バイデン政権の大企業への国際課税、米国の中小企業に打撃を与える見通し
By Jeff Mordock – The Washington Times – Sunday, October 31, 2021
バイデン大統領は週末をローマで過ごし、世界の指導者たちと会談し、法人税の課税逃れを塞ぐためだとして、国際的な税制の画期的な見直しを進めた。
しかし、新たな15%の最低法人税は、米国の中小企業と消費者にコストを課すとして厳しく非難された。
一部のエコノミストは、新たな税制は、大企業が法人税の支払いを回避することを困難にするだけでなく、多国籍企業を支える米国の中小企業が国際市場に参入することを困難にすると指摘する。
ロンドンに本社を置く国際会計事務所アーンスト・アンド・ヤングの8月の報告書によると、最低税率は50~100万人の雇用を犠牲にし、投資を200億㌦減らす可能性がある。
「これは大きな影響を与えるだろう」。下院歳入委員会の共和党トップであるテキサス州選出のケビン・ブレイディ議員はこう述べた上で、「結局のところ、外国の競争相手は、大きな額の米国の税金を求めるだろう。これはどれも米国にとって経済的に意味がない。間違いなく、国内や世界中で競争して勝つ能力にとっては意味がない」とした。
ホワイトハウスの報道官は、国際的な税率の意図しない結果についての質問は財務省に尋ねるように言ったが、同省はコメントを控えた。
バイデン氏は、G20の工業・新興市場国の指導者とローマで30、31日に会った際、最優先事項である国際的な最低税率への最終的な賛同を得た。
今年のG20サミットのリーダーであるイタリアのドラギ首相は、この合意を多国間主義の勝利として歓迎した。
「われわれはより公正でより効果的な国際税制について歴史的な合意に達した」とドラギ氏は述べ、「これらの結果は、われわれが共に成し遂げられるものを強く思い起こさせるものだ」と訴えた。
ホワイトハウスの高官は、今回の合意は税制に止まらず、「世界経済ルールを再構築」するものだと呼んだ。
当局者によると、バイデン氏はG20サミット中の発言で課税協定の重要性を強調した。
「この合意は、米国の仕事の海外移転に対するインセンティブを取り除くために機能する。それは中小企業が平等な条件下で競争するのを助け、国内にいる人々に投資するためのより多くの資源を与えるだろう」と当局者は述べ、「これは、米国の労働者、納税者、企業にとって画期的な出来事だ」とした。
10月に世界経済の約90%を占める136か国が計画の概要に合意した。詳細については今後の協議で合意し、米議会や他国の立法府が、それを批准する必要がある。
この計画により、世界最大で最も収益性の高い企業に15%の法人税率を課すことになる。
バイデン氏と他国の指導者たちは、この合意を政府が大企業からより多くの税金を徴収する手段と見なしている。
同氏らは企業の投資や企業への低い課税で投資や雇用を引き付けるタックスヘイブンを排除することによって、競争の場を公平にすることを望んでいる。国際通貨基金(IMF)によると、各国政府はタックスヘイブンにより年間6千億㌦近くの収入を失っている。財務省によると、米国の年間1千億㌦以上を失っている。
経済協力開発機構(OECD)によると、最低税率が批准されれば世界全体で1千5百億㌦の税金の急落を引き起こす。
世界の最低税率は、年間売上高が約8億7千万㌦を超える企業に適用される。ある企業が本社を置いている国は、その企業が他国に15%未満しか支払っていない場合、課税することがでる。たとえば、米企業が事業を展開する他国で年間収益の12%を支払う場合、米国は3%の差額を徴収できる。
バイデン氏は、3年連続で10億㌦以上の収益を申告している米企業に対して15%の最低税率を別途提案した。バイデン氏による縮小された社会保障と気候変動対策法案の中で発表されたその規定は、約200社に適用される。
この二重苦は、米国の大企業にとって、30%以上の増税を意味する可能性がある。
米国最大の企業のいくつかを代表するビジネス円卓会議は、2つの税制案は企業に数十億㌦の負担を強いると述べた。
ロビー活動グループの同会議は声明で「これらの提案を合わせると、企業に8千億㌦の増税が課せらる。これは、歴史上最大の増税の1つだ」と述べた。
多国籍企業に依存している中小企業は、税負担が転嫁される可能性が高くなることが懸念される。多国籍企業にサービスを提供する中小企業は、契約を終了、削減される可能性があり、製品の販売先を多国籍企業にている企業は、コスト増に見舞われる可能性がある。
専門家によると、世界の最低税率は中小企業に特に大きな打撃を与える可能性がある。
国際的な税務政策を監視する保守系シンクタンク、ザ・タックスファウンデーションのであるダニエル・バン副会長(グローバルプロジェクト担当)は「米国に本社を置く大企業の場合、恐らくすべてを自社で賄うわけではない」と述べている。
「全体的な事業をサポートするための部品の供給は、中小企業に依存している。規模の大きい多国籍企業が大幅な増税に直面した時、最も脆弱な立場に置かれるのは、これらの中小企業だ」とバン氏は述べた。
しかし、バージニア大学ロースクールのルース・メイソン教授(法学・税務)は、企業が供給業者や消費者に増税分を転嫁することを示す決定的なデータはないと述べた。
「これは、費用が株主、顧客、労働者によって負担されるかどうかについての経験的な質問だ」とメイソン氏は述べ、「誰が法人税を負担するかについてエコノミストの間で多くの議論があるが、中間的な立場はそれが主に株主である資本の所有者によって負担されるということだ」とした。
アーンスト・アンド・ヤングとテキサスビジネス協会による9月の調査は、最低税率が課せられた場合、テキサス州は10万7千人近くの雇用を失う可能性があると結論付けた。
調査によると、最低税率は小規模な供給業者への多国籍企業の支払いを減らし、雇用を減らす。また多国籍企業の従業員の賃金と給与が下がり、レストラン、食料品店、その他の企業での雇用が減る。
保守系団体である全米税制改革協議会の税務政策担当責任者、アレクサンダー・ヘンドリー氏は「大企業には最高の弁護士と会計士がいる」と述べ、「消費者であろうと中小企業であろうと、大企業はそれを転嫁する方法を見つけるだろう。彼らはこれを自ら負担するつもりはない」と指摘した。
この法案のもう1つの潜在的な意図しない結果は、海外で事業を行うための費用が高くなり、米企業の海外市場への参入を妨げることだ。
バン氏は、米国の中小企業はコストを負担するための資源がないため、競争力が低下すると述べた。
同氏は「成功した多国籍企業であれば、これらのルールを乗り越えるための資源があるが、それは中小企業を廃業させるための新たな規制となる」と述べ、「それは、中小企業を真の競争相手ではなく買収目標に変えるだろう」とした。
バイデン氏はワシントンに戻り、この最低税率を売り込むだろう。一部の国際租税条約の変更案は、上院で承認される必要がある。
世界最低税を支持するジャネット・イエレン財務長官は、議会を迂回する方法を探すかもしれないとほのめかした。それでも、財務省の政策転換は共和党大統領が誕生した際、初日に取り消される可能性がある。
ブレイディ氏は、民主党を含む議員がこの国際的な最低税率を拒否すると予測している。「他の国々が合意の一部を実現するという保証はない」と同氏は述べた。