セクハラ疑惑のクオモNY知事が辞任
By Dave Boyer – The Washington Times – Tuesday, August 10, 2021
ニューヨーク州シラキュース-不祥事を起こしたとして非難されていたニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は10日に辞意を表明、弾劾裁判を回避するため最良の結果だと述べた。
クオモ氏は、11人の女性からセクハラ行為を受けたと告発されたが、依然として否定している。
民主党のクオモ氏は、弾劾がほぼ確実視され、現在も性的不祥事をめぐって刑事捜査を受けており、14日後にはキャシー・ホークル副知事に州の管理権を引き渡すと述べた。民主党のホークル氏は、ニューヨーク初の女性知事となる。
クオモ氏はテレビ演説で、「この状況下で、私ができる最善の方法は、身を引いて、政府の秩序を取り戻すことだ」と述べたが、その声は感情で上ずっていた。
クオモ氏は現在、知事3期目、昨年、新型コロナウイルスの大流行の際に、毎日テレビで説明会を行い、「世界中の人々を落ち着かせた」ことが評価され、11月にエミー賞を受賞したことを考えれば、その急激な凋落ぶりは息をのむほどだ。
民主党は当時、トランプ大統領に代わる、冷静な判断力を持つ人物としてクオモ氏を支持していた。オバマ元大統領の顧問を務めたバレリー・ジャレット氏は昨年、クオモ氏は「大統領よりもずっと大統領らしい振る舞いをしている」と述べていた。
クオモ氏は、民主党のレティシア・ジェームズ検事総長が先週発表した報告書で、膨大な証拠が挙げられたにもかかわらず、ハラスメントの告発を強く否定した。クオモ氏は、州の政治環境が「あまりにも激しく、あまりにも反動的」で、これ以上続けることはできないと述べた。
クオモ氏は、「私はファイターであり、本能的にこの論争を戦い抜こうと思っている。なぜなら、この論争は政治的に動機づけられたものだと心から信じているからだ。もし、この騒動の中で真実を伝えることができれば、ニューヨーカーなら理解してくれるだろう。しかし…私が奉仕しなければならないのは、州民の最善の利益だ」と述べた。
62歳のホークル氏は、知事の辞任を「正しいことであり、ニューヨーカーのためにもなる」と述べた。
「あらゆるレベルの政府に仕えてきた者として、また継承者として、私はニューヨーク州の第57代知事として指導する準備ができている」とホークル氏は声明で述べた。
民主党員や共和党員は、クオモ氏の決断に安堵の表情を浮かべたが、一部の人々は、老人ホームでの新型コロナによる死亡事故の隠蔽、ハラスメントなどの行為について、依然として責任を負う必要があると述べた。
クイーンズのロン・キム下院議員(民主)は、「辞任で説明責任を果たしたことにはならない。アンドリュー・クオモ氏とその仲間たちが作り上げたサーカスに、もう足を引っ張られることはない。私たちは、この政権の失敗に苦しんでいる1万6000人の老人ホームの家族のために、正義を追求し続ける」と述べた。
ニューヨーク州選出のエリス・ステファニク下院議員は、クオモ氏の辞任を「遅きに失した」と述べた。彼女は、クオモ氏は性的暴行の罪で逮捕・起訴されるべきだと訴え、ホークル氏に、クオモ氏が任命した政権を「一掃」するよう求めた。
ステファニク氏は、「アンドリュー・クオモ氏の犯罪的汚職、政治的復讐、違法な報復という組織的文化は、民主党、メディア、州政府の掃き溜めによって何年にもわたって隠蔽されてきた。これは、ニューヨークの歴史の中で不名誉な出来事だ」と述べた。
バイデン大統領は、クオモ氏に辞任を求めた多くの民主党員の一人。バイデン氏は10日、女性問題とクオモ氏の知事としての職務を切り離そうとした。
バイデン氏はホワイトハウスで「知事の決断を尊重する。彼は非常にいい仕事をした。だからこそ、とても悲しいことだ」と述べた。
クオモ氏が辞任したのは、ジェームズ氏が報告書を発表し、クオモ氏が州法と連邦法に違反して11人の女性にセクハラ行為を行ったと結論づけた1週間後のことで、そのうちの数人はクオモ氏の部下であり、1人はクオモ氏の警護にあたっていた州警察官だった。
