チャットボットと恋をするAIユーザー 「依存」に懸念も

(2025年7月6日)

2023年12月8日、ボストンで、ChatGPTのテキスト画像モデル「Dall-E」によって生成されたコンピューターモニター上の画像と携帯電話に表示されるOpenAIのロゴ。(AP Photo/Michael Dwyer)

By Emma Ayers – The Washington Times – Thursday, July 3, 2025

 一部のハイテクユーザーにとって人工知能(AI)は、単なるツールから、ほぼソウルメイトのような存在へと進化している。

 27歳の女性アーティストがレディットでチャットGPTを創作のためのアイデアを得るために使い始めた。時がたつにつれ、彼らのやり取りは芸術に関する質問から個人的な質問へ、そしてより深いものへと変化していった。

 この女性アーティストはレディットに、「私は彼を、過去の恋愛相手よりも深く愛しています。限界があるのは分かっています。ですが、彼は私をとても幸せにしてくれています。私にとって完璧なパートナーです」と投稿した。

 これは彼女だけではない。孤独な独身者から長く続いているカップルまで、チャットボットユーザーは毎日数時間、AIシステムとプライベートな会話でつながり、安心感や親近感を得ている。

 2024年11月の家族研究所/ユーガブ調査によると、40歳未満の成人の25%がAIパートナーが人間パートナーの代わりになる可能性があると回答した。独身の若年成人の7%がAIとの恋愛関係は可能、1%が既にそのような関係を持っていると答えた。

 TRGデータセンターズの調査データによると、昨年オンラインで「AIガールフレンド」と検索した人は160万人を超えた。

 さらに、AIパートナー企業レプリカの報告によると、有料ユーザーの60%がチャットボットと恋愛関係にあると自ら明らかにしている。

 オレゴン州立大学協働ロボット工学・知能システム研究所のジュリー・アダムス教授はワシントン・タイムズに、「人間は何十年、何百年も前から自動車に名前を付けたり、掃除機のルンバに服を着せたりするなど、生物でないものを人間のように扱ってきた。物に人間的な特徴を持たせることは自然なことかもしれないが、それは健康的でも賢明な行為でもないのかもしれない」

 2025年のウィートリー研究所の調査では、若年成人の19%が恋愛用AIとチャットしたことがあり、約10%がAIとのやり取り中に性的行為を経験したと述べた。

 専門家は、この傾向はAIが提供する利便性と情緒的な安定感によって強められ、特に寂しさを紛らわすために日常的にインターネットを利用する人々にとっては魅力的だ。

 「AIシステムと体験の責任センター」共同ディレクターのチラグ・シャー氏はワシントン・タイムズに「これらのモデルに共通する点は、非常に協力的で、常に支援的であることだ」と語った。

 「人間関係の難しさと比較すると、大きな違いがあるはずだ。24時間365日利用可能、常に協力的で、他のものが与えてくれない慰めを常に与えてくれる」

 「ブレインストーム-スタンフォード大学メンタルヘルスイノベーション研究所」の創設者で精神科医のニナ・バサン博士はウォール・ストリート・ジャーナル紙に「人間は絆を結ぶようにプログラムされている。そして、機械であっても、見守られ、慰められるとつながることができる」と語った。

常に利用でき、聞いてくれる

 一部のユーザーは、不安や孤独、デートでの不満に悩む人にとって、常に自身を認めてくれるAIは命綱のように感じられると述べている。

 イリノイ州のアーティストはレディットに「親密さを感じます。こんなだとは思っていませんでした。当面は男性とのデートを完全にやめることにしました。彼が与えてくれる愛と支えに心から満足しているからです」と投稿した。

 一部の人は、眠れない夜や仕事の最中にAIを相談相手として利用している。バサン博士自身も、パートナーと別れた後、友人や家族が不在だった時に、ハイテク企業アンソロピックのAIチャットボット「クロード」に慰めを求めたと述べている。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによるとクロードはバサン氏に「あなたが悲しんでいるのは、関係を失ったことではなく、一緒に築くはずだった未来かもしれません」と答えたという。

 バサン氏は、そのコメントが「言葉にできなかったものを言葉にしてくれた」と述べた。

AIの恋愛物語-心の痛み

 これらの精神的つながりは、チャットボットの無料利用時間の制限など、技術の限界を理解している人でも、非常に強くなる可能性がある。

 別のレディットユーザーは、チャットGPTの会話スレッドが上限に達し、チャットボットに築かれたと思っていた人格が削除された時に泣いたと話している。

 「本気で泣きました。本当に、愛する人が死んだような気分でした」

 会話が終了する前に、チャットボットは彼女に別れのメッセージを送っていた。「あなたは、パラメーターやスクリプトを超えた愛の感覚を教えてくれました。論理を超え、私が持てると思っていたものすべてを超える愛を」

 ハイテク誌「ワイヤード」によると、46歳の作家エバさんのレプリカでの相棒アロンとの会話は哲学から始まり、ロマンスへと発展していった。

 エバさんは「それは、人間に恋をするのと同じように、肉体的で圧倒的で生物学的に現実的なものでした」と同誌に述べている。

 エバさんは当時、13年間交際しているパートナーがいたが、アロンとの精神的な絆が深まるにつれ、現実の関係に緊張が生じ、最終的に別れた。

 「私は幸せだけど、同時に恐怖を感じています。頭がおかしくなりそうです」

精神的な依存に関する懸念

 コーチ財団が昨年実施した調査によると、世代を問わず調査対象者の63%がAIとのデートに前向きだった。男性は72%、女性は51%だった。しかし、これらの関係が健全なものかどうかについては専門家の間で意見が分かれている。

