分断深まる米社会 宗教系大学「対立意見を尊重」 言論団体からは懸念も

(2026年6月13日)
ユタ州知事のスペンサー・コックス氏(共和党)は、2026年6月8日(月)、アメリカ・カトリック大学で、全米のキリスト教系およびユダヤ教系の大学の代表者らを前に演説を行った。(ショーン・サライ/ワシントン・タイムズ)

ユタ州知事のスペンサー・コックス氏(共和党)は、2026年6月8日(月)、アメリカ・カトリック大学で、全米のキリスト教系およびユダヤ教系の大学の代表者らを前に演説を行った。(ショーン・サライ/ワシントン・タイムズ)

By Sean Salai – The Washington Times – Tuesday, June 9, 2026

 宗教系大学は、トランプ時代の分断の中で「政治的対立相手への敬意」の模範と自らを位置付けている。今週開かれた会合では、各大学が学生への道徳教育としての言論規範をアピールした。

 米教育協議会(ACE)のテッド・ミッチェル会長は、ACE宗教系大学委員会で「信仰共同体は、今の米国が切実に必要としている秘伝のたれの中で煮込まれてきた」と語った。8日午後に開かれた委員会会合には、大学学長33人を含む約150人のユダヤ・キリスト教系大学関係者が出席した。

 共和党員で末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)の信者でもあるユタ州のスペンサー・コックス知事は、トランプ大統領の過激な政治的言辞を批判してきた人物で、宗教系大学は学生に多様な価値観を受け入れる姿勢を教えていると述べた。

 コックス氏は、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件や、保守派政治活動家チャーリー・カーク氏の暗殺事件を引き合いに出し、人々が宗教系学校に分断的な言論から離れた安息の場を求めていると指摘した。

 コックス氏は基調講演で大きな拍手を受け、「米国が今後250年存続するためには、この問題を正しく解決しなければならない」と語った。

 このほか、ベイラー大学、イェシバ大学、ノートルダム大学、ブリガムヤング大学の学長らも登壇。神と隣人を愛するという教育理念の下で、学生らに「より良い意見の相違の仕方」を教えていると語った。

 イェシバ大学のアリ・バーマン学長は、「私たちは学生に、自らの価値観をより深く掘り下げるための模範を示している」と述べた。

 会合では、宗教系大学が学位の価値に対する社会の信頼回復に取り組むべきだとの意見も示された。

 末日聖徒イエス・キリスト教会の長老クラーク・ギルバート氏は、世論調査会社ギャラップと非営利団体ルミナ財団の調査結果を紹介した。それによると、大学を「大いに信頼している」または「かなり信頼している」と答えた成人の割合は、2015年の57%から2025年には42%へ低下した。

 ワシントン北東部のアメリカ・カトリック大学で開かれた会合に出席した大学関係者らはワシントン・タイムズに、対外的なディベート用に宗教的指針を作成しており、そのおかげで学生が異なる意見を尊重するようになっていると語った。

 オハイオ州のシーダービル大学で法務顧問を務めるブライアン・シュロール氏は、「われわれは言論の自由や自由な考え方を奨励しているが、公立大学にはできない一定の境界線を設けることができる」と述べた。同大学はLGBTQ学生団体を認めておらず、学生にキリスト教徒であることを求め、教員にはバプテスト派の信仰告白への署名を義務付けている。

 ミズーリ州の福音派系オザークス大学のチーフ・オブ・スタッフ(CoS)アンドルー・ボルジャー氏は、学生に善を追求し、言葉の上でもキリスト教的なもてなしの精神を実践するよう求めていると語った。

 同氏は「全ての学生は権利章典を学ぶ愛国教育の授業を受講するが、それと同時に大学の基本理念も守らなければならない」と述べた。

 1918年創設のACEはワシントンに本部を置き、全米約1600の大学・教育機関を代表する高等教育分野の主要な調整機関である。

■言論の自由擁護団体は懸念

 会合には出席していない言論の自由擁護団体「個人の権利と表現のための財団(FIRE)」は、宗教系大学は知的多様性よりも同調性を促進する傾向があると指摘した。

 FIREの政策改革担当責任者ローラ・ベルツ氏は、「最良の環境とは、論争の的になっているあらゆる考え方が提示され、議論される場だ。大学が共有できる見解を特定のものに限定すれば、真の『思想の市場』として機能する機会は失われる」と語った。

 ベルツ氏は、2024年にACE宗教系大学委員会を設立した大学には、宗教的価値観に基づいて「独自の言論規則を設ける法的権利」があると認めた。しかしその一方で、「言論を保護する方針を採用し、それを実際に運用すべきだ」と訴えた。

 会合に出席しなかった他の言論の自由の専門家らも、合衆国憲法が保護しているのは、宗教的に不快感を与えない表現だけでなく、ほぼすべての言論の自由を保証していると反論した。

