中国、全領域で軍事力を強化-米シンクタンク

2025年8月30日(土)、ベトナム・ハノイで行われたベトナム建国80周年記念式典の軍事パレードのリハーサルで、中国人民解放軍が行進している。(AP通信/ヴィンセント・ティアン)
By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, May 27, 2026
中国人民解放軍(PLA)は過去1年間で、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍の組織を拡充するとともに、宇宙戦、情報戦、サイバー戦を遂行するための専門部門も強化したことが、米空軍系シンクタンクの新たな報告書で明らかになった。
「この再編は、台湾有事から西太平洋、インド洋に至るまでの不測の事態において、PLAが統合・全領域作戦および情報化戦争を遂行する能力を向上させることを明確な目的としている」
米空軍系シンクタンク「中国航空宇宙研究所(CASI)」の報告書はこう警告している。
報告書によると、比較的新しい5つの戦区司令部の指揮体系も改善、強化された。
113ページに及ぶ報告書「PLA航空宇宙戦力―中国の軍事航空・宇宙・ミサイル部隊の動向」は26日に公表された。
2024年に戦略支援部隊を解体して創設された新たな航空宇宙軍も、中国の宇宙戦能力を強化している。
報告書によると、中国軍の文献は、PLAの拡大する戦力を、航空戦力、ミサイル戦力、海軍航空戦力、宇宙戦力という「相互補完的な抑止、威圧、そして必要であれば高強度の地域紛争遂行のための手段」と位置付けていると指摘した。
CASIのブレンダン・マルバニー所長は、この最新報告書が中国の先進戦争遂行能力を理解する上で主要な資料になると述べた。
「人民解放軍の航空戦力、宇宙能力、そして中国共産党(CCP)の指導の下にある航空宇宙産業基盤が、いかに急速に進歩し近代化しているかを説明している。極超音速兵器については米国に匹敵し、場合によっては既に上回っている」
過去1年間で特に懸念されているのは、空軍による長距離核抑止と戦略的示威活動だった。報告書によると、中国の核搭載可能な爆撃機H6による哨戒飛行や、日本・韓国周辺でのロシアの戦略爆撃機Tu95との共同飛行が確認された。
また、中国の核搭載爆撃機は台湾周辺でも哨戒活動を実施し、多数の艦艇による作戦行動と合わせて、「台湾独立」や外部勢力の介入に対する警告として中国側が明確に位置付けているという。
過去1年間には、中国の空母戦力による遠方への戦力投射能力も大幅に向上した。
報告書は、「中国海軍航空戦力の活動範囲を第1列島線の外側へ拡大し、米空母打撃群との質的格差を縮小している」と分析した。
空母運用によって西太平洋やインド洋への戦力投射能力は強化されており、「持続的な外洋作戦を支援できる、より有能な艦載航空戦力の配備が目前に迫っていることを示している」という。
PLAのミサイル戦力も大きく前進した。あらゆる射程と種類の大量のミサイルが配備されており、米軍および同盟国の基地、港湾、海軍戦力に脅威を与えている。
報告書は、これらのミサイルが航空戦力や海軍航空戦力を補完し、「地域内の目標に対する迅速かつ長距離の精密攻撃手段を提供し、有事の米国および同盟国の作戦計画を複雑化させている」と指摘した。
ロケット軍や防衛産業内部で粛清が行われたにもかかわらず、ミサイル戦力は増強された。粛清は一部の先進ミサイルや宇宙兵器の調達・開発日程に影響を与えた可能性がある。
それでも報告書は、「短期的な混乱はあったとしても、中国の国防予算の持続的増加と近代化への政治的コミットメントを考えれば、ロケット軍の長期的発展は引き続き上向きであり、一部の高度システムで遅延が生じる可能性はあるものの、中央統制はさらに強化される」と結論付けた。
宇宙戦能力も過去1年間で向上したという。
また、中国はロシア、イラン、パキスタン、エジプト、サウジアラビア、さらに一部の欧州・中南米諸国との合同軍事演習や武器輸出も拡大した。
報告書は、「過去1年間のPLAの発展は、中国が複数の領域で戦力投射能力を着実に高め、敵対勢力に代償を強いる能力を向上させていることを示している」と結論付けた。
その一方で、「防衛部門における腐敗撲滅運動、先進的な艦載航空戦力や宇宙システムの技術的複雑さ、さらに頻繁に行われる合同演習や海空での接近遭遇に伴う誤算の可能性は、中国の航空・宇宙大国化が決して一直線ではなく、リスクを伴うことも示している」と指摘した。
■宇宙軍の月面配備を提言
米宇宙軍は、中国が新たな宇宙競争に勝利して宇宙空間を支配するのを防ぐため、軌道上の宇宙ステーションや月面基地への部隊配備計画を策定すべきだ――。航空宇宙系シンクタンクの報告書がこう提言している。
ミッチェル航空宇宙研究所の報告書は5月22日に公表され、中国が2030年までの月面基地建設を計画していることを踏まえ、中国の宇宙開発に対抗するためには持続的な軍事的人員の宇宙配備が必要だと警告した。
「中国は月面居住や月を拠点とする経済活動に関する規範、基準、法的枠組みの策定において主導権を握ろうとしている。この状況は米国の国家安全保障上、容認できない」
報告書は、低軌道から月に至る領域で中国による支配を防ぎ、長期的な米国の利益を守るために軍部隊の宇宙配備が必要だと主張している。
無人ドローンに依存した軍事作戦や、航空宇宙局(NASA)主導の民間人だけによる宇宙活動では、中国の宇宙戦略を前に国家安全保障が危険にさらされる可能性があると分析している。
月へのアクセスや資源支配を巡る熾烈な競争が生じる可能性が高まっているため、人間による軍事的宇宙プレゼンスが不可欠だという。
報告書は、「地球上でも宇宙空間でも攻撃的な姿勢を示してきた中国と、その有人宇宙飛行計画の軍事化を考えれば、宇宙軍の隊員(ガーディアンズ)は独自の有人宇宙飛行能力を理解し育成しなければならない」と訴えている。
さらに、「中国と月面で直接対立する可能性を念頭に、宇宙軍はNASAや民間宇宙企業と協力しながら、数十年規模の実践的取り組みを始めるべきだ」と主張した。
中国による月面基地計画は、月の領有権主張や軍事化を禁じた1967年の宇宙条約に違反する可能性があるという。
報告書は、米国は宇宙条約を維持すべきだとしながらも、現実的には月面軍事基地建設の準備が必要だと訴えた。
「中国は地上、海上、空中で武力による領域支配を追求してきた。そして宇宙でも同じことを行う能力を構築している」
中国指導部は宇宙戦力の将来的重要性を理解しており、その軍事力によって体制を支えてきた。
「人民解放軍によって構築・維持される中国版『宇宙シルクロード』が確立されれば、現在米国が享受している宇宙空間での影響力と相対的支配力は、世界の目には時代遅れのものとなるだろう」
報告書はこう警告している。
「米国は今すぐ、人間による宇宙飛行を中核に据えた宇宙戦力ビジョンを実現しなければならない。有人宇宙飛行の優位を確保できるのは宇宙軍だけである」
報告書は、宇宙軍退役大佐で現在はミッチェル研究所上級研究員のカイル・パムロイ氏が執筆した。