トランプ前大統領、関税引き上げ主張 エコノミストは効果に否定的

(2024年8月27日)

2024年8月23日金曜日、ラスベガスのll Toro E La Capraで行われた選挙イベントで記者団と話す共和党大統領候補ドナルド・トランプ元大統領。(AP Photo/Julia Nikhinson)

By Seth McLaughlin – The Washington Times – Sunday, August 25, 2024

 トランプ大統領(当時)は2019年、国境を越えて押し寄せる大量の不法移民への報復として、メキシコ製品に壊滅的な関税を課すと脅した。

 メキシコ政府当局者はワシントンに駆けつけ、寛大な対応を求め、国境問題への対応を大幅に変更することと引き換えに、トランプ氏が関税の脅しを取り下げるという合意にこぎつけた。数カ月で国境問題はほぼ解決した。

 そして今、トランプ氏が再び戻ってきた。

 共和党の大統領候補トランプ氏は、米国の貿易相手国による不公正な慣行に対する報復として、最大20%の関税を検討していると述べた。

 トランプ氏は、ペンシルベニア州での選挙演説で最近、「米国は長い間、他国に利用されてきた。こちらは雇用と収入を失い、あちらはすべてを手に入れる。…そして、米企業を一掃する」と語った。

 「私は4年前にそれを止めた。すぐにまた止める。他の国が入ってきて、われわれの仕事を奪い、われわれの国を貧困に陥れるようなことはさせない」

 エコノミストは、輸入業者が増えたコスト分を転嫁し、国民の懐が痛むことになると主張する。

 リバタリアン系のシンクタンク、ケイトー研究所の貿易専門家、スコット・リンシコム氏は、ほとんどの研究から、トランプ氏が最初の任期中にさまざまな農産物、アルミニウム、鉄鋼、ソーラーパネルにかけた関税は、米国の消費者と企業のコストを増加させたことが分かっている。

 「要するに、米国民(輸入業者、卸売業者、小売業者、製造業者、消費者)が関税を支払ったということだ。外国人が支払ったという主張はばかげている」

 トランプ氏の副大統領候補J.D.バンス上院議員(オハイオ州)は、この主張を否定した。輸入品のコストが上がることで、生産者が関税を避けるために米国内で生産するようなインセンティブが働くと主張している貿易専門家もいるという。

 バンス氏は25日、NBCの「ミート・ザ・プレス」で、「事実を見れば、国内の雇用が増えるダイナミックな効果をもたらすという別の見方が正しいことが分かると思う。消費者の立場からすれば、関税によって失うものはすべて、賃金の上昇によって得られる。手取りが増え、仕事も増える」と述べた。

 関税は、中国のような貿易を悪用する国に対しては必要だと同氏は述べた。

 「中国や他の多くの国々が、米国の労働者の賃金を引き下げるために、事実上奴隷労働を利用していることは知っている。ドナルド・トランプはそれを止めなければならないと考えている」

 トランプ氏は大統領在職時に関税を多用した。メキシコ、カナダ、中国、欧州連合(EU)と戦った。

 アナリストらによれば、米国の一部の産業は恩恵を受けたという。トランプ氏の関税は米国の鉄鋼業界を強化したとみられている。

 だが、輸入鉄鋼を使用する製造業は苦境に立たされ、他の産業は貿易相手国からの報復関税に直面し、他の分野のコストが上昇した。

 リンシコム氏は「メーカーを助けるどころか、かなり足を引っ張った」と言う。

 米議会予算局(CBO)は新型コロナの大流行直前の2020年、トランプ氏の関税で平均的な世帯の負担は1277ドル増加することになると予測していた。

 一部は関税からの政府収入で相殺される。CBOによれば、関税によって政府の収入は年間100億ドル増えたという。

 トランプ氏の最新の計画は、米国の輸出品に関税をかけた国に相互関税をかけ、一般的にすべての商品に10%から20%の関税をかけるというもので、目には目をというアプローチを目指している。また、中国からの輸入品には60%という途方もない関税をかけることも打ち出している。

 貿易制限に傾倒することは、ワシントンで常に自由貿易を主張してきた共和党との大きな溝を意味する。民主党も貿易制限には概して懐疑的だ。

 しかし、共和党支持者の間では、トランプ氏のアプローチは好評だ。共和党支持の有権者は、トランプ氏の大統領在任中に自由貿易への警戒感を強めたが、民主党支持者は自由貿易への支持を強めた。

 アナリストらは、バイデン大統領が就任すれば関税の一部を撤廃するだろうと予測していたが、ほとんど撤廃しなかった。

 トランプ氏にとって関税は一つの手段だ。

 2019年、関税によって国境の状況は改善した。経済大国としての米国の立場を利用して、メキシコに要求を突きつけるチャンスだと考えたのだ。

 トランプ政権で国土安全保障副長官を務めたケン・クチネリ氏は、トランプ氏が選んだ標的は完璧だったと語った。

 カチネリ氏は電子メールで、「メキシコは、貿易で米国から国境を越えて入ってくるカネを必要としている。逆に米国はメキシコから入ってくるカネにそれほど依存していない。トランプ氏は、その非対称性を利用した最初で唯一の大統領だった」

 シンクタンク「タックス・ファウンデーション」の連邦税制センターのシニア・エコノミスト兼リサーチ・ディレクターであるエリカ・ヨーク氏は、中国から有利な貿易条件を勝ち取るために関税を使おうとしたトランプ氏の試みは実を結ばず、中国は反撃に出たと述べた。

 「まさに失敗のダブルパンチだ。トランプ大統領が関税について語った他の理由は、貿易不均衡の是正と製造業の復活だった。これらすべてで失敗した」

 カマラ・ハリス副大統領は、トランプ氏の関税計画は平均的な家庭のコストを4000ドル上昇させると述べた。

 ハリス氏はノースカロライナ州で最近行った遊説で、「日常生活で必要なあらゆるものが値上がりすることになる」と語った。

トランプ次期大統領、就任初日に「女子スポーツから男を締め出す」

(2024年12月25日)

米新型砕氷船の建造計画に大幅な遅れ 北極圏で安全保障上のリスクに

(2024年12月20日)

性自認巡りハリス氏を批判 トランプ氏の勝因に-調査

(2024年12月03日)

トランスジェンダーの女性トイレ使用禁止 共和議員が決議案

(2024年11月20日)

トランプ新政権、2期目も「ハネムーン」なし

(2024年11月19日)

トランプ氏再登板は東南アジア各国に利益

(2024年11月15日)

トリプルレッド、第2次トランプ政権も政策目標達成に障害か

(2024年11月14日)

猫を飼う女性はハリス氏、犬派はトランプ氏-大統領選調査

(2024年11月12日)

トランプ陣営が次期政権の人選開始 国防長官候補にポンペオ氏の名も

(2024年11月09日)

トランプ氏の地滑り的勝利で政界激変

(2024年11月08日)
→その他のニュース