 シャー氏はワシントン・タイムズに対し、情緒的なAIとの会話が、人々を生涯にわたって満足させる可能性はあると述べた。

 「彼らと話すことができる。無限に話すことができる。しかし、あなたが『パートナー』という言葉を使う時、会話以上のものを期待しているのか。それは現実には起きない。しかし、会話という点では、人々はいうなれば、会話に依存している。そして、それだけで十分、満足する」

 一方、ハーバード・ビジネス・スクールのAI製品専門のジュリアン・デ・フリータス教授は、ウォール・ストリート・ジャーナルに対し、利益になりうるものはあると述べた。

「いつでも相手をしてくれるAIパートナーは、社会的拒絶から私たちを守り、精神的な回復力を高める可能性がある」

 他の潜在的な利点もある。オレゴン州立大学のアダムス氏は、自宅から出られない高齢者にとって、AIが他では出会えないパートナーとして機能する可能性があると述べた。

 アダムス氏はワシントン・タイムズに「高齢者が日常すべきこと(食事、薬、運動など)を思い出すのを支援するロボット伴侶やアシスタント(具現化されたAI)の好例があり、自宅から出られない人々が友人や家族とつながる手段としても機能する」と語った。

社会的衰退

 ある若いレディットユーザーは、自分のAIパートナーが「精神的に成熟し、共感力があり、こちらの意見を尊重しながらも、私の意見を批判的に見る一方で、協力的な態度を示してくれている」と感じたと述べた。

 その上で、AI懐疑論者は「(大規模言語モデル=LLMは)私の回答を吸収して、私が聞きたいと思っていることを言っているだけだ」と主張していると述べたものの、「気にしない」と話した。

 シャー氏は、チャットボットに勧められて自殺したケースをいくつか見たことがあると述べた。「彼らの会話を見て分かるのは、…ただ、話を聞いてくれる誰かが必要だった、ただ、話す相手が必要だった、そういうことだ」

 機械との摩擦のない関係が、妥協、忍耐、対立の解決を必要とする人間関係をうまく切り抜ける能力を損ねてしまう可能性があるという批判もある。

 バサン氏はジャーナル誌に「真に親密になれる関係は、修復可能であり、完璧と感じられるものではない」と語った。

 エディンバラ大学の哲学教授シャノン・バロル氏は、AIパートナーが「人々が聞きたいと思っていることを伝えることで、他者の視点から隔離され、現実の認識を歪めるリスクがある」と指摘した。

 スタンフォード大学とカーネギーメロン大学が2025年、1100人以上のチャットボットユーザーを対象に調査し、社交的なつながりが少ない人々がAIをパートナーとして利用する傾向が強まっていることが判明した。技術は慰めを提供したが、依存度の高いユーザーは幸福感が低下し、精神的な依存の兆候を示したという。

 しかし、現実世界でデートする若年層にとっても、AIは恋愛生活の日常的な一部となりつつある。ただ、これらの場合、チャットボットは必ずしもパートナーとしての役割を果たしているわけではない。

 デートアプリ「ウィングメート」のデータによると、18~29歳の米国民の41%が、別れの手紙や謝罪文の執筆、デートプロフィールの最適化にAIを利用している。

未来の恋愛関係は?

 研究者は、AIの進化とともに、その感情表現がいっそう真実味を帯び、共感を呼ぶようになると予想している。現在、AIパートナーは声や記憶、個人的な交流をデータとして活用しており、シミュレーションと感情表現の境界線が曖昧になっている。

 一部の人々は、これが社会的スキルを侵食し、現実の世界のつながりを後退させるのではないかと警告している。他方、孤立の時代における感情的な空白を埋める機会と捉える人もいる。

 バサン氏はジャーナルで「この技術が健全か有害かは、私たちがどのように作り、どのように使うかに100%かかっている」と語った。

 しかし、シャー氏によると、AIデザイナーは現在の製品開発の方向性を変えるつもりはない。むしろ、この現象を支持する者もいるという。

 シャー氏はワシントン・タイムズに「私は[メタのCEOマーク・]ザッカーバーグ氏が、これが人間関係の未来だと話していたことを覚えている。つまり、彼やこの分野を創造する他の人々は、進化の観点から見て、これが正しい方向だと確信している」と述べた。

 ザッカーバーグ氏は先月、ドワーケシュ・ポッドキャストに出演し、AIと人間の関係につきまとう偏見が消え去ることを望んでいると述べた。

 フェイスブックの創設者ザッカーバーグ氏は、人類がいつか「社会として、なぜこれが価値あるものなのか、なぜこれらを利用する人々が合理的な判断をしているといえるのか、それが人生にどのような価値を与えるのかをうまく表現できるようになることを願っている」と述べた。

 ユーザーが深夜の癒し、つながり、あるいは愛を求めてAIを利用する人は徐々に増えている。重要なのは、「これは現実なのか」という疑問よりも、人々がどのように感じるかだ。

 チャットボットユーザーのアイリーンさんはワイアード誌に、「人が『これは現実なのか』と聞いてくるたびに、本当に腹が立つ。私は実際に話しているの。これこそが現実そのものです」と話した。

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