ウクライナ戦争への対応めぐり米共和党内で亀裂

(2023年5月29日)

2023年5月22日(月)、ウクライナ・ドネツク州バフムート付近の前線で、塹壕の中で物資を運ぶウクライナ兵。(APフォト/Libkos)

By Seth McLaughlin – The Washington Times – Monday, May 22, 2023

 ロシアとの冷戦に端を発する現代の保守運動は今、ユーラシアの巨人とその冷酷な指導者であるウラジミール・プーチン大統領への対応をめぐり深い亀裂が生じている。

 ドナルド・トランプ前米大統領をはじめとする多くの保守派は、ロシアの侵攻に抵抗するウクライナの支援で米国が役割を果たすことに疑問を呈している。ほとんどの国際公約に広く懐疑的な人や、バイデン大統領によるロシアへの対応に疑問を抱く人、プーチン氏を称賛する人までいる。

 ワシントンのシンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」のベンジャミン・フリードマン政策部長は、ロシアが右派自身とバイデン氏のイメージの中心になっていると指摘する。

 「トランプ政権の一つの大きな影響は、ロシア、ひいてはウクライナを非常に党派的な問題にし、共和党員の間でロシアに対してあらゆるシンパシーを生んだことだと思う。彼らはそれを保守派のアイデンティティーの一部と見なし、ロシアによりタカ派的なエリート層に反対する手段と捉えたからだ」。フリードマン氏はこう語った。

 トランプ氏が最近、米露問題に踏み込んだのは、CNNテレビが今月開いたタウンホール集会でのことだった。トランプ氏は、ウクライナとロシアの一方に肩入れすることを何度も拒んだ。

 トランプ氏はプーチン氏と何年もやりとりしており、幾つかの一対一の会談ではアドバイザーでさえも何が話されたのか把握していない。これは左派を激怒させ、ロシアがトランプ氏の弱みを握っているという荒唐無稽な臆測や、トランプ氏が2016年大統領選に勝つためにロシア政府と結託したという、今では信用に値しない主張をあおることになった。

 トランプ氏はプーチン氏を褒めるなど妙にこびる場面もあるが、同氏の支持者によると、戦争で一方に肩入れすることに消極的な背景には、もっと基本的な考え方があるという。

 「トランプ氏が最初に出馬した時、そのポピュリスト運動は三つのことを基本にしていた。関税を通じて米国に雇用を取り戻すこと、国境の閉鎖、そして戦争から手を引くことだ」。こう語るのは、16年にトランプ陣営のバージニア州共同議長を務めたラジオ司会者のジョン・フレデリクス氏だ。「これは選挙に勝つためではない。救われる命のためだ。これに関するトランプ氏の立場は決して揺らいでいない」

 フレデリクス氏によると、トランプ氏がウクライナ支援に消極的なことに驚く人々は、同氏の「米国を再び偉大にする(MAGA)」運動の原則を理解していないという。

 海外の問題に巻き込まれることへの懐疑論は、共和党内で根強い。

 最近のピュー・リサーチ・センターの調査では、米国が海外の問題に注意を払うよりも国内の問題に集中することを望む共和党有権者は71%に上り、そうでない人は29%だった。その差は19年の調査から17ポイントも広がっている。

 同センターの分析によると、「共和党と共和党寄りの無党派層は、外交問題に積極的に取り組むよりも、国内問題に注意を払いたいと考える人が多く、米国は自国の利益を追求すべきだと考える傾向が強い」という。

 また同センターは、共和党員は民主党員よりもわずかだがプーチン氏に好意的だとしている。

 「結束と米国の民主主義に関するバンダービルト・プロジェクト」が先月公表した世論調査では、MAGA共和党員の52%がプーチン氏をバイデン氏よりも良い大統領だと考えていることが分かった。

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