人工知能開発者と規制当局者の分かれ道

(2023年3月29日)

OpenAIのウェブサイトのChatGPTページのテキストが写っている(2023年2月2日、ニューヨークで)。チャットボット「ChatGPT」の運営会社は3月15日(水)、人工知能の最新モデル「GPT-4」をロールアウトし、世界が注目するこの技術の新たな前進を遂げた。(AP写真/Richard Drew、ファイル)

By Jake Morabito – – Thursday, March 23, 2023

 オピニオン:人口知能チャットボット「ChatGPT」の最新かつ広範なアップグレード版となった「GPT-4」について、人工知能分野の研究者や実務家は今月、それがオープンソースでなくなったことを発見し、不安に襲われている。この方針のおかげで、この分野の技術革新が窒息しかねないからだ。

 開発者のOpenAI社は設立趣旨に書きこみ、連携を確約していたはずなのに、同社の「ChatGPT」の秘密コードを隠した形なので、新しい「GPT-4」についての安全性、正確さや、最近ユーザーから提起されたバイアスへの懸念などに対処している、とのOpenAI側の主張を、第三者側が検証できなくしてしまった。

 今回の措置には、一連の機械学習データに関する要綱や、新「ChatGPT」を学習させるのに使用された手法へのアクセス制限が含まれる。これまで研究者および一般利用者は、これらを使用して、基礎となる人工知能モデルがどのように機能するかを検証・研究できたのだ。

 OpenAI社の最高科学担当者で共同設立者のイリヤ・スツケベル氏は、The Verge社のインタビューで、OpenAI社がこれまでオープンソース化していた重要情報へのアクセスを拒否するという決定をしたことを確認し、その理由として、人工知能チャットボットの”競争環境”が激化していること、仮に悪意を持つ者が「GPT-4」モデルを利用して害を及ぼすときの「安全性」が懸念されることを指摘した。

 多くの人は、こういった形で人工知能モデルが閉鎖されると、成長段階にある人工知能の長期的成長を妨げる可能性があると見ている。これは新製品を強めるためにChatGPTのようなオープンソースのツールに依存している多数の小規模で独立した開発者には特に当てはまる。

 数十年前、初期インターネットのパイオニアたちも同様の難問に直面し、オープンプロトコルや標準仕様、規制を軽めにするアプローチによってネットワーク構築を決めた。その結果、インターネットの計り知れない利点と機能が、基礎技術アーキテクチャへのアクセスを制限することなく、すべての人に広く利用可能になった。こうした決断のおかげで、不必要な政府介入を受けず、全ての州で強固な市場競争と広範な経済的繁栄を生み出したのだ。

 我々は目下、人工知能開発において同様の転換期にいる。OpenAI社をふくむこの分野の民間部門のリーダーが、オープンインターネットで確立され実証されたモデルを踏襲すれば、起業家たちが「ChatGPT」のようなツールを試したり、革新的な方法で「GPT-4」モデルを構築することができる。 

 さらに懸念されているのは、米国と欧州の議員たちからの脅威だ。彼らは機会さえあれば、人工知能、チャットボット、自律システム、アルゴリズムに対して、過度に制限的な規制を加え、自由市場に干渉しようとしている。

 バイデン大統領が最近、人工知能を対象にした大統領令を発出したのに加え、連邦議員の一団が、医療、住宅、教育など重要セクターでのバイアス申し立てに対抗するため、連邦取引委員会に自動化システムとそのアルゴリズムに関する新たな権限を与える法律を、先の議会で後押しした。海外では欧州の規制当局が、「ChatGPT」のような汎用の人工知能を網羅する人工知能法の幅広い提案を練り上げているところだ。

 これらの厳しい政策は、米国で開花しようとしている人工知能部門を抑圧し、まじめな事業者を罰したり、この革新的な新技術に消費者のアクセスを制限したりするに違いない。政府関係者はその轍を踏まず、自由市場を大切にし、業界最高レベルの技術革新プレーヤーたちをサポートして、最新の人工知能ツールを誰でも手ごろな価格でアクセスできるように、という使命を果たさせてあげるべきだ。

※筆者のジェイク・モラビト氏は、米国立法交流評議会(ALEC)の通信技術タスクフォースのディレクター

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