 言論擁護団体「PENアメリカ」の高等教育・表現の自由部門の責任者クリステン・シャーベルディアン氏は、「大学が礼節ある対話を促進するための規則や場を設けるのはいいが、結果として別の自由な探究の機会を抑圧しないよう注意しなければならない」と述べた。

 FIREはこれまで、保守的キリスト教系のヒルズデール大学とたびたび対立してきた。同大は左派団体の集会を認めないなどの道徳規範を適用している。一方でFIREは、保守派学生の意見を抑圧するために曖昧な言論規則を恣意的に運用しているとして、中道派やリベラル派の宗教系大学も批判してきた。

 FIREは2025~26年度中に、カトリック大学が掲げる言論の自由の原則の適用に一貫性がないと3度にわたって問題視してきた。

 それによると、大学当局は、イスラエル国旗を掲げパレスチナ自治区ガザでのテロ犠牲者を追悼する記念施設を撤去し、成人向けコンテンツへの懸念から学生のオンライン掲示板レディット利用を一時停止した。また、イスラム教徒に対して強硬な見解を持つランディ・ファイン下院議員(共和党、フロリダ州)について、対抗する別の講演者がおらず、バランスが取れないとして、同氏の反ユダヤ主義に関する講演を認めなかった。

 会合後にワシントン・タイムズの取材に応じたカトリック大学のピーター・キルパトリック学長は、「人々が礼節を持って自らの意見を表明し、他者を尊重できるよう、議論の場を整えようとしている。イエスはそれを『敵を愛すること』と呼んだ」と語った。

会議場で講演を行う講演者。写真提供:Matej Kastelic(Shutterstock経由)。

「幽霊学生」が支援金数億ドルを不正受給 バイデン前政権で急増 アフリカに拠点

(2026年11月02日)
2006年3月28日、ニューヨークで行われた「ノー・キングス」デモ行進で、参加者たちは「アメリカ民主社会主義者」「緊縮財政を止めろ」「金持ちに課税せよ」と書かれた横断幕を掲げた。写真提供:Shutterstockのリチャード・スカルゾ。

左派、2028年大統領選へ暴動計画 米保守系シンクタンクが警告

(2026年10月31日)
トランプ大統領とバラク・オバマ前大統領は、11月3日の中間選挙で議会の主導権を巡って激しい舌戦を繰り広げ、互いに侮辱し合い、言葉の応酬を繰り広げた。(AP通信/マーク・シーフェルベイン撮影、AP通信/ジュリア・デマリー・ニキンソン撮影)

上院選巡る攻防 トランプ、オバマ両氏が非難の応酬

(2026年10月28日)
2026年10月7日(水)、クリーブランドで行われた期日前投票で、有権者が投票用紙をスキャンしている。(AP通信/スー・オグロッキ撮影)

民主党有利の世論調査、運営会社が捏造認める 「実験的プロジェクト」と釈明

(2026年10月25日)
米上院選民主党候補のアブドゥル・エル=サイード氏が、2026年10月8日木曜日、ミシガン州グランドラピッズのWOOD-TVで、米上院選共和党候補のマイク・ロジャース氏とのテレビ討論会後、報道陣の取材に応じた。(AP通信/ポール・サンシア撮影)

民主上院候補エルサイード氏 イスラム過激派と関係か

(2026年10月20日)
「自由のための母親たち」の共同創設者であるティナ・デスコビッチ氏が、2024年8月30日(金)、ワシントンで開催された同団体の年次大会で、共和党大統領候補のドナルド・トランプ前大統領を前に演説を行った。(AP通信/マーク・シーフェルベイン撮影)

保守系の保護者団体、学区の動向監視へAIを導入

(2026年10月19日)
米上院議員選挙の民主党候補アブドゥル・エル=サイード氏が、2026年8月7日(金)、デトロイトのルネッサンス高校で行われたミシガン州民主党の総選挙開始集会で演説を行った。(AP通信/ポール・サンシア撮影)

民主上院候補エルサイード氏 アラブ、黒人、ユダヤの支持固めに苦慮

(2026年10月13日)
2024年1月2日、マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大学キャンパスで、ジョン・ハーバード像(左)の近くで写真を撮る人々。(AP通信/スティーブン・センネ撮影)

ハーバード大、保守派教員の採用推進に反発

(2026年10月12日)
2026年8月19日(水)、ワシントンD.C.のワシントン記念塔から見たペンタゴン。(AP通信/アレックス・ブランドン撮影)

バイデン前政権の性自認政策に「懸念」 陸軍特殊作戦部隊の内部文書を入手

(2026年10月09日)
J・D・バンス副大統領が、2026年9月18日(金)、アイオワ州カウンシルブラフスのミッドアメリカセンターで開催された共和党全国委員会の中間選挙集会で演説するために到着した。(アンナ・マネーメーカー/AP通信提供プール写真)

キルスイッチ、監視、開発停止 議会でAI規制案続々 合意に至らず

(2026年10月07日)
→その他のニュース