中国依存のボードゲーム業界に壊滅の危機

2015年3月11日、ニュージャージー州アトランティックシティにあるモノポリーのボード。(AP Photo/Wayne Parry)
By Jeff Mordock – The Washington Times – Tuesday, April 8, 2025
過去10年間で大きな復活を遂げ、中小企業にも成功をもたらしてきたボードゲーム業界。しかし、製造はほぼ完全に中国に頼っているこの業界に、トランプ大統領の関税措置が壊滅的な打撃を与える恐れがある。ボードゲーム業界には、ロールプレーイングゲーム、戦争ゲーム、スポーツゲーム、古典的なボードゲームなどがある。市場調査会社アリストンによると、この業界の昨年の評価額は270億㌦以上で、年間成長率10%とすると2029年には490億㌦に達すると予想されている。
しかし業界のトップは、トランプ大統領が中国に対し新たに104%の関税を発動したことが、最悪の事態を招くだろうと警告している。同業界は主に、少数のゲームタイトルをリリースしている小規模な独立系デベロッパーで構成されている。
製造拠点を米国に移転するというトランプ氏の目標は、ボードゲーム業界にとって選択肢になく、これまでの試みも失敗に終わっているという。
ゲーム製造業者協会のジョン・ステイシー事務局長は、トランプ政権の関税措置を「まさに壊滅的」と表現した。
「われわれは戦略的な産業ではない。鉄鋼やコンピューターチップを作っているわけではなく、ただ人々に楽しみを提供しようとしているだけであって、他の産業と一緒くたにされては困る」とステイシー氏は困惑する。
ステイシー氏は、関税は業界に「ドミノ効果」をもたらすと指摘した。可処分所得が減った消費者のゲームの購入量は減り、ゲームの発注量を減らした店舗の経営に打撃となり、流通にも影響を及ぼす。結果的に大手ゲーム会社は従業員を解雇し、中小の発売元は倒産に追い込まれることになる。
ミニチュアフィギュア、サイコロ、トークン、カード、ゲームボード、ルールブック、紙、チップボードといった印刷物のほとんどを生産している中国は、世界貿易のバランス調整を目指すトランプ大統領の取り組みの中で、最も厳しい関税に直面している。
ゲームの材料の生産国は中国だけではないが、サイコロや木材を生産する他の国々も高い関税を課されている。ベトナム(46%)、インド(26%)、欧州連合(EU)の数カ国(20%)は、ゲーム用のサイコロや印刷物、木材部品を増産している。
2019年に「ウィングスパン」で大ヒットを記録したストーンメイヤー・ゲームズは、トランプ大統領の関税発動後の業界の将来について厳しい評価を発表した。
同社は「規模の大小、新旧を問わず、資金繰りのよくない発売元は深刻な問題を抱えている。特に、現在中国でゲームを制作している場合はなおさらだ」と強調した。さらにゲーム発売元はゲームストアを避けて、消費者に直接販売したりクラウドファンディングサイトで限定販売したりできる「低コストで高価格帯の製品」にますます注力するだろうと付け加えた。
トランプ氏は、関税を支払いたくないのなら企業は米国で製品を製造すべきだと主張している。
米国で生産拠点を見つけようとした企業もあったが、失敗した。米国は人件費が高く、未熟練労働者の訓練コストが高いため、小規模のゲーム会社は参入できなくなっている。
業界の試算によると、ボードゲームが経営的に成り立つには5倍の投資収益率が必要だとされる。ゲームの製造コストが10㌦の場合、企業がデザインと制作に費やした費用を回収して利益を上げるためには、50㌦で販売しなければならないことになる。
1980年から「オーガ」や「デッドリードゥードゥルズ」などのボードゲームを製造してきたスティーブ・ジャクソン・ゲームズは国内製造を検討しているが、米国では「本格的なボードゲーム生産は実質存在しない」と述べている。
メレディス・プラッコCEOは声明で「見積もりを取り、工場とも話をした。たとえ意欲があっても、設備も労働力も、スケジュールもない」と語った。