米、南アの新レアアースプロジェクトに関心 険悪な両国関係に好影響も

2025年9月8日(月)、レインボー・レアアース社のプロジェクトディレクター、アルベルト・ブルットメッソ氏が、南アフリカのファラボワにおける同社の活動について説明している。(AP通信/テンバ・ハデベ)
By Joseph Hammond – Special to The Washington Times – Tuesday, May 26, 2026
【ケープタウン(南アフリカ)】南アフリカは、イスラエル問題、難民政策、中国との関係強化をめぐって米国との関係が冷え込んでいるが、米国が支援するレアアース(希土類)開発事業が意外な明るい材料として浮上している。
南アの今は使用されていない化学施設近くの2つの巨大な砂の山が、両国関係改善の糸口となっている。トランプ米大統領は昨年、「白人虐殺」を黙認していると南アフリカ政府を非難していた。
トランプ氏はその後、今年12月に米国が主催する20カ国・地域首脳会議(G20サミット)への南アの参加を認めない方針を示した。
それでも、南アが保有する白金族金属などの重要鉱物資源は、米国にとってますます重要な存在となっている。
米産業界や政治指導者らは、「ファラボルワ・レアアース・プロジェクト」に興味を示している。これは、過去の肥料・リン酸生産で生じた廃棄物から金属を回収する革新的な事業だ。
ファラボルワは南ア北東部、モザンビーク国境近くに位置する小さな町で、国内最大規模の露天掘り銅・リン鉱山がある。鉱山は直径約1.6キロ、深さ約820メートルに達する。
ロンドンに本拠を置くレインボー・レアアース社は、長年の採掘によってできた2つの巨大な採鉱廃棄物の山から希土類鉱物を抽出することを計画している。堆積物には、酸や肥料の生産に使われるリン鉱石の処理過程で発生する副産物「リン石膏」が3500万トン含まれている。
このリサイクル事業に米政府が関心を示している。第1次トランプ政権時に、中国が支配する世界のレアアース市場に代わる供給源を確保する目的で設立された米国際開発金融公社(DFC)は、2023年に同事業へ5000万ドルを出資した。
しかし、米南ア両政府との政治的対立は依然として強い。それでも双方は、鉱物資源が関係改善の出発点になり得るとの認識で一致している。
5月6日には、両国の政府関係者約25人が、南ア最大の都市ヨハネスブルクで戦略鉱物に関する協力を協議した。
南ア紙デーリー・マーベリックによると、ブレント・ボゼル駐南アフリカ米大使が出席した他、南アからは副大臣2人が参加した。また、米輸出入銀行やDFCの代表者も出席したと報じられている。
この会合は今年に入ってから最も高位レベルで行われた米南ア間協議となった。
両国関係改善の兆しは、4月27日の南アのアパルトヘイト(人種隔離政策)の終結を記念する「自由の日」に、マルコ・ルビオ米国務長官が発表した声明にも見られた。
ルビオ氏は「双方の利益が一致する分野では、建設的な関与に引き続き前向きだ」と述べた。
南ア当局者はワシントン・タイムズに、この声明は与党アフリカ民族会議(ANC)内で関係再構築への重要なシグナルとして受け止められたと語った。
南ア特有の地質は長年にわたり世界経済との結び付きを生んできた。19世紀後半の金・ダイヤモンドラッシュでは、南アの鉱山都市が有名となり、米カリフォルニア州には「ジョハネスバーグ」や「ランズバーグ」といった地名まで誕生した。米国の投資や鉱山機械も同国資源産業を支えてきた。
かつては金とダイヤモンドが中心だったが、現在の南アフリカは21世紀の米経済に不可欠な鉱物資源を供給している。
人口約6500万人の同国は世界有数の白金族金属埋蔵量を誇り、米国向け最大の供給国でもある。また、米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、クロムや軍需用バナジウムの最大供給国でもある。
これらの鉱物は電気自動車、人工知能(AI)インフラ、ミサイルシステム、先端航空宇宙技術に不可欠だ。
