サッカーW杯へスタジアム大規模改修 芝の張り替え、一時的名称変更も

By Liam Griffin – The Washington Times – Thursday, May 21, 2026
華やかなサッカーのワールドカップ(W杯)開催には、北米各地に点在する16会場を大規模改修しなければならないという痛みを伴う。
来月開幕するW杯を前に、北米全域の建設作業員は、国際サッカー連盟(FIFA)の基準を満たすため、11のナショナル・フットボールリーグ(NFL)スタジアムを含む各会場の改修に数千時間を費やしてきた。
工事の規模は会場によってさまざまだ。
米国内の多くの会場では、人工芝を天然芝に全面的に張り直す必要があった。また、ピッチを広げるため、一部のNFLスタジアムでは座席を撤去した。
マイアミのハードロック・スタジアムやアトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムのように、当初からサッカーの国際試合開催を想定して設計された会場でさえ、小規模だが改修が行われている。
メルセデス・ベンツ・スタジアムでは、視界を改善し、より多くのカメラ設置スペースを確保するため、座席配置を変更した。
米国内5会場の改修に携わっているヘンダーソン・エンジニアズのタイラー・ジョンソン氏は、「会場となるスタジアムの中には、もともとこういった試合開催を想定して設計されていないスタジアムもあり、試合に備えて内部改修を実施している」と語った。
「例えば、ピッチを広げるため下段席の一部を撤去したり、人工芝を天然芝に張り替えたりしている」
芝を張り替えるなどの調整の多くは一時的なものだ。しかし、多くの会場にとって、世界最大のスポーツイベントは観客へのサービスを改善する絶好の機会ともなった。
16会場中6会場の準備に関与している建築設計事務所ゲンスラーのグローバルスポーツ部門責任者ライアン・シックマン氏は、「スタジアムごとに少しずつ異なる」と語った。■目立たない変更点
座席変更や新しい芝は観客の目を引くが、一般には気付かれにくいFIFA要件に従った変更点も多くある。例えば、VIPがメディアや一般観客と接触せずに出入りできる動線を確保する必要がある。
シックマン氏は「動線の分離を可能にするため、会場内を改修する必要があった。しかし同時に、それを新たなホスピタリティー事業の機会として活用しようとも考えた」と語った。
開幕まで1カ月を切り、ほとんどの会場ではFIFA側を満足させるための改修が完了した。
また、FIFAスポンサー契約上の理由から、米国最大級のスタジアムの一部では一時的な名称変更も行われた。
マサチューセッツ州のNFLニューイングランド・ペイトリオッツ本拠地「ジレット・スタジアム」の名称が消えた。同様に、カンザスシティーのアローヘッド・スタジアム、ロサンゼルスのソーファイ・スタジアム、アトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアム、シアトルのルーメン・フィールドも変更対象となった。
スポンサー名を冠した全スタジアムは、米国内11会場を含め、大会期間中は一時的名称を使用しなければならない。これはスタジアムスポンサーと大会スポンサーとの利益衝突を避けるためのFIFA規定である。
しかし、この見た目上の変更は、観客席で行われた大規模改修に比べればそれほど影響はない。
カンザスシティーのスタジアムでは、ピッチを広げ、メディアスペースを拡張するため、4500トンのコンクリートと3900立方メートルの土砂が撤去された。当局によれば、その過程で3500席が移設された。
必要経費や労力は会場ごとに異なるが、いずれも大事業だ。テキサス州のAT&Tスタジアム関係者は、新しい天然芝設置に4万5000時間の作業が必要だったと明かした。
こうした変更に観客は違和感を覚えるかもしれない。カンザスシティーでは、ピッチがスタジアム中央に配置されていない。工事上の制約から、NFLのフィールドから少しずれた位置になる。
しかし、1万7000席を追加したトロントのBMOスタジアムに比べれば容易だった。
この増設席は仮設で、2024年パリ五輪で使用されたリサイクル観客席も一部活用されている。
仮設席は、インテル・マイアミ所属のスーパースター、リオネル・メッシ選手がトロントFC戦でプレーした際に試験運用された。ただし、その外観は「組み立てキット」のようだったという。
シックマン氏は「世間からかなり批判された。『これは何だ、崩れるんじゃないか、危険だ』などと言われた。でも全く問題ない。試験済みであり、視界も素晴らしい」と振り返った。
■天然芝対人工芝
