ペロシ下院議長、バイデン政権の超党派予算法案を通過、左派の反乱を鎮圧

(2022年3月11日)

2022年3月9日(水)、ワシントンのキャピトル・ヒルで行われた週間記者会見で話すカリフォルニア州のナンシー・ペロシ下院議長。(AP写真/Jacquelyn Martin)

By Haris Alic – The Washington Times – Wednesday, March 9, 2022

 下院民主党は9日、ナンシー・ペロシ下院議長が党内の急進左派からの土壇場の抵抗を抑え、ウクライナへの緊急援助と議員たちのお気に入りのプロジェクトへの数十億を含むバイデン大統領の1・5兆ドルの超党派予算案を可決した。

 通過を促すために、ペロシ氏は、議員が国防費とは別に法案内の国内支出条項に投票することを許可した。

 「この超党派の合意は、我々が国内外で直面する多くの主要な課題に対処するのに役立つだろう」とカリフォルニア州選出のペロシ氏は述べた。

 下院は260対171で、総額7300億ドルの国内支出条項を承認した。ほぼすべての民主党議員に加え、39人の共和党員が法案に賛成した。

 一方、7820億ドルの国防予算は、はるかに大きな支持を得て通過した。すべての民主党議員と155人の共和党議員が賛成票を投じた。ほとんどの議員は、その理由としてウクライナへの支援として約140億ドルが含まれていることを挙げた。

 国防予算案には賛成票を投じたが、国内支出条項には反対したワシントン州選出のキャシー・ロジャース下院議員(共和党)は「ウラジーミル・プーチンと罪のない人々の生命と生活を奪うその邪悪な攻撃に直面する中、われわれは自由と民主主義の共通の価値観を中心として団結し続けなければならない。自由が勝たなければならない」と述べ、「国防予算以外には、法外な額の支出が含まれている」と指摘した。

 議員たちはまた、11日以降も政府を機能させるためのつなぎ予算案を発声投票で可決した。来週初めまで続くつなぎ予算案は、上院が時間内により大きな規模の超党派予算を通過できないという不測の事態に備えるためのものだ。

 上院の多数派院内総務のチャールズ・シューマー氏は11日までに予算案を審議することを約束したが、手続き上の問題は残っている。

 ニューヨーク州選出の民主党議員であるシューマー氏は「この予算案は、非常に重要な時期に審議される」と述べ、「欧州での戦争は、議会のエネルギーを、何かを迅速に成し遂げることに向けるよう促してきた」と訴えた。

 下院民主党は、新型コロナウイルスのワクチンと検査所に対する150億ドルの援助を取り除くことに合意し、予算通過への道を開いた。この援助は、パンデミックのために既に州に割り当てられた未使用の予算を取り戻すことによって賄われることになっていたため、同党急進左派が異議を唱えていた。

 「新型コロナ関連の資金を省くのは断腸の思いであり、我々は緊急に必要な感染対策のために戦い続けなければならないが、残念ながらそれはこの法案には含まれないだろう」とペロシ氏は述べた。

 新型コロナ対策の資金調達をめぐる対立は、予算を取り巻くより広範な問題を象徴している。

 特に共和党議員らは、1・5兆ドル規模の法案の交渉方法のだけでなく、ペロシ氏が示した審議スケジュールも批判した。共和党党議員らは、ペロシ氏が投票が実施される当日の午前1時30分に法案を発表したと指摘した。

 「ペロシ氏の側近は、投票当日の深夜に総括的な支出法案を発表した」と、コロラド州選出のローレン・ボーバート上院議員(共和党)は述べた。

 2471ページにも上る法案には連邦政府のすべての部門と立法府についての資金調達規定が含まれている。その上、2413ページ以上の注記も添付されている。

 米シンクタンク、ヘリテージ財団の予算についての専門家たちは、「平均以上の大学生は1時間に約13ページの専門資料を読むことができる」と述べる。これを基準にすれば、議員が法案をすべて読んで理解するのに396時間以上かかると指摘している。

