トランプの受難とイエスの十字架
By Tim Constantine – Thursday, March 28, 2024
復活祭(イースター)の日曜日が近づくと、世界中の多くの人々がイエス・キリストの逮捕、死、復活を思い起こす。
イエスは地上での日々を善行に費やした。その努力は、集団であれ、個人であれ、さまざまな形で人々を助けた。イエスの考え方は周りの世界をより良い場所にしていった。
イエスは行く先々で群衆を集めた。一部の人々から祝福されたが、それは逆に他の人々に恐れを抱かせた。神殿の指導者らは、既存の規範から外れて活動するイエスを非難した。政治的、宗教的指導者らは、イエスの人気が自分たちの権力を脅かすのではないかと懸念した。
その恐れと永続的な権力への渇望から、イエスを排除しようとする者が現れた。彼らはイエスを逮捕させた。イエスを公然とあざけった。ピラト総督の前にイエスを連れていき、有罪とし、死刑とするよう求めた。
しかし、イエスの死を望む理由があまりに不明確であったため、ピラトは怒った群衆に何度もイエスを釈放すべきかどうか尋ねた。手に負えない群衆をなだめようと、ピラトは代わりにイエスをむち打とうとした。ひどく打たれたイエスを群衆の前に連れ戻し、群衆がその光景に気まずさを覚え、イエスの釈放を認めることを期待した。しかし、群衆はいっそう激しく「十字架につけろ!十字架につけろ!」と叫んだ。
ピラトは自らの権力の座が危なくなるのではないかと懸念し、この問題から手を洗い、イエスを十字架につけることを許可した。これらは、よく知られている話だ。
それから約2000年、人類の暗黒の本性はあまり進歩していないようだ。
ドナルド・トランプ氏は米大統領として4年間を過ごした。その間、堅調な経済を築き、南部国境の安全を確保し、3人の有能な判事を最高裁判事に指名した。中東ではアラブ人とユダヤ人を和解させた。
これらを善行と考える人は多いはずだ。
トランプ氏は行く先々で群衆を集めた。国民の一部から称賛されたし、今もそうだ。ところが、これは一部の人々に大きな恐怖を植え付けているようだ。米政界の指導者らは、トランプ氏がワシントンの政治エリートの既存の規範から外れて活動していることを絶えず非難してきた。民主党の指導者らは、トランプ氏の人気が自分たちの権力保持に脅威をもたらすことを懸念している。
恐れと永続的な権力への渇望から、トランプ氏を脅威から排除しようとする者もいる。まず、トランプ氏がロシアとつながっていると主張したが、うそだった。2年に及ぶ、3000万ドルをかけた調査で、そのようなつながりがないことが証明され、これらすべての主張はヒラリー・クリントン氏と民主党が提起したものであったことが明らかになった。
ロシア疑惑に失敗すると、民主党はすぐに弾劾審理の準備に取り掛かった。根拠は、トランプ氏がウクライナ大統領を脅して同国に政治的に介入しようとしたというものだった。この情報は、元米情報機関の工作員からのものだ。この人物は、かつてホワイトハウスで働き、トランプ氏のウクライナ大統領への電話のその場にはいなかった。ウクライナ大統領は電話会談に問題があったとは思っていなかったが、民主党主導の下院はその場にいなかった第三者の話をもとに、トランプ氏の弾劾を決議した。
このような愚かな事態すべてを、トランプ氏は乗り越えた。狂気の沙汰が本当に始まったのは、トランプ氏が2020年の再選選挙で敗れ、2024年大統領選への出馬準備を始めてからだ。
連邦検察官がフロリダ州で、トランプ氏の自宅に機密情報があるとして刑事告発することを決めたのだ。ヒラリー・クリントン氏は機密情報を安全が確保されない状態で持っていたが、告発されなかった。ジョー・バイデン大統領は機密情報を持っていたが、告発されなかった。しかしトランプ氏に対しては、厳しく罰せよという。なぜだろうか。国家安全保障にとって危険だからだとされている。
ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官は、トランプ氏とその息子たち、そして彼の会社を、不動産の開発や改良のために融資を受ける際の共謀、保険金詐欺、事業記録改竄で起訴した。これらの融資は何年も前に行われたものであり、支払いが滞ったことは一度もなく、どの銀行からも苦情は出ず、誰かに損害を与えた証拠もないという事実を、検察官も裁判官もいっさい気にかけなかった。
トランプ氏の会社に融資を行った、世界に事業を展開する銀行の幹部は裁判で、借り手からの情報をチェックするなど、常に独自のガイドラインに従って審査していたと証言した。トランプ氏に融資する前にデューデリジェンスを行ったのだ。
しかし奇妙なことに、アーサー・エンゴロン判事は陪審員がいないまま、判決を下し、「貸し手が満足していたというだけでは、法令に違反していなかったことにはならない」と宣言した。
被害者が誰であるかを決めることは、法の基本原則だ。ニューヨークの裁判では、文字通り被害者はいないようだが、とにかく判事は有罪の裁定を下した。裁判官は4億5500万ドルという途方もない額の罰金を科した。トランプ氏は控訴の意思の有無にかかわらず、30日以内に4億6400万ドルを支払わなければならないと告げられた。もし支払いやその額を保証する保証金を確保できなければ、ニューヨークはトランプ氏所有の不動産を差し押さえることになる。
ピラトがイエスを打つことで暴徒をなだめようとしたように、判事は必要な保証金をわずか1億7500万ドルに引き下げることで「譲歩」し、それを確保するためにさらに10日間をトランプ氏に与えた。
まったく馬鹿げている。銀行からの苦情はない。未払いもない。被害者もいない。何年も何年も起訴も検討すらされなかったが、民主党を政権から追い落とすかもしれない脅威と認識されると、司法長官、判事、民主党陣営のために活動する連邦検察官は、失礼ながらでっち上げの罪状でトランプ氏を追及することが、権力を維持するための最善の策だと判断した。
念のため、最高裁が介入してそのような狂気に歯止めをかけるまで、いくつかの民主党が強い州はトランプ氏の出馬すら阻止しようとした。
これだけでは足りないかのように、ニューヨーク、ワシントン、アトランタでは、トランプ氏に対する告発が係争中である。すべて時間がかかる。
すべて金がかかる。すべてがトランプ氏の政治生命を終わらせる可能性を秘めている。
トランプ氏はイエスではない。これまでいくつも罪を犯した。生意気で無礼なこともある。しかし、これまでに起きたことは、権力を追い求める連中が、気に入らない人間を、どんな犠牲を払ってでも十字架につけようとしたことを明確に物語っている。
米国民は、トランプ氏を軽蔑する人々でさえ、法廷が政敵を罰するための政治的道具として使われることがないことを望むだろう。そう願いたい。
ピラトはよく知っていた。レティシア・ジェームズ、アーサー・エンゴロン両判事はよく知っている。ファニ・ウィリス検事はよく知っている。ジャック・スミス特別検察官もよく知っている。だが、ピラトと同様に、政治権力を維持したいという欲望の方が、法律に対する敬意よりも大きいのだ。
恐らく残る最大の課題は、法廷での十字架がどうなるかにかかわらず、トランプ氏が今年11月に政治的復活を遂げるかどうかだ。