気象を兵器化する中露、新たなハイブリッド戦争の手段に

(2025年12月9日)

2023年11月24日金曜日、ウクライナ・スミー州の前線付近で、農家がトラックに穀物を積み込む様子。(AP通信/ハンナ・アルヒロワ撮影)

By Joseph Hammond – Special to The Washington Times – Friday, November 28, 2025

 【ロンドン】ロシアの欧州に対するハイブリッド戦争(情報工作、破壊工作、重要施設へのドローン侵入など)が広範囲に及び、高度化する中、アナリストらは、ロシアが新たな武器として「気象」を敵対勢力への攻撃手段として開発中だと警告している。

 世界的に重要な穀物生産国であるウクライナは、たとえ現在の和平交渉で両国間の武力衝突が終結しても、ロシアが微妙な気象操作技術を用いてウクライナの重要な農業部門を攻撃する可能性があると懸念を表明している。

 「ウクライナ復興サミット」の主催者で農業ビジネス専門家のアンドリー・サバ氏は、「ロシアがハイブリッド戦争の手段として太陽地球工学を利用する可能性は、もはやSFではなく現実の脅威だ。あらゆる規範を無視し続けてきた政権が、気候技術を悪用して情勢を不安定化させようとすることはありうる。世界はこの脅威を認識し、こうした技術を使って新たな混乱が引き起こされるようになる前に監視メカニズムを確立すべきだ」と語った。

 声を上げているのはウクライナ人だけではない。

 高まる「気象戦争」の脅威の研究に取り組む英シンクタンク「王立防衛安全保障研究所(RUSI)」によれば、ロシアと中国は、地球工学分野の技術開発への投資で最前線に立っている。

 RUSIの報告によると、戦略的・軍事的目的で気象パターンを操作するために必要な技術やシステムの研究が近年、「気候研究」の名目で進められてきた。

 英国最古の防衛シンクタンクRUSIは今年、気象の兵器化に関して警鐘を鳴らした。「ロシアは敵対国に対し、太陽地球工学技術を生かして干ばつや洪水などの異常気象を誘発し、農業生産や重要インフラの機能を混乱させる可能性がある」

 ロシアは欧州全域でハイブリッド攻撃を積極的に仕掛け、急激に拡大させている。

 ポーランドのドナルド・トゥスク首相は11月17日、ウクライナへの物資供給に不可欠な鉄道線を破壊した爆破事件を非難。「前例のない破壊工作」と断じた。

 当局は後日、この事件で逮捕された2人がロシアのために働いていたと発表した。

 これは、約4年前のウクライナ侵攻以来、北大西洋条約機構(NATO)加盟国でのロシアの破壊工作としては最も重大な事例だ。ロシアは数カ月前から、複数のNATO加盟国にドローンを侵入させ、NATOの防空システムの反応を試してきた。

 また、欧州の選挙への干渉、インターネット上の偽情報による撹乱、大陸全域での情報活動の強化も非難されている。

 雲の核となる物質をまいて雨を降らせて洪水を引き起こしたり、大気・土壌汚染で作物ができなくしたりといった気象の兵器化は、ハイブリッド戦争の新たな手段となり得るとアナリストは指摘する。

 キーウのウクライナ外交官ルスラン・スピリン氏は「環境破壊は二次的な被害ではない。ハイブリッド戦争の新たな最前線であり、環境を守ることは文字通り生命そのものを守ることに他ならない」と述べた。

 人工降雨などの技術は1940年代に遡る。その手法は依然として不正確で逆効果になる可能性もあるが、ロシアの行動を鈍らせるには至っていない。

 RUSIの報告書は、ロシアが敵対国の水供給を妨害しようとしており、それはNATO加盟国にも及んでいると指摘。今年スウェーデンの島で発生した給水施設への妨害工作未遂事件を例に挙げた。

