国務省、ロシアの新START履行停止を拒否
By Bill Gertz – The Washington Times – Friday, March 17, 2023
米国務省は、ロシアが冷戦時代最後の核兵器禁止条約の履行を停止したことについて、条約違反だとして拒否した。
ウラジーミル・プーチン大統領は2月21日の演説で、ロシアが核弾頭、ミサイル、発射装置を制限する2010年の条約の履行を停止すると発表した。
プーチン氏は、2022年2月の隣国ウクライナへの侵攻後、経済制裁などロシアに対する罰則を主導してきた米国が、ロシアを「戦略的敗北」に追い込もうとする一方で、核施設に「干渉」していると主張した。
米国務省は軍備管理・検証・順守局のウェブサイトに掲載した通知で「ロシアが主張する新START(新戦略兵器削減条約)の停止は法的に無効である。そのため、ロシアは条約に基づく義務に引き続き拘束される」としている。
プーチン氏の発表は、バイデン政権にとって逆風となった。バイデン政権は、軍備管理のための交渉や協定を国家安全保障政策の中心に据えようとしたが失敗し、ウクライナ危機にもかかわらず米露の核兵器を制限する新STARTの維持を望んでいた。
バイデン大統領は2021年の就任後にまず、2010年に初めて交渉され、期限切れ間近だったこの条約への米国の参加をさらに5年間延長した。
専門家らは、延長は、ロシアが開発中の、条約の対象外となるいくつかの新型戦略兵器の制限について交渉することを求めずに行われたと述べている。
プーチン氏が停止を発表した日、ロシア外務省は、モスクワが条約から正式に離脱するわけではなく、当面は新STARTの核戦力の制限を守り続けると発表した。同条約は、米露両軍の戦略的戦力を、配備済み核弾頭1550個に制限しており、アナリストによると、ウクライナ戦争による軍部への負担を考えると、モスクワは米国と軍拡競争できるような状態にはない。
国務省は今年初め、正式な声明で、ロシアは新STARTの下で求められている重要な核施設の査察を許可せず、新STARTに違反していると述べていた。また、同省は、ロシアの弾頭は制限の1550発を超過している疑いがあるとも述べている。
同省の軍備管理局は、ロシアの動きを「残念で無責任」とした。
声明は「新STARTの相互順守は、米国、同盟国やパートナー、ロシア、世界の安全保障を強化する。米国は、この条約を完全に履行するために、ロシアと建設的な協力を行う用意がある」としている。
同省はロシア政府に対し、立ち入り検査を再開し、条約の2国間協議委員会(BCC)での協議に応じることで、履行を再開するよう要請した。
ロシアはまた、条約の対象となる核戦力の状態や移動に関する通知も停止している。
「ロシアは、条約の下で長年行ってきた活動を再開することで、その非順守状態を容易に是正することができる。査察を受け入れ、BCCで会合し、通知とデータを提供すべきだ」
声明はまた、ロシアは条約の一環として、監視飛行を含む米国領土での核査察を行うことができると述べている。
米国は依然として新STARTを完全に順守しており、ロシアによる違反の主張は「虚偽」であるとしている。
また、声明は、ロシアのウクライナ侵攻は、条約に基づく法的義務の履行を免除するものではないとしている。
ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、国務省の声明を無視し、プーチン氏が先月、新STARTの履行停止を発表した際に訴えたことはまだ有効だと述べた。
タス通信によると、ペスコフ氏は16日、モスクワで記者団に対し、「ロシアは大統領の決定に基づいて履行を停止したことを改めて表明するのみである」と述べた。