国防総省は対中戦争への態勢が不備だ、GAO報告

(2022年2月22日)

2020年1月11日(土)、カリフォルニア州サンタクララで行われたNFLディビジョナルプレーオフフットボールのサンフランシスコ49ers対ミネソタバイキングスの試合前の国歌斉唱時に、リーバイススタジアム上を飛ぶ米海軍のF-35ジェット機。(AP写真/Ben Margot)

By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, February 17, 2022

艦船の乗員疲労、サプライチェーン問題、対衛星防御など

 米国会計検査院(GAO)は最新報告で、拡大を続ける中国軍が米国の「深刻な脅威」だが、国防総省は対中戦争の態勢が整っていないと指摘した。

 「かつては時代遅れの軍隊を、中国は通常・核兵力の全てで、米軍に挑戦できる軍事組織に変貌させた」、GAOは今週公表の報告書で記している。

 合衆国議会の監視機関である会計検査院は、主要な弱点として、軍の対応能力の不備、機動性の問題、新型F-35戦闘機を維持するサプライチェーンの課題などを挙げた。

 「中国など仮想敵勢力は今日、戦闘分野の全てで米軍に対抗してきている」とGAO調査は警告した。「2017会計年度から2019会計年度にかけて、米軍の対応能力は陸では向上したが、海では低下した。宇宙、空、サイバー領域での対応能力は評価がまちまちだ」(同報告書)。

 GAOが特定した問題には他に、中国からのサイバー攻撃に弱い兵器体系、艦船乗組員の倦怠感、攻撃型潜水艦の稼働上の課題などがある。国防総省は「兵器システムがサイバー攻撃に耐えるよう尽力しているが、システム購入契約書にサイバーセキュリティ要件を盛り込むことが必要だ」と同報告書は注文を付けた。

 中国が強化し続けている宇宙兵器(ミサイル、ロボット衛星、レーザー、サイバー能力)も、将来の紛争で米軍の作戦行動を無力化する恐れがある。

 GAO報告書は、「中国が(国防総省の)衛星通信システムを妨害する能力を開発中だ」と警告し、北京が新機軸の物理・サイバー・電子戦の各手段を駆使した対衛星攻撃兵器を構築中だ、と付け加えた。

 そして同報告書は、国防総省が既存の宇宙システムの脆弱性を改善する方法を検討したが、「次世代の衛星通信アーキテクチャを選定するには、もっと多くの情報が必要、と結論付けている」と報告した。

乗員の不足

 会計検査院の同報告書は、海軍が人手不足に悩んでいることにも触れている。「海軍の乗員不足は、2017年に太平洋で起きた二件の衝突事件などで示された乗組員の疲労と安全も問題の一因である」と注意を喚起した。そして「2020年時点で海軍艦艇は、平均15%の人員不足なので、高度な敵に対峙するために必要な人員補充を完ぺきにする必要がある」と要請した。

 海軍はまた、戦闘態勢で艦船修理する充分な能力を持っていなかったことが批判された。大規模な戦闘中に損害を受けた艦船修理の方法を特定するという点では、まだ初期段階だ。「そうした任務に特化したリーダーシップなくして、海軍は持続性という点で難しい課題に直面する可能性がある」とGAO報告書は注意している。

 中国との紛争の場合、人民解放軍が保有する多量の対艦ミサイルを駆使して、米海軍の艦艇に大規模攻撃が想定される。GAO報告書では、DF-26ミサイルが中国沿岸から932マイル離れた標的に到達できると述べているように、海上移動中の標的を攻撃できる弾道ミサイルも中国は配備している。

 米海軍が強力な攻撃型潜水艦隊を保有するという、非対称戦の利点も、対応能力の問題で妨げられてきた。GAO報告書によると、海軍は2008年から2018年にかけ、攻撃型潜水艦について10,000稼働日を失ったという。そうした遅延のせいで、「これらの貴重な軍事資産が稼働能力を発揮できなかった」(GAO報告書)。

 中国軍はまた、戦争のための高度な人工知能システムに取り組んでいる。「中国は人工知能(AI)を、将来の軍事力と産業力にとって重要と見なし、2030年までにAIの世界的リーダーになる目標を追求している」と報告書は書いている。

中国への挑戦

 GAO報告書は中国の軍事力の脆弱性にも触れている。米国の国防情報局によれば、中国は発展途上の大国だが、「複数の地域で領土紛争など複雑な安全保障上の課題に直面し続けている」と報告している。

 また中国は数十年間、通常・核兵力を増強し続けているものの、2049年までに世界一級の軍隊を創設するという目標水準には至っていない。

 GAO報告書によると、米国の国防総省は「電磁スペクトル作戦の統合プロセスと手順の特定や、司令体制の改革、戦略適用のための指導態勢を明確に割り当てるなどの重要な手順を採っていないために、新しい戦略目標を達成できない恐れがある。」

 米中戦争の主要場面になる可能性が高い電子戦に関してGAO報告書は、国防総省が対中優位性を確保して戦場を支配するために、電子戦作戦に関して監視していく必要があると指摘している。

 電子戦には、敵の兵器や通信を妨害する面と、米側のシステムを保護する面との、攻撃・防御の両面がある。GAOがかつて触れていたように、2013年、2017年、2020年の各戦略レポートで指摘したにもかかわらず、国防総省は効果的戦略を実施する権限と資源を軍幹部に割り当ててこなかった。

 GAOは中国発の「脅威の五つのベクトル」として、アクセス阻止、エリア拒否機能、海戦の能力、サイバー脅威、宇宙兵器、軍用の人工知能技術を特定した。なお最新報告では、2019年12月のCOVID-19大感染の裏にあるとされる、中国のウイルス研究所の研究内容がもたらすかもしれない脅威については言及していない。

 そしてGAO報告書は、中国の成長する経済、外交、軍事、テクノロジーおよび、それらの能力を動員する意志が、重大な長期的脅威をもたらす、と結論付けた。

 国防総省は戦闘能力を高め、通常型の紛争抑止力を強化して、中国との競争と戦闘の両方に備える必要がある。

 「今後の政策の主要な検討事項として、国防総省がサプライチェーンを確保し、諜報を収集し、潜在的な脅威に対応して、宇宙・サイバー・AIの新たなテクノロジーを責任を持って活用する態勢を確認していくべきだ」、同報告書は指摘した。

 なお国防総省の報道官からは、コメントを求めた当方の電子メールに今のところ応答はない。

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