バイデン政権では半導体不足の解消に数年かかる

(2021年12月25日)

2019年4月30日、韓国・ソウルの店舗に展示されているサムスン電子のマイクロチップ(資料写真)。世界的なコンピューターチップ不足は、2022年に向けて一向に解消される気配がなく、バイデン政権が提案した解決策もまだ何年も先の話だ。(AP Photo/Ahn Young-joon)

By Jeff Mordock – The Washington Times – Monday, December 20, 2021

 何千台もの新車がメーカーの駐車場にたまり、電動歯ブラシの価格は高騰し、コーヒーメーカーが店頭から姿を消し、アップルはアイフォーンの生産を大幅に縮小した。

 世界的なコンピューターチップ不足は2022年に向けて一向に解消される気配がなく、バイデン政権が提案した解決策もまだ何年も先の話だ。

 バイデン政権は、米国の半導体チップ生産を強化するために520億ドルを投資する法案を可決するよう議会に要請している。

 政府当局者は、将来、チップの供給が停止し、消費者製品の在庫が底を突くことのないよう、国内でのチップ生産が不可欠だと主張している。

 この法案は「チップス・フォー・アメリカ法」として知られ、7月に超党派の支持を得て上院を通過したが、下院で行き詰まっている。

 ジーナ・レイモンド商務長官は先月デトロイトで行った講演で、米国がチップ生産の増強に「直ちに」着手できるよう、この法案の可決を議会に強く求めた。

 しかし、アナリストらは、たとえ議会が緊急に対応して国内生産を拡大したとしても、すぐに解決するものではないと言う。米国が半導体チップの製造速度を上げられるようになるころには、危機はとっくに過ぎ去っているだろう。

 技術調査・コンサルティング会社ガートナー社の半導体・エレクトロニクス担当副社長、ゴーラブ・グプタ氏は「チップ不足が解消されるのは2022年の後半。新しいチップ(工場)の生産が開始されるまでに3年かかる」と話した。

 グプタ氏は、米国が生産を大幅に増やしたとしても、世界のサプライチェーン(供給網)から米国を完全に切り離すことはできないだろうと述べた。なぜなら、試験やパッケージングはすべて、コストの安い東南アジアで行われているからだ。

 半導体産業協会(SIA)の2020年の報告書によると、米国でチップを作るにはアジアよりも30%多く費用がかかるという。そのため、製造経費が100億ドルから400億ドル増加する可能性があると、報告書は結論づけている。

 「完全なエコシステムをここに持ち込まない限り、チップを東南アジアに送り返すことに変わりはないし、そうするのは非現実的だ」

 チップス法に基づく連邦政府の資金が、国内生産を支えるのに十分かどうかは不明だ。SIAによると、世界の半導体製造市場における米国のシェアは、1990年の37%から2020年には12%にまで低下している。欧州のシェアは同時期に44%から9%に低下し、アジアは現在、世界の半導体製造能力の75%を占めている。

 テキサスA&M大学でコンピューター工学を教えているポール・グラッツ氏は、「アジアにはお金以外に特別ないいところはない」と述べた。

 半導体の製造コストが米国より50%近く安い中国では、政府がチップの増産に1500億ドルを投じている。これは、チップス法の下での投資の3倍近い額だ。

 米国が国内製造の拡大に拍車をかけることで、市場にチップがあふれかえることを懸念する声もある。その結果、価格が下落し、収益がマイナスまたはゼロになるというのだ。

 ガートナーの調査によると、インテルやサムスンなど半導体上位10社の収益は、供給過剰のため2019年に12%減少したという。

 自動車メーカーやスマートフォンメーカーが販売不振の中で在庫を削減したため、供給過剰になる可能性が出てきている。

 グプタ氏は、「体系的に解決する必要がある。政治に流される必要はない」と述べた。

 16日、米インテル社は71億ドルを投じてマレーシアに大規模なパッケージングと試験施設を建設すると発表し、国内生産の拡大を求める政権に反旗を翻した。

 この71億ドルは、インテルがマレーシアに投じる300億ドルの投資の一部で、自動車からコンピューターまで幅広い産業向けのチップを製造する広大な複合施設となる予定だ。

 グラッツ氏は、米国は半導体チップのアジア諸国への依存をやめる必要があると述べた。

 SIAによると、韓国と台湾は世界のチップ製造大国であり、合わせると世界市場の約43%を占める。しかし、両国とも不安定になりかねない世界的な脅威が迫っている。韓国は北朝鮮との紛争を繰り返し、台湾は中国の全面的な侵略を恐れている。

 グラッツ氏は、「長期的に見れば、(チップス法は)私たちにとって有益であろう。なぜなら、市場の大部分を占めるのは台湾と韓国の2カ国だからだ。国内に投資することで、地政学的な動揺があったときに、より大きな緩衝材になる」と述べた。

 グラッツ氏はまた、国内生産を拡大する代わりに、企業は代替チップを使用する新技術に投資すべきだと話す。

 この戦略は、チップ不足で壊滅的な打撃を受けている自動車産業にとって、大きな利益をもたらすだろう。

 自動車メーカーのテスラは、自社で半導体を開発し、ソフトウエアを変更して使用するチップを減らすことで悪夢を乗り切った。

 チップ不足により、世界の自動車業界の今年の売上高は2100億ドル減と見込まれているが、テスラは黒字と事業の成長でこのあらしを乗り切った。

 グラッツ氏は、「テスラがやったことは非常に印象的だった。柔軟にソフトウエアを変更し、ソフトウエアに多くの費用をかけ、自社の車に異なるプロセッサーを使用できるようにした」と述べた。

 チップ不足で他の自動車メーカーが生産停止や操業停止に追い込まれる中、テスラは技術投資によって生産量を増やすことができた。

 トヨタは先月、米国と海外における生産目標を15%削減し、フォードは今夏、製造中の7万台が半導体チップを待っていると発表した。フォードは、完成した車が何台あるのか、何度もコメントを求めたが応じなかった。

 他のメーカーも技術的な投資を検討している。ゼネラル・モーターズ社は、チップメーカーと協力して、これまでチップで制御されていたいくつかの機能を組み合わせた装置を開発すると述べた。

 それでも、フォードなどの他の自動車メーカーは、半導体会社との提携を模索し、チップの供給と設計の両方への管理を強化することを目指している。

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