 ペロシ氏は投票前に議員が法案について精査するために24時間も与えなかった。

 オハイオ州選出のウォーレン・デイビッドソン下院議員(共和党)は「ペロシ議長は、法案の内容を知るために、法案を通過させることで知られている」と述べ、「この2741ページの支出法案は超党派の伝統となっている」と指摘した。

 1・5兆ドルの予算案は、それがどのように作成されたかに関わらず、連邦政府が現在、トランプ前政権時代の議会で承認された予算水準で運営されているという単純な理由で、バイデン氏と民主党にとって大きな政治的な勝利となる。

 これまでトランプ政権時代の予算水準に従ってきたことで、バイデン氏は連邦官僚機構を通じて政治目的を推進する取り組みが妨げられてきた。共和党と予算協定を結ぶことで、ホワイトハウスは規制や人事に留まらず、連邦官僚機構を動かす真の機会を得ることになる。

 予算は、手頃な価格の住宅を建設するため110億ドルを費やす。家庭内暴力を防ぐために民主党が長い間支持してきた措置である「女性に対する暴力法を再承認する、国内支出を6・7%増の7300億ドルに引き上げ、その多くは社会福祉プログラムに費やす。税徴収の執行を強化するために、内国歳入庁の予算を6億7千5百万ドル増やす。ウクライナとその近隣の北大西洋条約機構(NATO)同盟国に対して150億ドルの軍事・人道支援を提供する。

 この法案には、下院議員の事務所予算を21%増やし、支出を1億3400万ドル以上引き上げることも含まれている。この増加により、議員事務所の総資金は7億7千4百万ドルを超え、1996年以来の高水準となった。

 一方、上院は「給与と運営」に対して11億ドルの資金を受け取ることになる。その合計のうち、700万ドルはインターンの支払いのために当てられ、残りは個々の上院議員の事務所と委員会の予算を強化するために投じられる。

 バイデン氏の予算はまた、約10年ぶりに個々の議員の要請で法案に挿入された裁量的支出措置であるイヤマークに数十億ドルを含める。イヤマークは、共和党が下院を支配した後、2010年に禁止されていた。民主党が2018年に過半数を獲得した後も、共和党は禁止を維持した。

 昨年、民主党が上下院で僅差の多数派を握った後、この慣行を復活させた。バイデン氏の最初の予算では、民主党と共和党の両方が税金を地元に持ち込む手段として利用した。

 例えば、アラスカ州選出の共和党議員は、フェアバンクス市で放棄されたホテルを取り壊すために1000万ドルを割り当てる条項を法案に挿入した。一方、ロードアイランド州選出の民主党は、ロジャー・ウィリアムズ大学が同州で「貝養殖産業の公平な成長」を発展させるために160万ドルを確保した。

 リベラルな議員の幹部は、150億ドルの新型コロナ対策資金の提供をめぐって予算案の迅速な検討を阻止すると脅していた。具体的には、急進左派の民主党議員は、以前のパンデミック救済法案で既に州に割り当てられていた新型コロナ関連資金を取り戻すのは不公平だと述べた。

 「その資金の一部は新型コロナ対策の資金調達のために取り戻すことになるが、それはすでに州議会によって割り当てられており、未使用の資金とは異なる」と、98人の急進左派グループの議長を務めるワシントン州選出のプラミラ・ジャヤパル議員(民主党)は述べた。

 ペロシ氏は、最初の新型コロナ対策資金の一部は取り戻されることになるだろうが、州は「受け取ると予想していた連邦資金の少なくとも91%」を得るだろうと述べ、これらの懸念を和らげようとした。この発言は、予算案をめぐる共和党と交渉のやり方に反発する左派をなだめることはできなかった。

 ミネソタ州選出のアンジー・クレイグ下院議員(民主党)は「この規定は非公開の場で削除された」と述べた。そのうえで「今朝、議員たちは、これが全く受け入れられないものであることを知った」と説明した。

 議会が11日までに予算を可決しなければ政府を閉鎖しなければならない状況の中、ペロシ氏は、党内左派の抵抗により、下院民主党議員がペンシルベニア州のパーティーの初日に出席できなくなった後、譲歩した。

 ペロシ議長は「我々は、ウクライナのための緊急資金と米国の家族の必要を満たすために緊急資金を含む予算案を推進しなければならない」と述べた。

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