トランプ支持層、極左候補、新たな投票法規 問われるテキサス州の予備選挙

(2022年3月4日)

2021年12月3日(金)、テキサス州フォートワースでの選挙イベントで演説するテキサス民主党の州知事候補ベト・オルーク。オルーク氏は、2022年1月18日(火)、テキサス州知事選の選挙キャンペーンで、2022年に全米で最も高額なレースの1つとなる可能性がある最初の6週間で720万ドルを調達したと発表した。(AP写真/LM Otero、ファイル)

By Seth McLaughlin – The Washington Times – Sunday, February 27, 2022

 2022年の予備選シーズンが火曜日、まずテキサス州で始まる。同州の有権者は新しい投票法の具合を体験しながら、各政党に最新のシグナルを送ることになる。

 それらの結果は秋の総選挙のテキサス州知事選で、共和党のグレッグ・アボット知事と民主党のベト・オルーク氏が闘う舞台を設定する。さらに同州に新たに引かれた38選挙区での行方を左右し、下院の中間選挙を8か月後に控えた政治情勢を占うものになるだろう。

 ケン・パクストン司法長官は、自らの法廷闘争と私生活上のスキャンダルよりも、有権者にとって右派の堅固な政策追求と、ドナルド・トランプ前大統領を断固擁護していくことの方が大事だと示す機会になるかもしれない。

 一番注目されている議会選挙の一つは、下院民主党の保守筆頭ヘンリー・クエラー議員と、テキサス州南西部の極左候補ジェシカ・シスネロス女史との間で展開されている。火曜日の投票でどちらも過半数に達しなければ、決選投票が5月24日に実施される。

 複数の政治アナリストによれば、2020年の大統領選挙結果が盗まれた、とトランプ氏が主張してから、改めて設定された選挙地図と新しい投票法による混乱のため、投票率は従来よりも低くなろう。この新法規のおかげで、郵送された数千件の投票用紙と有権者登録書が却下され、有権者に返送されている。

知事選

 共和党予備選では右派から挑戦を受けているアボット氏が、候補者指名の段階では圧倒して、批判勢力を沈黙させる勢いだ。世論調査ではアボット氏が、一番近くを走る共和党のアレン・ウェスト元議員と、州議会のドン・ハフィンズ元議員に大差をつけている。

 退役陸軍中佐のウェスト氏は、テキサス州共和党の議長を務めたが辞任して選挙に参加した。コロナ大感染と国境警備に関するウェスト氏の対応が、ライバルたちに批判されたが、トランプ氏の推薦のおかげで守られている。民主党の知事指名が堅いオルーク氏との短期決戦になる見込みだ。

 オルーク氏は2018年の選挙戦で、テッド・クルーズ上院議員との間で、大方の予想を裏切る善戦をした。クルーズ議員はその選挙戦で大勝利をして、2020年大統領選挙に名乗りを上げようとしていたが、その目論見は立ち消えた。とは言え、今度の総選挙でもオルーク氏は、アボット氏の前の負け犬として出馬するわけだ。

 ライス大学の政治学教授マーク・P・ジョーンズ氏は次のように評した。共和党予備選でのアボット氏の勝利の確率は、会期中に同議員が採ったトランスジェンダーのアスリートへの対応や、中絶、銃対策に関する行動のおかげで、右派からの攻撃を免れさせ、選挙に勝利するばかりか、テキサス州の共和党で衆目一致のリーダーと見られるだろう。世論調査でのアボット氏は、仮想選挙戦でオルーク氏を2桁上回っている。

司法長官

 共和党のパクストン氏は、重罪の詐欺容疑や、婚外交渉についてのFBI捜査を有権者が大目に見てくれて、それより極右の戦士としてバイデン政権の目の上のたん瘤となり、トランプ氏には忠実な歩兵であることを評価し報いてくれるか否か、それを確認することになろう。

 同氏の対抗馬として、フロリダ州のジェブ・ブッシュ元知事の息子で、同州土地委員会のジョージ・P・ブッシュ氏がいる。共和党では他にルイー・ゴーマート議員と、同州最高裁判所のエヴァ・グズマン元判事が控えている。

 パクストン氏がトランプ氏の推薦を獲得できた背景には、ジョセフ・R・バイデン氏の大統領選挙勝利のカギとなったジョージア州、ミシガン州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州での2020年選挙結果に異議申し立て訴訟を起こしたことが大きい。

 一方、彼の挑戦者たちは、パクストン氏の私生活と法的問題で警鐘を鳴らし、パクストン氏のリードを崩そうとしている。このレースは、共和党でのトランプ氏の牙城に、ブッシュ家の政治的遺産を挙げて対抗する形になったため、殊更注目されている。世論調査ではパクストン氏とブッシュ氏の決選投票になる公算が高い。

