中国機多数が台湾識別圏に侵入
By David R. Sands – The Washington Times – Sunday, October 3, 2021
中国軍は週末、台湾海峡上で大規模な威嚇行動を取り、1日と2日、爆撃機、戦闘機などの航空機を台湾の防空識別圏に侵入させた。侵入した航空機の数は過去最多。
バイデン政権は、識別圏侵入を台湾への「抑圧」と非難し、警告を発したが、中国の国営新聞「環球時報」は、「国慶節の軍事パレード」と同じだと称賛した。中国共産党の指導者らは、大陸から100マイル(160㌔)隔てた台湾を国の重要な一部と考え、いつか取り戻すと主張している。
環球時報は3日の社説で、今年は中華人民共和国建国72周年に当たり、今回の活動は、「中国の台湾に対する主権を明確に宣言したものだ」と主張。この示威行動を、北京の天安門広場で行われる新兵器や軍用機を披露する伝統的な軍事パレードになぞらえた。
台湾政府の発表によると、1日には38機、翌日には39機の飛行機が飛来した。これまでの1日の最多記録は、6月15日の28機だった。
台湾政府の発表によると、今回の侵入に参加した航空機のほとんどは殲16とスホイ30戦闘機であり、少なくとも2機の運8対潜哨戒機、複数のH6爆撃機、空警500早期警戒管制機1機が含まれているという。
台湾の蘇貞昌行政院長(首相)は2日の最初の飛来後、記者団に「中国は常に地域の平和を危うくするような残忍で野蛮な行為を行ってきた」と語った。
米国務省は、中国が緊張状態にある南シナ海を危険にさらし、軍事化された海域での誤算や予期せぬ事故のリスクを高めていると警告した。
米国務省のネッド・プライス報道官は声明で、「(中国が)台湾付近で挑発的な軍事活動を行っていることを非常に懸念している。不安定化を招き、誤算のリスクを高め、地域の平和と安定を損ねている。北京に対し、台湾に対する軍事的、外交的、経済的な圧力と威圧をやめるよう求める」と述べた。
その上で米国は「台湾が十分な自衛能力を維持することを引き続き支援する」としている。
軍事アナリストによると、飛来機数は増えているが、これまでのところ台湾の主権の及ぶ沿岸12マイル内への侵入は避けており、中国にとっては、台湾への主権を主張し、実際に侵略した場合の台湾の対応と能力を試し、警戒を続けさせることによる防衛力の消耗など、複数の目的があるという。
中国が航空作戦や台湾に対する好戦的な言動を強める中、米国とその同盟国は北京に対抗するための軍事力強化を進めている。
数週間前には、バイデン政権が英国、オーストラリアとの新たな防衛協力関係を発表した。これにより、最終的に米英はオーストリアに原子力潜水艦を供給することになっている。
また、英国は週の初めに10年以上ぶりに軍艦を台湾海峡に派遣した。
台湾の呉釗燮外交部長(外相)は3日、国務省の強力な支援メッセージに感謝の意を示すとともに、中国はもはや敵対的な意図を隠そうともしていないと非難するツイートを行った。
呉氏は中国機の侵入についてツイッターで「脅威かといえば、もちろん脅威だ。奇妙なことに、(中国は)わざわざ言い訳をしなくなった」と述べた。