深まる米韓の亀裂 北核施設の情報漏洩巡

(2026年5月9日)

2024年10月15日(火)、韓国・坡州(パジュ)の非武装地帯(DMZ)にある板門店(パンムンジョム)へと続く統一橋の近くにバリケードが設置された。(AP通信/イ・ジンマン撮影)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Tuesday, May 5, 2026

 【ソウル(韓国)】米国と韓国の間でさまざまな要因から緊張が高まっている。その中でも機密情報漏洩疑惑を巡る騒動が最大の火種となっている。

 韓国の鄭東泳統一相が3月下旬に行った発言が先月、政治問題化したことを受け、韓国外務省で対米業務を担当する主要職員の配置換えが進められている。問題となった発言には、北朝鮮関連の米機密情報漏洩疑惑が含まれているとされる。

 鄭氏は国会で北朝鮮の核物質について説明した際、既に知られている寧辺と降仙の施設に加え、亀城をウラン濃縮施設として挙げた。

 北西部の亀城については、軍事アナリストや研究者の間で核関連施設が存在すると広く認識されていたが、韓国政府や米国政府が正式にウラン濃縮施設と位置付けたことはなかった。亀城に関する疑惑は2016年ごろから分析報告で指摘されていた。

 その後、鄭氏の発言に対する米側の不満が報じられ、さらに匿名の関係者が報道機関に対し、米国が韓国への衛星情報提供を停止したと語った。

 鄭氏は、自身が示したのは「公開情報」に過ぎないと主張している。李在明大統領も4月20日、「亀城の核施設の存在が、さまざまな学術論文や報道を通じて既に世界に広く知られていたのは否定できない事実だ」と述べた。

 しかし、韓国の野党勢力の一部は鄭氏の辞任を求めている。

 韓国軍の申庚秀元少将は「彼は閣僚として機密情報をどう守るべきか理解していないと思う」と指摘。「専門家や教授が核施設の可能性を指摘するのと、政府高官がそれを認定するのとでは意味が違う」と語った。

 鄭氏は元大統領候補で、長年にわたり政治家として北朝鮮政策に関与してきた。統一相を務めるのは今回が2度目となる。

 今年2月には、韓国が独自の判断で非武装地帯に入ることができる権限を持つよう法整備を求めた。現在、非武装地帯へのアクセス権限は韓国政府ではなく、朝鮮戦争休戦協定に基づき米国主導の国連軍司令部が管理している。

 韓国政府は1950~53年の朝鮮戦争が南北統一なしに停止されたことに反発し、休戦協定には署名していない。

 一部では、米国が鄭氏の更迭を望んでいるとの見方も出ている。

 南北外交に詳しい著名学者の文正仁氏は「彼は米国への批判を公然と展開し、国連軍司令部の管轄権を巡る法整備も主張してきた。それが米側が問題視した理由かもしれない」と指摘。「保守派は韓国が米情報に依存していると主張するが、米国が提供する情報は全体の約30%にすぎない」と語った。

 こうした米韓摩擦は今回が初めてではない。

 米ワシントン駐在武官を務めた経験を持つ申氏は「過去にも同様のことが起きた。共に民主党が政権を獲得した時だ」と語る。

 大統領職と国会を掌握する韓国の左派系「共に民主党」は、一般的に北朝鮮や中国との関係改善を重視し、防衛面での自主性強化を志向する。

 一方、保守系「国民の力」は米国および米韓同盟をより重視し、自主防衛路線には慎重な立場を取る。

 外交筋は匿名で韓国最大手の保守系紙・朝鮮日報に、「鄭氏の発言は単なる引き金にすぎず、両国間で積み重なった不満こそ本質だ」と述べた。

 不満材料は数多くある。

 収監中の尹錫悦前大統領を巡る大規模で強硬な捜査の一環として、韓国の特別検察官は昨年、烏山の米韓空軍基地に立ち入った。これに対し、米側は文書で抗議したと報じられている。

 2月の旧正月連休中には、烏山基地を飛び立った米戦闘機の編隊が黄海上空の中間線付近まで飛行した。これに対し、中国が戦闘機を緊急発進させただけでなく、韓国政府も事前説明が不十分だったとして不快感を示した。

 在韓米軍のゼイビア・ブランソン司令官(陸軍大将)は、韓国の地政学上の戦略的位置を活用することを強調している。5月7日には日本メディアで、韓国、日本、フィリピンの軍事力を全領域で単一の「キルウェブ」に統合することが望ましいと語った。

 これは中国と対立するフィリピンと日本には適しているかもしれない。しかし、韓国は事情が違う。李政権は良好な対中関係を求めているからだ。

 また韓国政府は、自国領内の基地が米軍の地域全体に向けた作戦の出撃拠点として利用されることへの不快感も隠していない。

 一方、米韓両軍は、韓国軍の有事作戦統制権(OPCON)を米軍から韓国軍へ移管する作業を進めている。李政権は2030年の任期終了までの移管完了を望んでいるが、米側は条件整備が必要だとしている。

 申氏は「主にOPCON問題が原因で、米国との関係が緊張していると思う」と述べた。

 さらに、韓国最大の電子商取引・配送アプリ「クーパン」を巡っても、韓国と米国の間に新たな亀裂が生じている。2010年にソウルで設立された同社は米国では事業展開していないが、2021年にニューヨーク証券取引所へ上場した。

 昨年11月に3370万件のアカウント情報が流出する大規模漏洩事件が発生すると、韓国当局はこれを問題視し、クーパンのセキュリティー管理の不備を指摘した。

 これに対し、クーパン側は米国内でロビー活動を展開。米下院司法委員会の共和党議員らが韓国政府によるクーパンへの対応について調査を開始し、投資家らも米通商代表部(USTR)に対応を求めている。

 こうした緊張関係を受け、韓国外務省は先週、対米窓口の担当者を入れ替えた。

 安全保障と北朝鮮情報に詳しい人物が北米局長に昇格し、クーパン問題を担当していた職員はワシントンの在米韓国大使館へ異動となった。

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