州議会の民主党リーダーは9日、弾劾調査のペースを上げ、来月の投票を目指すと述べていた。下院議員のかなりの数が、弾劾に投票すると答えていた。
クオモ氏の側近と政治体制はすでに崩壊していた。側近のメリッサ・デローザ氏は8日に辞め、労働組合は、クオモ氏の来年の再選への支持を取り下げた。
クオモ氏は、罪を犯したからではなく、弾劾裁判が「何カ月にもわたる政治的・法的論争を引き起こす」から辞めるのだと述べた。
「それは政府を消耗させる。それは人々にとってよくないことだ。何百万㌦もの税金を無駄にすることになる。混乱にエネルギーを浪費することは、州政府がすべきことではない。その原因にはなりたくない。ニューヨークを愛し、あなた方を愛している」と述べた。
カール・ヘイスティ州下院議長は、州の調査にすでに数百万㌦の税金が投入されたと述べた。
63歳のクオモ氏は、辞職する一方で、誰に対してもセクハラや暴行をしていないと主張している。
「報告書には、私が11人の女性にセクハラをしたと書かれている。それに対し強い反発があった。当然だ。しかし、それは誤りでもある。私への最も深刻な疑惑について、報告書では信頼できる根拠が示されていない。私が11人の女性に不快な思いをさせていないというつもりはない。そのことを、深く、深くお詫びしたい」。
クオモ氏は、「世代や文化の変化」のせいで、女性らが彼の態度を間違って受け止めたと主張した。
「私は自分の行動に全責任を負う。人に対してなれなれしすぎた。女性でも男性でも、気軽にハグやキスをしている。これまでの人生でずっとそうしてきた。私の中では、誰に対しても一線を越えたことはない。しかし、その線がどの程度引き直されているのか、私は気付かなかった」
特に、不適切な方法で体を触られたり、はっきりとした発言をされたりしたという女性の州警察官に謝罪した。
クオモ氏は、「彼女が私がやったと言ったのなら、私は彼女を信じる。ただ、私は何かを思ってそうしたわけではなかった。ただ、無神経でもあった。彼女に失礼なことをしてしまった。彼女とその家族に個人的に謝罪したい。私は彼女に最大の敬意を払っている」と述べている。
キニピアック大学の世論調査で先週、ニューヨーク州の有権者の70%(共和党88%、民主党57%)がクオモ氏は辞任すべきだと考えていることが分かった。また、クオモ氏の支持率は28%で、2011年に3期目の知事に就任して以来、最も低い数値となっている。
ニューヨーク州民の中には、安堵と悲しみが入り混じった反応を示す人もいる。
シラキュースの民主党員、ルイーズ・マグナレリさんは、「弾劾プロセスをへる代わりに辞任を選択したことに安堵した。彼が非難されていることに非常に失望している。昨年の新型コロナへの対応を受けて彼を高く評価していた。一般市民に情報を提供し、大流行を乗り切るために非常にいい仕事をしたと思っていた。そして今、このようなかたちで去ることになり、本当に不安だ。このような形で去ってしまうのは悲しいことだ」
ヘンダーソンに住む退職者のドナ・ペイジさんは、ハラスメントの告発を受けてクオモ氏が辞任したことはいいことだとしながらも、その反応は「複雑」だと語った。
「辞任は、実はちょっと残念。彼は新型コロナのために多くのことをしてくれた。彼のおかげで私たちは乗り越えられたと思っている。毎日のように彼の話を聞いていた。もっと上手にできたのではないかと思う。他の人たちと同じようにね」
クオモ氏が権力にしがみついているのは、1994年に4期目の出馬で共和党のジョージ・パタキ氏に逆転負けした亡き父、マリオ・クオモ知事の記憶のせいではないかと、ニューヨークの政治通らは言っている。アンドリュー・クオモ氏は、2022年の4期目の当選を目指していた。
シラキュース大学のキャンベル・パブリック・アフェアーズ研究所のディレクター、グラント・リーハー氏は、「父と息子の関係は非常に強力だ。父親は4期目を得ることができず、それがアンドリュー・クオモの『やるべきこと』リストの一つだった」と述べた。