 ロシアはウクライナの水供給施設を攻撃し、農業生産能力を低下させようとしてきた。2023年6月6日にウクライナ南部でカホフカ貯水池が破壊され、最大110億ドルもの損害が発生した。専門家によると、影響は長期的に見れば洪水やインフラの損傷にとどまらない。貯水池に依存していたウクライナの農地は、今や半砂漠化のリスクに直面している。この地域では2021年に約400万トンの穀物・油糧種子が生産された。この年、ウクライナ全体の穀物生産量は約4500万トンに達した。

 ロシアは世界の穀物市場支配を目論む。生産を削減させられればそれだけ、ロシアにとって自国産業と戦後復興計画にとって有利となる。

 ロシアの気象操作への関心は新たなものではない。2013年、ウクライナ侵攻の前夜に人工降雨作戦専用機を公開した。報道によれば、この航空機は2020年にクリミア半島に配備された。

 理論上、ロシアは自国領内または占領下のウクライナ地域で人工降雨作戦を実施し、停戦合意に違反することなく、ウクライナの農業を妨害し、軍事物資の補給を妨害し、地雷除去を困難にすることができる。

 気象戦争の最もよく知られている事例は「ポパイ作戦」で、米国が、北ベトナムが南ベトナムに潜入する経路に沿って人工的に雨を降らせた。2023年にクリミア半島を猛烈な嵐が襲った際、ロシアメディアは米国が「気候戦争」をクリミアに仕掛けたと非難した。

 スピリン氏は「『ウクライナによる破壊工作』や西側諸国が引き起こしたとされる『気候カオス』に関する陰謀論がある。その目的は混乱を招き、意思決定を麻痺させ、連帯を分断し、責任追及を不可能にすることだ」と述べた。

 同氏は、ウクライナの環境を変えるロシアの攻撃は戦争犯罪として扱われるべきだと提言した。

 「環境責任追及連合を構築すべきだ。欧州連合(EU)、黒海沿岸・ドナウ川流域諸国、中南米・カリブ海地域のパートナー国は、気象・生態系災害の人間的代償を既に理解している。これらの国々と連携すべきだ」

 米国、ロシア、中国は1978年の環境改変条約に基づき、気象を戦争兵器として使用しないことに合意した。フランスやイスラエルなどはこの合意に参加していない。これらの国々もそれ以外の国々も、平和目的のための地球工学を開発し続けているが、中国の場合が示すように、両者の境界線はますます曖昧になっている。

 インドのオブザーバー研究財団で新興技術の国家安全保障への影響を研究するチャイタニャ・ギリ氏は、「チベットにおける中国の人工降雨活動は、インドだけでなく、ヒンズークシ山脈、ヒマラヤ山脈、カラコルム山脈に源を発する河川の下流域の複数の国々にとって、包括的な国家安全保障上の影響を及ぼす」と述べた。

 人工降雨により中国は生態系を中国共産党に都合のいい形で変容させられる。その代償として、チベットの伝統的な遊牧経済や、ウイグル系イスラム教徒が居住する新疆ウイグル自治区(ウイグル人は東トルキスタンと呼ぶ)の伝統的なオアシス経済が犠牲となっている。新疆ウイグル自治区の経済は、大量の水を必要とし労働集約的な作物である綿花に大きく依存している。

 「ウイグルのためのキャンペーン」創設者ルシャン・アッバス氏は「東トルキスタンの綿花畑は単なる農業活動の場ではない。そこは組織的な抑圧、経済的搾取、強制同化という深く憂慮すべき社会実験の場となっている」と語った。

 中国の地球工学事業は、汚染対策、干ばつ対策、イベントの保護に重点を置いてきた。中国は2008年、改造した対空砲と航空機を用いてヨウ化銀を大気中に散布した。目的は、2008年夏季オリンピック開催前に雨を降らせ、開会式中に雨が降らないようにすることだった。

