米国防総省の「対中アプリ」は融和政策の表れ
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, December 21, 2021
米国防総省のインド太平洋軍司令部が最近、同地域での米国の活動に対する中国軍の怒りを監視し、緊張を緩和することを狙ったアプリケーションソフトを開発した。
専門家からは、このアプリは米国が対中融和政策に戻る表れだとの警告が出ている。中国共産党指導部は、米国の政策決定者たちを操るために、中国を怒らせることへの恐れを利用してきたからだ。
国防総省の当局者や報道官によると、このソフトウエアツールは、台湾への兵器売却や係争海域での海空軍演習、議員による訪問など、同地域での米国の行動に対する中国の軍事的反応を体系的に監視することが目的だという。先週、キャスリーン・ヒックス国防副長官と共に機中でロイター通信の取材に応じた国防当局者は、このソフトウエアは米中の「戦略的摩擦」を測定するものだと語った。
コンピューターを利用したこのソフトウエアは、2020年初頭以降の米中関係に緊張をもたらす可能性のある重要な活動に関する情報を分析。米軍幹部や国防総省の政策決定者たちは、これを用いて米国の行動に中国がどう反応するかを予測していく。このソフトウエアは、中国の攻撃的行動を抑制しつつ、世界の2大大国、2大経済国によるあからさまな対立を何としても防ごうとするバイデン米政権の政策の一環だ。
「紛争や課題の範囲がグレーゾーンへと広がる中、一連の広範な指標を監視し、それをまとめ上げ、さらに脅威の相互作用を理解することが求められている」。ヒックス氏は、ソフトウエアについてロイター通信にこう語った。
インド太平洋軍司令部の当局者は、このツールについて、中国との間で紛争が起きるのを注意深く回避するために用いられると語った。
中国の動向をウオッチしている米国の専門家からは、このソフトウエアによって米国が中国を怒らせたり、危機を誘発しないことに全力を挙げるようになれば、中国は米国の政策を操り、中国がもたらす脅威への米国の対応を弱めることが可能になってしまう、との懸念が上がっている。
この「融和アプリ」は中国指導部に政治戦の勝利をもたらすことになる。こう語るのは、情報分野で幅広い経験を持つ元海兵隊員・国防総省当局者のケリー・ガーシャネック氏だ。
「中国が進める政治戦の目的の一つは、ナイーブな相手を調教し、中国が実際に言わなくても自らの意思で中国共産党が望むことをさせることだ」とガーシャネック氏。「この『融和アプリ』によって、中国共産党は米国防総省幹部を調教することに巧みに成功したようだ」
このようなアプローチは、中国のさらなる攻撃的行動を誘発し、米兵の士気を低下させるだけだと、ガーシャネック氏は述べた。
米太平洋艦隊情報部長を務めたジム・ファネル元海軍大佐は、このソフトウエアツールは米軍司令官や外交官を指導することが目的であり、この地域の国益を守る米国の能力が組織的にむしばまれると指摘。これこそが中国の主要目標だという。
「直ちにこのツールを廃棄すべきだ。米国の司令官や外交官たちは、環境に従って行動することが認められるべきだ。中国が米国をインド太平洋から追い出すという戦略目標を追求する中、中国共産党の意思決定者たちをひるませる最大限の柔軟性と主張が認められるべきだ」と、ファネル氏は語った。