NASA長官、中国の月開発警戒
By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, January 4, 2023
米航空宇宙局(NASA)のネルソン長官は、中国が月に宇宙飛行士を送ろうとしていることについて、月の領有を主張するようになる可能性があると警告した。
元宇宙飛行士でフロリダ州選出の元上院議員のネルソン氏は、「宇宙開発を競っていることは確かだ。中国が、科学調査の名目で月の土地を手に入れないよう注意すべきだ。『侵入するな。ここはわれわれの土地だ』と言いだすことは間違いない」と述べた。
専門家らによると、中国は、戦略的に重要な航路である南シナ海で広い範囲の領有を主張し、「九段線」と呼ばれる歴史的にはっきりしない境界線をもとに90%は中国領だと訴えている。
ネルソン氏は、「(月への中国の計画を)疑うなら、スプラトリー(南沙)諸島で中国がしたことを見ればいい」と述べた。
中国は、南沙諸島の約13平方キロを自国領と主張し、数年前から、一部の島に対空・対艦ミサイルを配備した。
中国国営メディアは、米紙ポリティコでのネルソン氏の主張に強く反発、中国は米国と宇宙で競うつもりはないと主張した。中国共産党系のチャイナ・デイリー紙は、ネルソン氏の発言を否定した上で、宇宙での中国の活動はすべて、社会・経済・技術的開発を目的としたものだと強調した。
宇宙産業アナリストで、中国の国際宇宙航行連盟(IAF)宇宙輸送委員会副会長の楊宇光氏は、「宇宙競争をしたいという人がいても、それは、その人のものであり、われわれは関与しない」と述べた。
しかし、宇宙に関する国家安全保障専門家は、中国が否定したことについて、「だまされてはいけない。…ここにも、『九段線』による領土奪取のような地政学的な一面がある」と指摘した。
NASAはアルテミス1で、月の周回軌道に無人宇宙戦オリオンを投入するミッションを完了したばかり。NASAは、月居住計画の一環として宇宙飛行士を月面に送り込むことを計画している。
それによって月を拠点に、さらに遠方の惑星を探査することが容易になる。
中国は、2020年代の終わりまで月に宇宙飛行士を送り込む予定で、その計画の一環として、すでにロボットを着陸させてサンプルを収集している。計画は人民解放軍(PLA)の管理下にあり、宇宙専門家らは、中国が月を利用して宇宙から人工衛星を攻撃する可能性があるとしている。
空軍研究所の最新報告によると、新設された国防総省の宇宙軍は、月とさらに遠方の領域での防衛に取り組む準備を進めている。宇宙軍は、地球の静止軌道の外側と月の間のシスルナー空間の防衛を研究している。
これは、宇宙軍とNASAが昨年、交わした覚書に記されている。この覚書は、2021年6月に公開された。中国とロシアが月面に合同で国際研究ステーションを建設する計画を発表した直後のことだ。