オルーク氏、対立候補の会見に乱入 注目求め政界で悪ふざけが増加

(2022年6月14日)

2022年5月25日(水)、テキサス州ユバルデで、テキサス州知事グレッグ・アボット氏が率いる記者会見に割り込んで追い出された後、報道陣に話す民主党知事候補ベト・オルーク氏。(AP Photo/Dario Lopez-Mills)

By Susan Ferrechio – The Washington Times – Thursday, June 2, 2022

 ベト・オルーク氏が、ユバルディの学校で起きた銃乱射事件に関するテキサス州知事グレッグ・アボット氏の記者会見への割り込みを計画し、ソーシャルメディア上で非難と賞賛を得て、数百万の聴衆を集めた。

 これはまさにオルーク氏が望んでいたことだ。

 49歳の民主党知事候補オルーク氏は、政治的戦略を基に、ツイッターやインスタグラムなどのソーシャルメディアで注目を集める活動をし、支持者を増やし、選挙資金を調達するのに役立つような動きをしている。

 テキサス州民主党の戦略家、マット・アングル氏は、ワシントン・タイムズ紙に次のように語った。「候補者らは、従来の選挙活動には縛られなくなってきている。そうせざるを得なくなっているからだ。今のメディアの取り上げ方ではすぐに忘れられてしまう。フィルターを通さずに有権者に直接メッセージを伝えるのは非常に難しい」

 民主党と共和党は、大手メディアの「フィルター」を飛び越え、独自のストーリーを作り出して、批判を招き、支持を獲得し、他の方法では得られないような多くの注目を集めている。

 オルーク氏のアボット氏の記者会見乱入は、すぐに広く知られることとなった。

 オルーク氏はアボット氏に「次の銃撃を止めるのは今だ。君は何もしていない」と言い放ち、警察によって排除された。

 政治的な演出だと言う人もいたが、オルーク氏の対決は、停滞していた選挙活動を勢いづかせ、共和党の知事を失脚させるかもしれない。世論調査では、オルーク氏は約7ポイント差でアボット氏を追う格好になっている。

 テキサス大学リオグランデバレー校の政治学部長、クライド・バロウ氏は、「明らかに、彼のやっていることはどれもうまくいっていなかった。だから、選挙戦を活性化するために、何か劇的なことをする必要があった。成功したかどうかを判断するのは時期尚早かもしれないが、多くの報道陣を集めたのは確かだ」と述べた。

 民主、共和両党の下院議員らは、注目を集め、多くの議員の間で目立つように奇抜な行動を取っている。

 極左的な政策を掲げ、ソーシャルメディアに多くの支持者を持つニューヨークの民主党下院議員、アレクサンドリア・オカシオコルテス氏は、ニューヨークで開催されたファッションの祭典2021年メットガラで、人目を引くような恰好で登場をした。彼女は、白いロングドレスをまとい、背中には血のように赤い文字で「金持ちに課税を」と刺繍されていた。

 オカシオコルテス女史(32)はインスタグラムに、「伝え方もメッセージの一部」と投稿した。

 批評家たちはこのドレスを嘲り、オカシオコルテス氏を偽善者呼ばわりした。また、彼女の人を振り向かせるような大胆さを称賛する人もいた。

 ヴォーグ誌の寄稿者サラ・スペリングス氏は、「彼女は、カーペットの上で、物議を醸す政治的発言をした唯一の人だ。言うまでもないが、ワシントンにはこのようなことをする人はほかにいない」と述べた。

 合理的であることよりも、とんでもないことをすることで知られる政治家は増え続けている。

 オカシオコルテス氏がドレスを披露した数週間後、コロラド州第3区選出の共和党の熱血下院議員ローレン・ボーバート氏は、リベラルな同僚を一喝した。

 彼女はフロリダ州のマール・ア・ラーゴでドナルド・トランプ前大統領の隣で、背中に「レッツ・ゴー・ブランドン」のメッセージが入った赤いドレスを着てポーズをとった。このフレーズは、「くたばれ、ジョー・バイデン」を言い換えた言葉で、バイデン大統領への軽蔑を象徴している。

