バイデン氏、選挙演説で「MAGA共和党」を激しく攻撃
By Jeff Mordock and Joseph Clark – The Washington Times – Thursday, September 1, 2022
バイデン大統領が、自分に投票しなかった人も含めて「すべての人のための大統領」になると約束してから約2年、彼は親トランプ前大統領の共和党員を民主主義への脅威と酷評し、民主党の秋の選挙戦シーズンをスタートさせた。
バイデン氏はフィラデルフィアで行われたプライムタイムのイベントで、深刻な面持ちで、来る中間選挙を「米国の魂」をめぐる永遠の戦いと位置付けた。一方、トランプ氏と「米国を再び偉大にする(MAGA)」運動の支持者を、この国の法の支配、国際的地位、市民権に対する脅威と位置付けた。
「今日、わが国で、正常なものとは思えないことが数多く起きている。ドナルド・トランプ氏とMAGA共和党は、私たちの共和国の根幹を脅かす過激主義を代表している」
バイデン氏は、共和党全体を標的としているわけではなく、狙いは共和党の主流派を「支配」し「威圧」してきたトランプ氏支持者だということを強調するのに大変な労力を割いた。
「MAGA勢力は、何としてもこの国を後戻りさせようとしている。選ぶ権利も、プライバシーも、避妊の権利も、愛する人と結婚する権利もない米国へ後戻りだ」
また、いわゆる「MAGA共和党」が自由で公正な選挙を認めず、気に入らない政策に対しては暴力を振るうと主張するとともに、「民意」を阻止するために働いていると非難。2020年の選挙結果を受け入れることを拒否するトランプ支持派を痛烈に批判し、彼らの信念のもとでは「民主主義は生き残れない」と述べた。
「MAGA共和党は選択をした。彼らは怒りを利用している。彼らは混沌を生きがいにしている。彼らは真実の光の中ではなく、うその影の中で生きている」
バイデン氏はこの演説で、2020年の選挙で7400万票を獲得したトランプ氏の支持者に対する攻撃を大きくエスカレートさせた。先週には別の演説で、トランプ氏支持者の政策を「半ファシズム」と非難し、FBIと司法省への批判を「気持ち悪い」と断じた。
これらの最近の発言は、民主党とバイデン氏を、権威主義で国を乗っ取ろうとする反民主主義的なMAGA勢力を阻む英雄として、描く戦略の一環だ。
バイデン氏は「私は、米国民の意思を、乱暴な陰謀論や根拠のない不正の主張によって覆させるつもりはない。私は、この国の選挙が、自分たちの負けを認めない人々によって盗まれるのを、黙って見ているわけにはいかない」と述べた。
バイデン氏は300人の招待客から拍手を受けたが、雄たけびを上げる男など、抗議する者もいた。バイデン氏は、彼らには「暴挙に出る権利がある」と言ったものの、予定にはない反撃に出た。
罵声を浴びせた人たちに対して「マナーをわきまえていれば、苦しむこともない」と言った。
共和党は、バイデン氏と民主党こそが分裂的なイデオロギーを推進しているとし、プロライフ(中絶反対派)妊娠センターへの放火などの攻撃やブレット・カバノー最高裁判事殺害計画など、左翼の暴力を無視していると訴えている。
共和党全国委員会(RNA)のロナ・マクダニエル委員長は、「ジョー・バイデン氏による多くの米国民へのがさつな非難の言葉が、妊娠センターや共和党の事務所への攻撃、最高裁判事への暗殺計画を煽った。彼の政策は、隣人同士を対立させ、富裕層に報酬を与え、労働者世帯を罰し、米国民の権利と自由を踏みにじってきた。バイデン氏は分裂最高責任者であり、これは民主党の現状を象徴している。分断、憎悪、国民の半分を占める人々への敵意だ」と述べた。
共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務(カリフォルニア州)は、民主党政権下での米国の自由について、悲観的な見方を示した。
「私たちは安全、繁栄、自由を失いつつある。世界はより危険で、より不安定で、より混沌としている。平和と安全は、敵意と侵略に取って代わられた。これがジョー・バイデン氏のしてきたことだ。これは民主党の支配の記録だ」
バイデン氏は、国を一つにするまとめ役になると訴えて選挙戦を展開したが、その厳しい発言によって、米国がさらに分裂していくのではないかという懸念が生じた。
今週発表されたユーガブアメリカの世論調査によると、国民の66%がバイデン政権発足後、国は分裂したと答え、63%が今後数年間で分裂は進み、62%が政治的暴力が悪化すると予測している。
この調査では、40%以上が今後10年以内に何らかの形で内戦が起きる可能性があると考えていることが分かった。
しかしバイデン氏は、国家の中核的な価値が攻撃されていると主張し、最高裁がロー対ウェイド裁判を覆したことで、人工妊娠中絶が連邦政府が保証する権利ではなくなったことも問題視している。
バイデン氏は、2020年の選挙でも、国家の魂を賭けた戦いとして同様の主張をしていた。
ホワイトハウスによると、バイデン氏は、2021年1月6日に連邦議会議事堂で起きた暴動を調査する下院委員会の調査結果への懸念もあり、数カ月前からこの問題に関する演説を考えていたという。
FBI捜査官が今月、トランプ氏の自宅を捜索したことを受けて、トランプ氏が再び日々のニュースに登場したことと、連邦捜査官や司法省職員に対する脅迫の増加が相まって、この種の選挙演説に最適なタイミングとなったと思われている。
ペンシルベニア州でのこの演説は、中間選挙まで10週間前というタイミングで行われた。ペンシルベニア州は重要な激戦州であり、バイデン氏は同州を今後1週間で3回訪問する予定だ。
しかし、この厳しい発言は、ヒラリー・クリントン氏が共和党員を「嘆かわしい」と呼んだ時のように、トランプ氏への熱烈な支持者らがバイデン氏からの非難を名誉なことととらえ、裏目に出る可能性があるという指摘もある。
大統領の発言に詳しいカンザス大学のロバート・ローランド教授は、この演説は「危険だ」と指摘。「バイデン氏がこれを成功させるには、戦いの相手は、ロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、ボブ・ドールといった共和党主流派ではないと言う必要がある。トランプ氏支持者を共和党の主流派と区別する必要がある」
テキサスA&M大学のコミュニケーション・ジャーナリズム学部のジェニファー・メル教授は、バイデン氏はトランプ氏支持者だけでなく、もっと大きな聴衆に向かって話していると語った。
「特に若者や女性の間で有権者登録が急増している。おそらくバイデン氏の演説は彼らに届き、11月に民主党に投票することで民主主義を守ることを目指すよう動機付けるだろう。それが狙いだと思っている」