中国軍、求人サイト利用しスパイ勧誘 ファイブアイズが異例の警告

北京の米国大使館が主催した米大統領選挙関連イベント中、ホテルの外に米国と中国の国旗が掲げられた。政府報告書は、中国、ロシア、イランの諜報機関が、米国の企業、政府研究所、大学から企業秘密や専有情報を盗もうと躍起になっている様子を明らかにしている。(AP通信/アンディ・ウォン)
By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, June 4, 2026
中国軍の情報機関が、西側諸国の専門職向け交流サイトやオンライン求人サイトを利用して機密情報を収集しているとして、米連邦捜査局(FBI)、英情報局保安部(MI5)など5カ国の情報機関が共同で警告を発した。
それによると、人民解放軍の情報機関は、多数のオンラインサイトを利用して、これら5カ国の政府・軍関係者を標的に情報を集めていることが確認されている。
報告書は「積極的にオンライン勧誘戦略を用いている。情報機関員やその協力者が民間コンサルティング会社、シンクタンク、人材紹介会社の社員を装い、外交・安全保障アナリストなどの職種を対象とした求人広告を掲載している」と指摘している。
報告は3ページにわたり、4日にFBIとMI5が公表した。オーストラリア、ニュージーランド、カナダの情報機関も署名している。5カ国は機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」の加盟国だ。
今回の警告は、中国のスパイや違法な影響工作員とされる人物に対する最近の米国での一連の訴追や、中国政府と関連する大規模なハッキング活動、重要インフラに対する事前破壊工作の動きなどを背景に出された。
中国軍情報機関による脅威を公に特定した警告は異例だ。中国が機密情報収集に利用する主要な情報機関は軍の情報機関、国家安全部(MSS)、中国共産党の情報・影響工作組織の3系統が存在する。
警告によると、中国側は勧誘対象者に圧力をかけ、非公開情報の提供を求める。
「中国軍情報機関は最終的に、軍事、政治、経済に関する機密情報を獲得し、ファイブアイズ諸国に対する戦略的・戦術的優位性を得ようとしている」と警告は指摘している。
軍情報機関は、防衛、外交、安全保障、情報機関関連の機密情報に接触できる人物と長期的な関係を築こうとしているという。
さらに、インド太平洋地域に展開する軍人で、同盟国軍の能力や活動に関する情報を持つ人物も標的とされている。
第三の標的には、政府情報にアクセスできる学者、記者、フリーランスのライター、シンクタンク職員、防衛・安全保障・政策・経済分野に関わる人々が含まれる。
軍情報機関員は、人材紹介業者やコンサルタントを装い、中国国外に所在するように装った架空の一見正当に見える「フロント企業」を利用して接触する。
勧誘は、リンクトイン、インディード、アップワークなどのサイトに求人広告を掲載することから始まる。これらは専門職や現・元政府職員、軍関係者に広く利用されている交流・求人プラットフォームだ。
人民解放軍は、機微な情報に接触できると判断した人物を選別して勧誘を進める。
まず試験として、中国の二国間関係、インド太平洋地域、防衛問題、国際貿易など中国が関心を持つテーマについてリポートを書くよう求める。
その後、より機密性の高い情報の提供を求める段階へ移行する。
「情報機関員は勧誘の過程のどこかで、暗号化されたメッセージアプリなど、より『安全な』通信手段へ会話を移す」と報告書は述べている。
報酬はリポート1本につき数百ドルから数千ドルに及び、機密情報やより重要な情報の提供に対してはさらに高額な支払いが提示される可能性がある。支払いはペイパル、ペイオニア、ゼル、スクリル、ワイズなどのオンライン決済サービスを通じて行われるほか、ウエスタンユニオンの送金も利用される。
報告書によると、勧誘対象者の多くは機密情報そのものには接触していないが、政府の政策、軍事戦略、能力、施設に関する非機密情報であっても、より機微な情報と組み合わせることで、人民解放軍に米国や同盟国軍の包括的な作戦状況を提供する可能性がある。
そうした情報の一部は、「前線の軍人などの要員の生命を危険にさらし、経済的繁栄を損ない、民主的プロセスへの干渉を可能にする」と報告書は警告した。
報告によると、中国側に機密情報を不正提供した者は、スパイ行為関連の罪で訴追される可能性がある。
「ファイブアイズの各機関は、こうした活動に関与した人物を特定しており、刑事訴追、解雇、機密情報アクセス資格の剥奪につながった事例がある」という。
中国外務省の毛寧報道局長は報告書の内容を否定した。
「ファイブアイズは長年にわたり世界各地でスパイ活動を行ってきた情報ネットワークだ。そのような組織が中国の『スパイの脅威』を非難するのは皮肉なことだ」と述べた。
米国家安全保障局(NSA)の元防諜担当官ジョン・シンドラー氏は、ファイブアイズ諸国は以前から、特にリンクトインがスパイ活動の主要な舞台になっていることを把握していたと語った。
現在ニュースレター「トップ・シークレット・アムブラ」を執筆している同氏は、「中国の情報機関は長年、このプラットフォームを利用して、だましやすそうな西側の人物を見つけ出し、評価し、時には勧誘してきた。それには機密情報アクセス資格を持つ人物も含まれている。ファイブアイズ加盟国でスパイ事件は複数発生している。すべてが公表されているわけではないが、その発端はリンクトインだった」と語った。
シンドラー氏は、ファイブアイズが報告を公表したのは、リンクトイン上での中国のスパイ活動が既に深刻な水準にあるだけでなく、さらに拡大していることへの警鐘だと述べた。
米当局はここ数カ月で、さまざまな容疑で十数人以上を逮捕している。容疑には、中国による先端半導体の不正持ち出し、サイバースパイ活動、重要インフラへの侵入、不法な中国代理人活動、資金洗浄、違法薬物取引への関与などが含まれる。
中国軍情報機関による米国への重大な工作の一例として、中国人の蘇斌氏による事件がある。蘇氏は2009年から2014年にかけて、人民解放軍の作戦を主導し、米航空機大手ボーイングのコンピューター網をハッキングした。
この作戦で、C17輸送機やF22、F35戦闘機に関する約63万件のファイルが盗まれた。F22とF35は米軍の最先端ステルス戦闘機である。
蘇氏は2016年に有罪を認め、約4年の禁錮刑を言い渡された。
国防情報局(DIA)の元防諜担当官ニコラス・エフティミアデス氏は今年2月、蘇氏が一部所有する企業「ロード・テック」が、中国人パイロットに高度な空中戦や空母運用を秘密裏に訓練する活動に関与していたと指摘した。
訓練に参加した元軍パイロットには、米国、ドイツ、カナダ、英国出身者が含まれていた。
民間情報会社グレイ・ダイナミクスの報告によると、人民解放軍の軍事情報機関は、かつて総参謀部第2部(2PLA)として知られていたが、2016年と2024年に組織再編が行われた。
現在の軍スパイ組織は、比較的新しい情報局であり、中国共産党中央軍事委員会の統合参謀部に属している。
報告書は、「この再編によって旧2PLAの機能と人員が統合され、情報局の地位と能力はさらに強化された」と分析している。
また2024年には、軍情報部門の大規模な再編が実施され、航空宇宙、サイバー空間、情報支援の各部隊が新設された。
報告書は、「情報、サイバー、宇宙分野の能力を専門化・集約するこうした再編は、高度に専門化された情報支援型戦闘支援と、これらの分野に対するより強力な政治的統制への指針の転換を反映している」と指摘した。