座席変更は観客の目を引くが、選手たちは既にピッチ状態に注目している。天然芝導入に消極的なNFLスタジアム運営者たちも、W杯に向けて育成用ライトや散水設備に投資した。人工芝の方が維持、管理がしやすく、コンサートなどイベント利用にも適しているためだ。
参加全会場では、大会主催者の厳格な指示に基づき、新しい天然芝が導入された。
フィラデルフィアのリンカーン・フィナンシャル・フィールドではニュージャージー州から芝を搬入した。ロサンゼルスでは、ソーファイ・スタジアム運営側が灌漑設備を設置し、ワシントン州から冷蔵トラックで芝を輸送した。
ダラス・カウボーイズ本拠地AT&Tスタジアム幹部は、コロラド州産芝生の設置に4万5000時間の労働と1万5000トンの資材が必要だったと誇らしげに語った。
現在、この会場の天井からはピンク色の育成ライトがつり下げられている。来月の大会に向け、完璧なピッチ状態を維持するためだ。
FIFAピッチ設備責任者のユアン・ホッジ氏は、「こうした育成ライトをつるすのは世界初だ。すべてLED育成ライトで、芝生に生命力を与え、成長させている」と語った。
この新しい天然芝は、カウボーイズ用の人工芝が設置されていた位置より約60センチ高い場所に敷かれている。また、多くのNFL会場同様、コーナーキック用スペースやメディア用エリア確保のため、一部座席が撤去された。
カウボーイズの選手たちは、うらやましそうにその光景を見守っている。
W杯会場を運営するNFLチームのオーナーたちが、大会のために訪れるサッカー選手向けに天然芝を敷設する一方で、地元のフットボール選手たちは自分たちも同じような環境で試合ができる日を夢見ている。
NFL選手会トップのJ.C.トレッター氏はポッドキャスト「ノット・ジャスト・フットボール」で、「FIFAを見てみろ。NFLオーナーたちは選手のためにレッドカーペットを敷いている。こちらも快適で安定したフィールドが欲しいよ」と語った。
カウボーイズのオールプロ・レシーバー、シーディー・ラム選手も、NFL選手の92%が人工芝より天然芝の方がいいと思っているとする調査をリポストしながら、インスタグラムに「お願いだ、@NFL」と投稿した。
ただし、NFL選手たちはその実現に向け交渉を行わなければならない。W杯終了後、新しい天然芝は設置された時と同じくらい迅速に撤去される予定だからだ。
カウボーイズのオーナー、ジェリー・ジョーンズ氏は「プロ・フットボール・トーク」で、「われわれはスタジアムのフィールド管理には柔軟に対応している。芝生の方が安全だとは考えていない。人工芝は、他にもいろいろあるが、この競技を運営する上での経済性を向上させる。そして最大の恩恵を受けるのは選手たちだ」と語った。
■開催コスト
W杯のための改修には巨額の費用が伴った。メキシコ市のアステカ・スタジアムの名で知られるエスタディオ・バノルテは8000万ドル、シアトルのルーメン・フィールドは1940万ドル、アローヘッド・スタジアムは4250万ドルを投じた。
メジャーリーグ・サッカー(MLS)のトロントFCとカナディアン・フットボール・リーグ(CFL)のアルゴノーツの本拠地であるトロントのBMOフィールドは、最大規模の1億4600万ドルを投じた。
今回のW杯は国際スポーツ大会として異例な点がある。過去の大会や五輪と異なり、新設された会場は1つもない。
シックマン氏のような開発関係者にとって、これは誇りでもある。
五輪やW杯会場が大会終了後、使用されず荒廃しているというニュースが話題になることがよくあるからだ。
同氏は「われわれは巨大イベント後に『白い象(無用の長物)』にならない施設づくりを目指している。トロント市はW杯開催のため、BMOフィールドを4万5000席にする必要があった。しかし通常のトロントFC戦に4万5000席は必要ない。追加した1万7000席は撤去される」と語った。
しかし、多くの開発業者や施工業者は、来月数百万人の観客を迎える大会準備に最大4年を費やしてきたため、その後についてはまだ深く考えていない。
ジョンソン氏は、「この夏の大会準備に全ての焦点が当てられており、過去1年間、優先順位の99%を占めていた。そのため、この夏の大会後についての議論はそれほど行われていない」と語った。
BMOフィールドの増設席は秋までに撤去される。一方、カンザスシティーやフィラデルフィアのように下段席のコンクリートを撤去した会場の今後は、まだ不透明だ。
ジョンソン氏は「将来どうするかについては、まだ流動的だ。再びコンクリートで復元するかもしれないし、次の計画が始まるまで仮設席を比較的長期間利用する可能性もある」と語った。
W杯は6月11日に開幕する。
