中国人AI科学者に助成金 米議会が調査
By Ryan Lovelace – The Washington Times – Monday, January 22, 2024
米国でトップクラスの中国人人工知能(AI)科学者が数千万ドルの連邦政府助成金を受け、その後中国に帰国して共産党政権のもとで研究を行っていることについて、議会からその経緯の解明を求める動きが出ている。
下院中国共産党特別委員会のマイク・ギャラガー委員長(共和)と下院エネルギー・商業委員会のキャシー・マクモリス・ロジャーズ委員長(共和)によると、朱松純氏(55)は2020年9月にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)から中国に戻る前に、米政府から約3000万ドルの助成金を受け取っていた。朱氏のウェブサイトによると、同氏は2020年以降、北京通用人工智能研究院(BIGAI)を指揮し、北京の二つの大学に付属するAI研究所を率いている。
両氏は、国防総省と全米科学財団(NSF)が朱氏について何を知っていたのか、受け取った公的資金で何をしたのかを解明したいと述べた。
両氏は、朱氏が海外で活躍する世界トップクラスの中国出身科学者を帰国させることを目的とした中国人材獲得計画に参加していたことについて警告が出されていたのかどうかの調査を主導している。今月初め、国防総省、NSF、UCLAに書簡を送り、資金提供ついての詳細な情報の提出を求めた。
「米政府機関は、朱氏に3000万ドルの助成金を与える一方で、いくつかの懸念すべき兆候を無視している。例えば2010年、朱氏は中国共産党が運営する人材獲得のための『千人計画』のメンバーに任命された」
朱氏が中国に帰国しても、米国からの助成金は終わらなかった。書簡によれば、海軍研究局(ONR)は、朱氏が去った翌年の2021年に、同氏がかつて率いていた計画に二つの助成金、120万ドルを供与した。
中国での朱氏のAI研究は非常に野心的だ。ジョージタウン大学安全保障・新興技術センターによると、BIGAIは、グーグルやオープンAIが構築したような大規模言語モデル(LLM)ではなく、教えられていないタスクを達成できる高度なAIシステムの開発に焦点を当てているという。
中国政府はAIを、21世紀の最新技術の一つと位置づけ、今後数十年でこの技術を支配することを目指している。朱氏は1996年にハーバード大学でコンピューター科学の博士号を取得する傍ら、AIの新しい分野の研究を行った。
BIGAIは総合的なAIの研究を行っており、人間のような推論能力を用いて、自ら学習するソフトウエアの作成を研究している。2023年5月のジョージタウン大学のリポートによると、朱氏は中国のAI研究・開発への取り組みを見直すことを望んでいるという。
リポートは「朱氏は、中国は『コート全体でバスケットボールを追いかける』のをやめるべきだと主張している。つまり、外国のやり方をまねるのはやめるべきだということだ。技術の手法は変化するため、外国のまねをしていては競争で負けると朱氏は考えている。つまり、中国は『“ビッグデータ、大規模な計算能力、大規模モデル”を特徴とする現在のAIのトレンドに盲目的に追従するのではなく』、むしろ『強い戦略的決意をもって、科学研究とイノベーションの独自の道を探求する新たな道を見いだすべきだ』ということだ」としている。
朱氏によれば、このような変化を起こし、AI競争に勝つことは非常に重要だという。ギャラガー、ロジャーズ両氏によれば、朱氏はこのような技術のAI競争に勝つことは、軍事で原爆開発競争に勝つことに匹敵するくらい重要なことと考えているという。
朱氏はBIGAIの人材を獲得するために、国外で訓練を受けた科学者を採用しようとしていた。2023年5月のジョージタウン大学の報告書によると、BIGAIには30人以上の科学者が採用され、その多くはUCLAの朱氏のチーム出身だという。
ジョージタウン大学によると、カリフォルニア大学の研究者らは、BIGAIの研究者と研究論文の共同作成を続けているという。BIGAIは22日、英語版ウェブサイトに25人の求人情報を掲載した。
UCLAは、朱氏に関する調査についてコメントを求めたが、返答はなかった。
NSFは取材に対し、議員からの書簡を受け取ったと答えた。NSFの研究セキュリティー戦略・政策担当チーフ、レベッカ・カイザー氏は、NSFは法律で義務付けられている通り、米国の敵対国による人材募集計画への対策の導入に取り組んでいると述べた。
「NSFの研究セキュリティー分析によって、公表されていない人材募集計画のメンバーを特定することができる。NSFは監察総監室と緊密に連携し、これらの公表されていない人材の情報に対処している」
国防総省は取材に応じず、議員に直接回答すると述べた。