おうとして連鎖反応を引き起こすだろう。まずは新疆地区、(イスラム教徒の)ウイグル族だ」と述べた。

 習氏の訪問中、国内のチベット人が訪問を批判することはなかった。亡命政府の同胞は批判的だった。

 チベット亡命議会議員のドルジー・ツェテン氏は記者団への声明で、「チベット人にとって、(中国の)チベット自治区創設の記念日は祝いの理由にはならない。60年以上にわたる中国の植民地支配を思い起こさせる痛ましい日だ。チベットでの人権弾圧の真実と、植民地時代の全寮制学校を通じたチベット人のアイデンティティーの抹殺は、いかなる政治舞台でも隠すことはできない。…チベット人は、中国が押し付けたダライ・ラマの後継者計画を決して受け入れない」と訴えた。

地理、安全保障、外交

 チベットで民族統合を進める中国だが、別の意味でもチベットは中国にとって極めて重要だ。

 ツェテン氏は「習氏のラサ訪問は、中国にとってのチベットの戦略的重要性を強調しているにすぎず、外相のインド訪問もその延長線上にある。習氏の権力維持に関する憶測とも一致する」と書いた。

 この憶測とは、習氏の新型コロナウイルスへの対応の誤りとパンデミック(大流行)以降続く経済問題のために権力基盤が弱まっているとみられていることを指す。

 未来学者らが水戦争の勃発を警告する中、中国政府は「アジアの水の塔」と呼ばれるチベット高原で地域の水源を支配している。サトレジ川とインダス川はインドとパキスタンを流れ、メコン川は東南アジア諸国を曲がりくねって流れる。

 広大で険しい高原は、ヒマラヤ山脈の地形の支配権を争う民主主義国インドに対する戦略的緩衝地帯となっている。中国とインドは1962年にこの高地で国境戦争を行い、最近では2020年に小規模な衝突を起こしている。

 一方、インドの隣国パキスタンは、中国にアラビア海に抜ける陸路を提供している。カラコルム・ハイウェーは、中国の新疆ウイグル自治区から始まり、パキスタンの道路網に接続し、イラン国境近くのグアダル港に達する。

 王氏は今週、インドを訪問した後、パキスタンを訪問した。

 王氏は21日、イスラマバードでシャバズ・シャリフ首相と会談し、「中国は常にパキスタンにとって最も信頼できるパートナーであり、最も強力な支援者だ」と述べた。

 両国はインフラ、商業、軍事で連携している。5月には、中国が供給した戦闘機とミサイルがインド軍戦闘機に対して有効であることが証明された。インドは、パキスタン国内にイスラム・テロの拠点があると主張しており、6日間にわたってこの拠点を攻撃した。

 シャリフ氏は王氏に対し、8月31日から9月1日に中国の天津で開催される上海協力機構(SCO)首脳会議と、9月に習氏が北京で主催する第2次世界大戦終戦80周年を記念する大規模な軍事パレードに出席すると述べた。

 パレードは習氏が自身の地位を誇示する手段と考えられている。東南アジアの指導者数人とロシアのウラジミール・プーチン大統領が参加すると予想されている。

 王氏の印パ歴訪は、米印関係の悪化に触発された可能性がある。

 インドは、5月の紛争を米政府が仲介したことに怒っている。トランプ大統領がパキスタンの軍事代表団をホワイトハウスに迎え、インド製品に地域で最も高い50%の関税を課したためだ。

 太平洋フォーラムのロブ・ヨーク地域担当ディレクターは、「米国とインドの間の緊張と、インドの期待が満たされていないことを考えると、中国は血の匂いを嗅ぎ付けたのかもしれない。イスラマバード訪問は、中国がインドにあまり傾斜しておらず、関係がそれほど深くないことを示すためだったのかもしれない」と述べた。

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