逆風はね返すトランプ氏、裁判所が大統領選の舞台に
By Seth McLaughlin – The Washington Times – Monday, October 23, 2023
ドナルド・トランプ前大統領は、選挙運動と同じぐらい多くの時間を裁判に費やしている。選挙戦には逆風となりうる状況だが、これを追い風へと転換している。
10月に入ってからトランプ氏は、アイオワ州、ニューハンプシャー州、フロリダ州で4日間選挙活動を行い、マンハッタンの法廷で弁護人らとともに落ち着かない4日間を過ごした。
77歳のトランプ氏は民事訴訟で、融資を受けたり、手が届かなかったような取引をしたりするために事業資産をごまかした詐欺罪で起訴されている。
アイオワ州立大学の政治学教授ステフェン・シュミット氏は、電子メールで次のように述べた。「選挙戦をしているよりも裁判所にいる時間の方が長いなど前代未聞だ。だが、トランプ氏はたしかに選挙運動をしている。裁判所からだ」
「私はこれを『カートハウスキャンペーン(裁判所選挙運動)』と呼んでいる」
シュミット氏は、トランプ氏の立場からすれば「告発、告訴、裁判、起訴は多ければ多いほどいい」と述べた。
従来の選挙運動の常識では、裁判にかかりきりになることは、どんな候補者にとっても致命傷になる。しかし、リアリティー番組「アプレンティス」のスターだったお騒がせ男の場合はそうではなかった。
常にショーマンであるトランプ氏は、新しい舞台を最大限に活用している。法廷の外で待ち構えている大勢の記者やカメラを利用して、言いたいことを伝えている。メディアに対しては裁判を非難するとともに、選挙選にも注意を向けている。
トランプ氏は今月初めの出廷時、「史上最大の魔女狩りが続いている」と語った。
トランプ氏は、ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官(民主)を「人種差別主義者」「腐敗した」「過激な狂人」と呼び、私をつぶそうと必死だと述べた。
トランプ氏は裁判所で、「司法長官のレティシアは、『私はトランプを逃がさない。何があろうとトランプを逃がさない』とずっと言っている。レティシアを司法長官にしておいてはいけない」と述べた。
無実を主張するトランプ氏は、銀行にとって自分は「何の問題もない顧客」であり、財務諸表は「完璧だ」と述べた。そのうえで、自身は、司法制度を武器にしたバイデン政権の策略の犠牲者だと主張した。
「これはすべてワシントンから出てきたものだ」
トランプ氏は、裁判所から自身の主張を発信することに慣れる必要がありそうだ。
ポルノ女優への口止め料支払いを隠蔽しようとしたこと、機密文書の扱いで不正があったこと、2020年の選挙を妨害したことなどて90以上の重罪で起訴されている。いずれの裁判でも無罪を主張している。
しかし、今後はその影響を受けることになりそうだ。
彼の民事詐欺事件を担当する裁判官は、裁判官の事務官を攻撃することを禁じた命令に違反したとして、彼に5000㌦の罰金を科した。
選挙妨害事件の連邦判事は、トランプ氏が公にジャック・スミス特別検察官とそのスタッフ、裁判所職員を攻撃することを禁止する限定的な箝口令を出した。この命令は、トランプ氏の弁護団が上訴した後、一時的に解除された。
今のところ、この動きはトランプ氏に有利に働いている。
ジョージ・ワシントン大学のジョナサン・ターリー教授(憲法学)は、「不思議なことに、世論調査は、出廷が最も効果的な政治活動であることを示唆している。トランプ氏は、裁判は刑事司法制度の武器化だと主張し、これと戦っている」と指摘した。
「その意味で、裁判所にいることが政治的パフォーマンスとしての意味合いを持ち、明らかに支持者の心に響いている。これらの裁判を選挙まで連鎖させることは、多くの有権者の懸念を増幅させるだけだ」
それでも、いくつかの警告のサインは出ている。
世論調査によれば、共和党支持者がトランプ氏支持に結集しているのは、起訴の背後には悪意があると考えているからだ。しかし、世論調査によれば、一般大衆は共和党の予備選挙の有権者よりもはるかにトランプ氏に同情的ではなく、トランプ氏が代償を払う時が来たと考える傾向が強い。
シュミット氏は「これは2024年の本選で問題になるかもしれない」と言う。
この政治的パフォーマンスの一方で、劇的な展開もあった。
トランプ氏が法廷から抜け出せない中、共和党の対抗馬らは、初期に予備選が実施される各州を回って、バイデン大統領を退陣させる最善の方法は、問題を抱えていない候補者を擁立することだと有権者に訴えている。
フロリダ州のロン・デサンティス州知事は最近の選挙活動で、トランプ氏の大げさな振る舞いや規律に欠けるやり方が有権者を遠ざけていると述べた。
「すべてが余興になり、常に問題と混乱が背景にあれば、実際に仕事をこなす能力が損なわれる」
支持率がこのところ上昇しているニッキー・ヘイリー元国連大使は、「新しい世代のリーダーが必要な時だ」と訴えている。
ヘイリー氏はCNNの「ステート・オブ・ザ・ユニオン」で「私たちは過去の見出しを乗り越えなければならない」と語った。
現状では、まずトランプ氏の対抗馬らが敗北することになりそうだが、司法がトランプ氏を倒した場合は事情は変わってくる。
その場合でも、トランプ氏が獄中から選挙戦を遂行するかどうかは分からない。だがそうなれば、自身を恩赦する可能性が出てくる。
今のところ、トランプ氏は自信満々で、国家を強化するため、国家を破壊している悪人を暴くためなら、刑務所に入ることも厭わないと語っている。
トランプ氏は19日、マンハッタンの裁判所の外で「無実の罪で投獄される」と述べた。