米議会では、外国が支配する鉱物供給網への依存が産業や国家安全保障上の脆弱(ぜいじゃく)性になるとの懸念が高まっている。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、中国は世界のレアアース生産の60%を占め、精製能力では91%を支配している。また、レアアースを用いた永久磁石の94%を生産している。
米国を含め他地域にも有望な鉱床は存在するが、南アには精製のためのノウハウや技術が整っており、生産コストも比較的低い。
南ア貿易産業競争省の特使、ラヒーム・ンクマネ氏は、「南アフリカは政策として鉱業を中心に据え、西側との関係改善に取り組んでいる。政府の最優先課題は鉱物資源の潜在力を開発することだ。両国には長い鉱業協力の歴史がある。(パレスチナ自治区)ガザの問題などで意見の違いは残るかもしれないが、それが意味ある経済協力を妨げるものではない」と述べた。
もともと良好とは言えなかった米南ア関係は、トランプ氏の大統領再任でさらに悪化した。米国は、南アが国際司法裁判所(ICJ)にイスラエルを提訴したことを批判している他、新興国グループ「BRICS」への積極関与にも反発している。
BRICSは、西側主導の体制や国際経済での米ドルの役割に対抗してきた。南アの他、ブラジル、中国、エジプト、エチオピア、インド、インドネシア、イラン、ロシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)が加盟している。
トランプ政権は、アフリカーナー(17世紀以降に南アフリカへ移住したオランダ系、フランス系ユグノー〈カルバン派の新教徒〉、ドイツ系移民の子孫)に対する「白人虐殺」が起きていると主張し、南アで開催されたG20サミットへの参加を見送った。
2025年11月の南アG20サミットは、アフリカで初めて開催されたG20会合だった。2026年1月には、イラン海軍最大の艦艇「マクラン」が、BRICS合同海軍演習のため南アのケープタウンに寄港した。米国はこれを強く批判した。
同艦はその後、イランの母港に戻っていたが、3月の米イスラエルによる空爆で破壊されたとみられている。
南アには約270万人のアフリカーナーが暮らしている。20世紀の大半を通じ、彼らは政治・経済の中枢を占めていた。その優位性は白人を優遇するアパルトヘイトとして制度化されていたが、1994年の民主化後、政治権力は同国内の多数派に移行した。
匿名を条件に取材に応じたアフリカーナー系の治安関係者は、「農民が殺害されても十分な捜査が行われない。白人農家は南アフリカで特に危険にさらされ、政府は財産権保護にほとんど取り組んでいない。そのため多くの人が国外移住を望んでいる」と語った。
米難民処理センターによると、2025年10月1日から2026年4月30日までに米国が受け入れた南ア難民6069人のうち、3人を除く全員がアフリカーナーだった。残る3人はコロラド州へ定住したアフガニスタン難民だった。
一方、ウェストケープ州議会のANCの幹部、ムハンマド・ハリド・サイエド氏は、「犯罪は全ての共同体に影響しており、最大の被害者は黒人南アフリカ人だが、白人農家や地方住民も保護を必要としている。トランプ大統領による鉱業や製造業への投資拡大への取り組みを歓迎する。犯罪問題の長期的解決策は挑発的な言説ではなく、投資と雇用創出だ」と述べた。
今年初めにケープタウンで開催された会議「マイニング・インダバ」で鉱業関係者がワシントン・タイムズに語ったように、ファラボルワ・レアアース・プロジェクトは米南ア経済協力の新時代を象徴する可能性を示している。
2028年に生産開始予定の同事業では、廃棄物からネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムが回収される計画だ。南ア北部リンポポ州の現場では少なくとも16年間にわたり商業生産が続く見通しである。
政治的対立の緩和が拡大するかどうかは不透明だ。しかし、中国主導の鉱物供給網に代わる選択肢を模索する米国にとって、南アの豊富な資源は、両国関係再構築の基盤となる可能性を秘めている。