 パクストン氏は自らの基盤固めのために、ゴーマート氏にも新たな攻撃を仕掛けた。「ゴーマート氏は右派の有権者を吸い上げられるので、パクストン氏には一番の要注意人物かもしれない」、テキサス大学オースチン校でテキサス政治プロジェクトのジョシュア・ブランク主任は指摘する。「本当の問題はパクストン氏が決選投票なしで逃げきれるか否かだ」「パクストン氏は共和党内の活動家を基盤にした非常に強いブランドイメージを持っている」(ブランク氏)。

 一方でブッシュ氏とグズマン女史は、移民問題と南部での国境計画でもつれている。これらの問題は議論が分かれ、世論調査でも共和党予備選の有権者が強い関心を持っていることが示されている。テキサス大学の最新調査では、共和党予備選に投票予定の登録有権者のうち、アボット氏が47%、続いてブッシュ氏が21%、グズマン女史が16%、ゴーマート氏が15%だ。同調査の誤差は5パーセントとなっている。

合衆国議会第11選挙区

 共和党支持者が強いこの選挙区では、ケビン・ブレイディ議員が議員引退を表明してから、ミッドランドとオデッサの西に広がるダラス・フォートワース大都市圏で多くの候補者がひしめいている。

 クリスチャン・コリンズ氏と、元海軍特殊部隊のモーガン・ルットレル氏がトップを走っている。コリンズ氏はテッド・クルーズ上院議員の推薦を受け、ルットレル氏はテキサス州リック・ペリー元知事とダン・パトリック副知事の推薦を得ている。

 ルットレル氏の弟マーカス氏は、ベストセラーの回想録「ローン・サバイバー」を書いた。これは2005年のアフガニスタンで、タリバンの過激派と衝突した後、ルットレル氏が特殊部隊第10チームの唯一の生き残りになった経緯を詳述したものだ。

合衆国議会第28選挙区

 テキサス州の38選挙区で展開している合衆国議会レースのうち、オースチンからメキシコ国境にいたるテキサス南西部の第28選挙区で、クエラー議員が10期目を目指しているものほど、全国メディアの注目を集めているものはない。この予備選は米国での極左の純度と、あまりイデオロギーにこだわらない現職議員の持久力とが測られようとしている。

 移民擁護派のシスネロス女史は、エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)、バーナード・サンダース上院議員(バーモント州)、アレクサンドリア・オカシオ・コルテス議員(ニューヨーク州)などの推薦を得たことで、民主党左派の人気者になった。

 「クエラー議員は珍しい類の民主党員だ」、前述のブランク氏は評する。「大概の場合の歴史から見て、選挙区では彼に有利に働いたはずだが、物事が分極化するにつれて、クエラー議員は民主党の典型ではないと指摘するシスネロス氏の立場が傷ついた。」

 シスネロス女史は、2018年にオカシオ・コルテス議員の登場を後押ししたリベラル「正義の民主党」の支援を受けている。同グループの活動家たちは、民主党をさらに左傾化しようと下院で勢力拡大に走っている。「これは議会で進歩的な声を挙げる機会だ」、ウォーレン議員は最近サンアントニオを訪問中に記者団に語っている。

 シスネロス女史と左派シンパは、クエラー議員の議席を過去2回狙ったが、クエラー議員は2020年にもシスネロス女史に4パーセントの差で勝っている。

 だが今年の選挙戦は若干様相が違う。2年前にクエラー議員を推薦したカリフォルニア州民主党の実力者・ナンシー・ペロシ下院議長が傍観を決め込んでいるからだ。

 それでもクエラー氏はまだ堅固な土俵に立っていた。FBIが1月、クエラー議員の自宅と選挙事務所を捜索する前には、再挑戦を試みるシスネロス女史より多額の資金を保持していたからだ。なおクエラー氏は不正行為を否定している。

 このFBI捜索は選挙戦を揺るがした。シスネロス女史側は、クエラー議員が選挙区にとって過度に保守的であるだけでなく、まったく腐敗していることを喧伝するチャンスとなった。

 しかしクエラー議員は先月、「ポリティコ」誌に語っている。「誰もそのことを私に指摘してこない。みんな私の経歴や業績を熟知している」、「有権者は選挙区の外から、投票の術を指示されたくないものだ」(クエラー議員)。

 シスネロス女史は最近の選挙演説で、クエラー議員はトランプ氏に70%の確率で同じ投票をしてきたが、それらの主旨は「中絶反対」と「労働組合反対」だ、と指摘した。

 ライス大学のジョーンズ氏は、共和党が11月にシスネロス女史と対戦できることを歓迎する、何故なら女史に勝つのは容易だからだ、と述べている。

 「もしクエラー議員が予備選で勝てば、FBI捜査から他に何かが出て来ない限り、共和党が首をすげかえることは不可能だろう」、ジョーンズ氏は語る。 「しかしシスネロス女史は第28選挙区で11月に投票する有権者の間では、客観的に見て極めて左翼に位置している。シスネロス女史が勝った場合に話は違う。」