 彼女がトランプ氏と一緒にいる画像は、すぐにソーシャルメディアで広く流布された。

 ボーバート夫人は、人目を引くようなことには慣れている。3月、彼女は下院での一般教書演説中にバイデン氏に向かって叫び、米国のアフガニスタン撤退を失敗させ、13人の軍人を死亡させたと非難した。

 バージニア大学の政治学教授ラリー・サバト氏は、「太古の昔から、政治家は自分の主張をするために小道具や演出を使ってきた。小道具や演出は、新聞での引用や演説よりも多くの注目を集め、人々の記憶に長く残る傾向がある」と述べている。

 ソーシャルメディアは悪ふざけを増幅させ、80代のナンシー・ペロシ下院議長でさえ、人目を引く方法を見いだした。

 ペロシ氏が下院の演壇でトランプ氏の後ろに立ちながら、2020年の一般教書演説のコピーを破る動画は、ソーシャルメディアで何千回も再生された。それはリベラル派の支持基盤にとって人目を引く瞬間となり、トランプ大統領と対立する民主党を象徴するようになった。

 ペロシ夫人は自然発生的なものだったと言ったが、批判者たちは、彼女がスピーチのコピーに小さな破れを作って、この動きに備えていたと非難している。

 オルーク氏がアボット氏の記者会見に割り込んだのも、計画的なもののようだ。

 マスコミ関係者によると、会見前にオルーク氏のために席を用意していた人たちが、会見開始直前に、知事が話しているステージの近くの席に陣取ったという。

 オルーク氏がアボット氏を諭すように人差し指を振る映像は、ファンや評論家たちによってソーシャルメディアで何十万回も再生されている。

 オースティンを拠点とする共和党の戦略家、マット・マコウィアック氏は、「ソーシャルメディアを通じて発信される短い画像が増えることで、こうした瞬間がより共有しやすくなると同時に、問題もはらんでいる。この国がより偏った場所に移行しているのを見るにつけ、自分の世界観に合ったものを共有する人たちがいて、それが同じような考えを持つ人たちにあっという間に伝わり、それがどちらの側にも起こっている」と述べた。

 アングル氏は、ユバルディの小学校での銃乱射事件を受けて、アボット氏の記者会見に乱入したオルーク氏の動きを擁護した。

 オルーク氏はこれまで銃規制についての主張を変え、現在はユバルディの銃乱射事件で使われたライフルAR15を含む、ある種の半自動小銃の撤廃を支持している。

 批評家たちは、オルーク氏が、殺された子供たち、打ちひしがれた両親、悲嘆にくれる地域社会に焦点を当てたイベントで知事と対立することで、政治的利益を得ようとしていると述べた。アングル氏は、あの事件が、民主党が実施しようとしている銃規制策について、アボット氏を動かしたと述べた。

 「私はあれを演出とは思っていない。グレッグ・アボット氏がずっと避けてきたことに向き合わせるためにしたことだ」

 政治的な悪ふざけも裏目に出ることがある。

 共和党の新人、マディソン・コーソーン下院議員(ノースカロライナ州)は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を「チンピラ」と呼んで注目を浴びた。その後、議員らがドラッグを使った乱交パーティーに参加していると主張し、下院共和党会議の大半の支持を失った。また、無免許運転で捕まり、弾の入った拳銃を空港に持ち込んで2回も検挙された。

 このような悪ふざけが原因で、彼は議席を失うことになったようだ。コーソーン氏は5月17日の予備選挙で、共和党のチャック・エドワーズ上院議員に敗れた。

 マコウィアック氏は、「まじめで思慮深い人々は、良い仕事をし、有権者に奉仕し、国が直面する主要な問題に取り組もうとしている。しかし、彼らが注目されることはない。そのため、FOXやMSNBCに出演することもない。その答えはまだ出ていない。しかし、この流れが激化し、加速していることは間違いない。政治のツイッター化とでも呼ぶべきかもしれない」と述べた。

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