 ソ連も1980年モスクワ・オリンピック前に同様の作戦を実施している。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)は、2026年8月13日(木)、千島列島最大の島である択禄島のクリリスクにある、ロシア英雄エドゥアルド・ノルポロフ記念中学校を訪問した。(ガヴリール・グリゴロフ、スプートニク、クレムリン・プール写真、AP通信経由)

ロシア、北方領土近くでミサイル試射 日本の対中防衛重視に影響も

(2026年08月24日)
新天地教会の指導者であるイ・マンヒ氏が、2026年6月24日(水)、韓国ソウルのソウル中央地方裁判所に到着した。(イ・ヨンファン/ニューシス提供、AP通信経由)

韓国の信教の自由攻撃に警鐘 韓日中活動家による反宗教「不浄な同盟」指摘も

(2026年08月23日)
2019年10月2日に低速シャッタースピードで撮影され、米空軍が提供したこの画像は、カリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地で行われた非武装のミニットマン3大陸間弾道ミサイルの発射実験の様子を示している。スウェーデンのシンクタンクは2024年6月17日(月)、世界の核保有国9カ国は核兵器の近代化を続け、2023年には核抑止力への依存度をさらに高めるだろうと述べた。(JTアームストロング軍曹/米空軍提供、AP通信経由)

国防総省、中露の脅威受け核指針を見直し 抑止力を強化へ

(2026年08月22日)
2026年1月30日(金)、東京南部の海上自衛隊横須賀地区本部で、小泉進次郎防衛大臣が韓国の安徽博防衛大臣と会談後、報道陣の取材に応じた。(AP通信/ユージン・ホシコ撮影、資料写真)

太平洋諸国が連携強化 小泉防衛相が豪訪問、米は警戒

(2026年08月19日)
2025年2月18日、スカボロー礁上空で、中国軍のヘリコプターがフィリピン水産局(BFAR)の航空機に接近飛行している。(AP通信/ジョエル・カルピタン撮影)

中国、南シナ海で支配強化 米国務省が「安定損なう」と異例の非難

(2026年08月16日)
2026年2月12日木曜日、ブリュッセルのNATO本部で、ウクライナ防衛連絡グループの会合開始を待つエルブリッジ・コルビー米国防次官(政策担当)。(AP通信/ゲールト・ヴァンデン・ワインガート撮影)

米国防当局者、中国への「現実主義」政策を提示 静かな外交、抑止力を強化

(2026年08月14日)
第93ホロドニー・ヤール独立機械化旅団の報道部が提供したこの写真では、兵士たちが2026年8月4日火曜日、ウクライナのドネツク州クラマトルスク前線都市付近のロシア軍陣地に向けて、多連装ロケットシステムBM-21「グラード」を発射する準備をしている。(イリーナ・リバコワ/ウクライナ第93機械化旅団提供、AP通信経由)

対ウクライナ・米国戦争でロシア・イランが連携 兵器、情報を供与

(2026年08月08日)
2026年7月22日(水)、コンゴ共和国イトゥリ州ブニア総合病院のエボラ治療センターで、医療従事者が救急車を消毒している。(AP通信/ディロール・ロツィマ・ディウドネ撮影)

エボラ危機、中国がコンゴで影響力拡大 米国の支援減も影響

(2026年08月07日)
韓国の李在明大統領は、2026年1月7日(水)、中国・上海で韓国メディア関係者との会合で発言した。(ハン・サンギュン/聯合ニュース提供、AP通信経由)

韓国当局、保守系米国人を出国禁止に 李大統領への名誉棄損で起訴

(2026年08月06日)
米インド太平洋軍司令官サミュエル・J・パパロ提督が、2024年8月27日火曜日、フィリピンのマニラで米インド太平洋軍主催の国際軍事会議で演説を行った。(AP通信/アーロン・ファビラ撮影)

米陸軍、西太平洋テニアン島に新型極超音速ミサイルを配備

(2026年07月29日)
→その他のニュース