W杯中の感染症拡大を監視 下水やSNSを分析 大学・企業が連携

(2026年6月12日)
2026年5月14日(木)、テキサス州アーリントンにあるダラス・スタジアムで、2026 FIFAワールドカップに先立ち敷設された人工芝のプレビューが行われた際、AT&Tスタジアムの一部が照明で照らされた。(AP写真/フリオ・コルテス)

2026年5月14日(木)、テキサス州アーリントンにあるダラス・スタジアムで、2026 FIFAワールドカップに先立ち敷設された人工芝のプレビューが行われた際、AT&Tスタジアムの一部が照明で照らされた。(AP写真/フリオ・コルテス)

By Mary McCue Bell – The Washington Times – Wednesday, June 10, 2026

 サッカー・ワールドカップ(W杯)の警備体制に新たな取り組みが加わる。大会期間中の感染症拡大を監視するため、下水やSNSの情報を分析する。

 目的はW杯期間中の深刻な疾病発生を防ぐことにある。11日から北米で開催されるこの世界最大のスポーツイベントには、100カ国以上から約650万人のサッカーファンが訪れる見込みだ。

 ワシントンの公衆衛生専門家らは、今夏に米国、メキシコ、カナダの16都市で行われる104試合を対象に、下水データやインターネット上の情報を調査し、新たな感染症の発生を早期に察知する計画だ。

 取り組みを主導するのは、ジョージタウン大学と非営利団体メドスター・ヘルスの連携組織「国立健康安全保障・回復センター」のチームだ。同大学の世界健康科学・安全保障センター所長のレベッカ・カッツ氏が率い、潜在的な脅威に関するリアルタイムで情報を提供する。

 この取り組みには政府機関を支援する大学、非営利団体、民間企業などが参加する。「健康安全保障オペレーションセンター」と名付けられている。

 同センターは6月1日に活動を開始し、既に米国とカナダのデータ収集地点から情報を受け取っている。

 カッツ氏は声明で、「ワールドカップのような大規模イベントでは、単一の組織や行政機関だけでは実現できない、連携された多分野横断型の状況把握が必要になる。私たちの役割は、市保健当局や病院、緊急事態管理担当者など、公衆衛生を守る責任を負う人々を支援することだ。複雑な状況を評価し、リスクが発生した場合に自信を持って対応できるよう、データと分析結果を提供する」と説明した。

 毎日の状況報告書で、新たなリスクを病院の緊急対応責任者や公衆衛生当局、大会運営者に通知する。既に350以上の団体や個人が日次報告の受信登録を済ませている。

 また、試合観戦者を対象とした調査やオンライン上の議論も監視する。

 研究者らはDNAとRNAの解析技術を用い、培養検査を行わずに下水中の微生物の遺伝子情報を特定する。カッツ氏はロイター通信に対し、「極めて強力な手法だ」と語った。

 チームは特に麻疹の監視を重視する。今年の米国の感染者数は既に2000人を超え、昨年の2286人に迫っている。昨年の数字も、米国で麻疹が根絶されたと宣言された2000年以降で最多だった。エボラ出血熱や蚊が媒介する感染症も監視対象となっている。

 また、電子カルテから匿名化されたデータを収集し、感染症流行の兆候を把握するため、公開されているSNS上の情報も分析する。

 健康安全保障オペレーションセンターは、2028年ロサンゼルス夏季五輪など将来の大規模イベントに向けた試験的な役割も担っている。

 メドスター・ヘルスのバイオ封じ込め部門責任者シェーン・カプラー氏は、「これは健康安全保障分野の発展につながる極めて重要で時宜を得た機会だ」と述べた。

 さらに、「ワールドカップ期間中だけでなく、その後も地域社会の強靱性を高める保健インフラの構築に取り組んでいく」と語った。

 連邦政府はW杯の警備対策として6億2500万ドルの補助金を計上したが、公衆衛生対策には資金を割り当てていない。

 連邦緊急事態管理庁(FEMA)の報道担当者はスポーツ・イラストレーテッド誌に対し、「公衆衛生や生物学的安全保障、食品安全に関する活動は通常、こうした補助金の対象とはならない」と説明した。

 同センターによると、活動資金はジョージタウン大学、メドスター・ヘルスのほか、家族財団や現物支給によるサービス、機材、専門知識を提供する協力団体から拠出されている。

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