特殊部隊への「飽くなき需要」 任務に見合わない予算

(2026年5月22日)

2021年9月10日(金)、リマソール港で行われた米軍とキプロス軍の合同軍事演習中、米海軍特殊部隊SEALの隊員(左)が同僚と並んで立っている。(AP通信/フィリッポス・クリストゥ)

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Friday, May 15, 2026

 現代戦では、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を首都カラカスにある厳重警備の施設で拘束し、移送した1月の急襲作戦のような、米特殊部隊にしか遂行できない複雑かつ危険な任務への「飽くなき需要」が生じている。

 しかし、有力議員や軍関係者らによると、国防総省が特殊部隊―グリーンベレー、ネービーシールズ、デルタフォースといった精鋭部隊―への依存を強めているにもかかわらず、その重要性は膨張する国防予算に十分反映されていないという。

 国防総省は2027会計年度に全体予算を44%増やし、1兆5000億ドルにすることを検討しているが、米特殊作戦軍(SOCOM)の作戦・維持費の総額は、今会計年度の97億ドルから2027年度の109億ドルへと、はるかに控えめな増加にとどまる見通しだ。

 もっとも、これらの数字には調達、研究開発などのSOCOM関連費用は含まれておらず、財政全体の実像はさらに複雑だ。

 それでも著名な軍事アナリストの中には、21世紀に入り戦闘スタイルが急速に変化する一方で、米軍で最も困難かつ機密性の高い任務を担うエリート部隊への予算は比較的少なく、根深い乖離(かいり)が存在すると指摘する者もいる。

 非営利団体、グローバルSOF財団のスチュー・ブラディン会長兼CEOは「われわれは過渡期にいるが、適応の速度が十分ではない。誰もがそのことを語り、論文を書く。しかし国防予算を見ると、何も変わっていない」と語った。同財団は、フロリダ州タンパで毎年開催される「SOFウィーク」を米特殊作戦軍と共催している。このイベントは、世界各国の特殊作戦部隊関係者や防衛企業が集まる米国最大の会合だ。

 ブラディン氏ら特殊部隊の支持者は、今日の戦場では従来型の地上兵力や戦車を大量展開することが難しくなっていると主張する。また、空母や空母打撃群といった伝統的海上戦力も、ドローン群など新たな攻撃手法の出現により、以前より脆弱(ぜいじゃく)になっている可能性があるという。

 新たな現実の中では、精鋭部隊の重要性はこれまで以上に高まるとブラディン氏は述べた。

 同氏は将来の戦闘についてワシントン・タイムズに「今後の戦争はすべて非正規戦だと思う。米国を見ても、通常戦力による戦争を望む者はいない。通常部隊を紛争地域へ送り込むのにどれだけ時間がかかるのか。そして到着後どうなるのか。すぐ消耗してしまう。そんなことを望む政治家、政策立案者、指導者がいるだろうか」と語った。

■戦闘の新たな判断基準

 中東での戦争は、戦闘での判断基準が変化していることを示した可能性がある。

 4月初旬、トランプ大統領は、イラン国内に陸軍・海兵隊部隊を上陸させ、主要軍事施設やエネルギー施設を確保するとともに、高濃縮ウラン備蓄を発見、除去する困難な任務に着手させることを検討したと報じられている。

 しかし、最終的に部隊はイラン領内へ派遣されなかった。事情を知る関係者らはワシントン・タイムズに対し、その理由の1つとして、米軍部隊がイラン製ドローン攻撃に脆弱であるため、予想される死傷者数が想定以上に大きかった可能性を挙げた。

 有力軍事アナリストらは、一部の米軍部隊がイランのシャヘド・ドローンによる大規模攻撃に対処する準備が整っていないと警鐘を鳴らした。

 ジム・タウンゼント元国防次官補代理(欧州・北大西洋条約機構=NATO=政策担当)は当時、ワシントン・タイムズに「もし100機のシャヘドが襲ってきたら、どう対処するのか」と語った。

 現在はシンクタンク、新米国安全保障センター(CNAS)の非常勤上級研究員を務める同氏は、「そのうち10機でも突破を許せば、大量死傷につながる。大惨事を呼び込んでいるようなものだ」と強調した。

 一方、マドゥロ大統領拘束作戦では、従来型の軍事戦力が多く投入された。カラカスでの地上作戦自体は数時間で終了し、米軍最精鋭の特殊部隊によって遂行された。

 この作戦では複数の米兵が負傷したと報じられたが、死者は出なかった。

 この任務は、恐らく米国史上最大で最も複雑な特殊部隊による作戦と考えられている。この作戦の成功により、こうした特殊部隊が今後数十年にわたり、インド太平洋地域などの世界各地で米国の戦力投射の中心となるとの見方が強まった。

 特殊部隊は、今後の米軍および地政学戦略において中心的役割を果たすと期待されている。対テロ戦争の中、2011年にパキスタンで過激派組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンを殺害した急襲作戦などの任務で注目を浴び、特殊部隊は広く知られる存在となった。しかし、専門家らはまず、特殊部隊の成り立ちは、もっと幅広い背景を持つと指摘する。

 冷戦期の最も危険な時代までさかのぼると、特殊部隊要員は共産勢力との戦いの最前線に立ち、抵抗勢力と共に現地で活動し、避難作戦やゲリラ殲滅作戦など、ソ連の影響力に対抗する特殊任務を世界各地で遂行していた。

■予算と現実

 今日の安全保障環境から見て、特殊作戦部隊の重要性を疑う者は少ない。しかし、有力議員らは、トランプ政権が提案する国防予算も、これまでの予算案同様、必要な投資を満たすには不十分だと主張する。

 上院軍事委員長を務めるロジャー・ウィッカー上院議員(共和、ミシシッピ州)は4月28日の公聴会で「特殊作戦部隊は価値の高い目標への直接行動を実施する。さらに、中南米、欧州、第1列島線で同盟国、パートナー国の部隊を訓練、支援し、能力強化と同盟関係強化を進めている」と述べた。

 「彼らは敵対勢力に関する情報を過酷な環境で収集し、世界中の危機に即応する。そして平時と戦時の狭間、すなわち現代の戦略的競争の大部分が展開される『グレーゾーン』で活動している」

 「しかし、特殊作戦軍への予算配分は、その能力に対するほとんど飽くことのない需要に追いついていない。同軍は、要求される任務と利用可能な資源との間に深刻なギャップを抱えている」

 グローバルSOF財団は、各軍種の特殊部隊を統括する特殊作戦軍の基礎予算を100%超増額するよう求めている。同財団は、トランプ政権の2027会計年度予算案で示された109億ドルに対し、240億ドル規模を要求している。

 特殊作戦軍の司令官らは12日、上院軍事委員会の新興脅威小委員会で証言し、部隊が具体的に何ができ、なぜ追加予算が必要かを説明した。

 陸軍特殊作戦軍のローレンス・ファーガソン司令官(中将)は同小委で、「この4カ月間の出来事だけを見ても、特殊部隊への需要が衰えていないことは明らかだ。われわれの部隊は引き続き全面的に活動しており、あらゆる地域の戦闘部隊司令部、紛争の全領域において、国家の優先課題を遂行する特殊作戦上の選択肢を提供している」と述べた。

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