第30選挙区

 合衆国議会に30年近く議員を務めて引退するエディー・バーニース・ジョンソン議員は、ジャスミン・クロケット州議会議員を彼女の後任になるよう推薦した。公民権弁護士のクロケット女史は、黒人が圧倒的に多いダラス地域で、人種平等と刑事司法改革を選挙運動の中核にしてきた。

 彼女は昨年、共和党が支持するテキサス州投票法の見直しに抗議して、数十人の民主党同志たちと一緒にワシントンに逃げたことで、一躍知名度を上げた。民主党は投票法修正によって、少数派の有権者が不当な影響を受けると主張していた。

 ダラスの様々な政治勢力は、予備選で別の候補者を推している。マーク・ヴィージー議員は、バイデン2020大統領選挙の際にテキサス州の選対責任者を務めたジェーン・ホープ・ハミルトン氏を支援している。

 「テキサス・トリビューン」紙は、ハミルトン女史がダラス郡政委員のジョン・ワイリー・プライス氏や、ダラス市のロン・カーク元市長、テキサス州議会の民主党の幹部クリスターナー議員からも推薦を受けていると報じた。

 選挙戦の候補者には他に、州議会のバーバラ・マロリー・キャラウェイ元議員、住民組織化のアーサー・ディクソン委員、ダラス市議会のボンシエル・ジョーンズ・ヒル元議員、シーダーヒル学校理事会のケイシャ・ランクフォード理事、退役海軍軍人ジェシカ・メイソン氏、元立法職員のアベル・ムルゲタ氏、元ダラス郡の警察本部長ロイ・ウィリアムズ・ジュニア氏などが挙がっている。この選挙は決選投票に進むと見られている。

第35選挙区

 複数の政治アナリストは、サンアントニオからオースチンに広がる第35選挙区での民主党予備選に注目している。オースチン市議会のリベラル議員であるグレゴリオ・カザール氏(32歳)は、州議会のエディ・ロドリゲス議員との競争の真っ最中だ。

 カザール氏はいくつかの極左グループ、例えば「正義の民主党員」、「働く家族の党」、「アメリカための民主主義」などから推薦を受け、さらにウォーレン議員、サンダース議員、オカシオ・コルテス議員からも推薦を獲得している。

第38選挙区

 トランプ氏はテキサス全域の各議会選挙にあたり、一連の推薦を表明した。その中にはヒューストンの最新の議会選挙区である第38区ふくまれているが、この選挙区は州議会議員たちがウェズリー・ハント氏を念頭にして作ったものだ。

 共和党は幹部クラスにもっと多様性を入れようとしていて、黒人のハント氏は正にぴったりなのだ。陸軍元大尉でイラク戦争に従軍したハント氏は、2020年に民主党のリッチー・フレッチャー議員を僅か4パーセントの差で破って名を馳せた。

 それ以降、ハント氏は共和党の全国レーダーから注目されている。同氏はカリフォルニア州の下院野党幹部ケビン・マッカーシー議員と、テキサス州のテッド・クルーズ上院議員から推薦を得ている。下院共和党の選対部門である全国共和党議会委員会は「ヤング・ガンズ・プログラム」の中で、ハント氏を紹介している。しかしハント氏には予備選での対抗馬が9人もおり、過半数を獲得して決選投票を回避する道のりは非常に困難になっている。

 マーク・ラムジー氏はハント氏の最大ライバルになるべく準備中だ。ラムジー氏は「テキサス保守の共和党員」、「テキサス保守レビュー」と「リンクレター」などからも注目に値する支持を獲得した。選挙戦は熾烈なものになるようだ。

トランプ次期大統領、就任初日に「女子スポーツから男を締め出す」

(2024年12月25日)

米新型砕氷船の建造計画に大幅な遅れ 北極圏で安全保障上のリスクに

(2024年12月20日)

性自認巡りハリス氏を批判 トランプ氏の勝因に-調査

(2024年12月03日)

トランスジェンダーの女性トイレ使用禁止 共和議員が決議案

(2024年11月20日)

トランプ新政権、2期目も「ハネムーン」なし

(2024年11月19日)

トランプ氏再登板は東南アジア各国に利益

(2024年11月15日)

トリプルレッド、第2次トランプ政権も政策目標達成に障害か

(2024年11月14日)

猫を飼う女性はハリス氏、犬派はトランプ氏-大統領選調査

(2024年11月12日)

トランプ陣営が次期政権の人選開始 国防長官候補にポンペオ氏の名も

(2024年11月09日)

トランプ氏の地滑り的勝利で政界激変

(2024年11月08日)
→その他のニュース