予備選で反トランプ議員に大量の刺客
By Mica Soellner – The Washington Times – Friday, July 23, 2021
ドナルド・トランプ前大統領を敵に回した共和党下院議員に対抗する、2022年予備選での対抗馬が増えているが、その動きは、トランプ氏の名誉挽回を求めることで大きく活気づいている。
トランプ氏は、1月の弾劾に賛成票を投じ、2020年の選挙が不正にまみれていたという同氏の主張に異議を唱えた10人の共和党下院議員への攻撃を支援している。
トランプ氏の弾劾に賛成票を投じた10人の共和党員のうち9人には、少なくとも1人の親トランプ派の予備選対抗馬がいる。例外は、下院ニューヨーク州第24区のジョン・カトコ議員で、トランプ氏がシラキュース地区での対抗馬を支援すると申し出たにもかかわらず、今のところそれに応えた者はいない。バイデン大統領はこの地区で10ポイント差を付けていた。
他の九つの選挙区で対抗者が現れたことは、トランプ氏に同調する者とエスタブリッシュメントに基盤を置く者との間に依然として共和党内の溝があることを反映している。
反トランプ派の候補者の多くは生き残るだろうと、中間選挙を注視している下院共和党議員の側近は述べた。一方で、現職議員には、油断は禁物だと注意を促している。
この補佐官は、「予備選には、真剣に取り組む必要がある。もし、自分が勝つことを前提にしているとしたら、大失敗となる可能性がある」と述べた。
共和党予備選挙の対象者の中で、サウスカロライナ州選出のトム・ライス下院議員は、州の選挙法により、予備選挙では相対多数ではなく過半数の票を獲得しなければならないため、最も不利な候補者となっている。
ライス氏は、州北東部に位置する第7選挙区の議員で、選挙区には農地やマートルビーチなどの海辺の観光地がある。現職議員の中で最も多い、11人の予備選候補者と選挙戦を戦うことになる。
世論調査サイト「ファイブ・サーティー・エイト」によると、ワイオミング州でただ一人の下院議員、リズ・チェイニー氏が、ライス氏に次いで不利な戦いを強いられている。
チェイニー議員は、党内で最も反トランプ色の強い共和党議員であり、特に、ナンシー・ペロシ下院議長から、1月6日に議会議事堂で発生したトランプ氏支持者の暴動を調査する特別委員会の委員に指名されている。
少なくとも7人いる予備選対抗馬の一人、チャック・グレイ州議会議員は、ワイオミング州でのチェイニー氏への反発は根強いと指摘した。
グレイ氏は、この選挙で「真の保守派の戦士」を自称。親トランプ、反チェイニーの立場で、2020年の選挙は盗まれたと主張している。
トランプ氏は昨年の大統領選で、70%近い得票率でワイオミング州を制した。
グレイ氏はワシントン・タイムズに「リズ・チェイニー氏はわれわれの代表ではない。彼女の価値観は私たちと一致しない。ここに住んでいない。われわれを代表していない。われわれの運動を破壊しようとしている。それは間違っている」と述べた。
チェイニー氏の事務所から、選挙戦の状況についてコメントは得られなかったが、彼女が以前に行った、議席争いを歓迎するコメントについて言及した。
チェイニー氏は5月にNBCの「トゥデー」で次のように述べている。「来るなら、来ればいい。もし彼らがワイオミング州に来て、ワイオミング州の人々が憲法に忠実な人よりもドナルド・トランプ氏に忠実な人に投票すべきだと訴えるのなら、喜んで受けて立つ」
チェイニー氏が5月に下院共和党会議議長の座を追われた後の全米調査では、共和党員の50%以上がチェイニー氏を好ましく思わないと答えた。好意的に見ている人はわずか15%だった。
この調査は、モーニング・コンサルトとポリティコが5月14日から17日にかけて実施したもので、誤差は4%ポイントだった。
共和党の穏健派候補であるマリッサ・ジョイ・セルビグ氏は、トランプ氏が今週、チェイニー氏の対抗馬の一人を近々、承認すると述べ、トランプ氏の存在が選挙戦に大きく影響していると述べた。一方、ワイオミング州共和党は、現職のチェイニー氏に対して甘いとして、セルビグ氏に出馬を取り消すよう働きかけている。
セルビグ氏は、「私は反チェイニー氏で出馬しているわけではない。ワイオミング州の人々があの状況をどう感じているかは知っているが、あえて、これについては話さない。現職議員だけではない、もっと重要な政治について話したいからだ」と述べている。
反トランプの現職議員に挑む他の予備選対抗馬らは、別の考えを持っている。
トランプ政権で商務省顧問だったカタリナ・ラウフ氏は、シカゴ郊外を中心としたイリノイ州第16区のアダム・キンジンガー下院議員に対抗している。
ラウフ氏は、出馬するつもりはなかったが、トランプ氏を強く批判してきたキンジンガー氏に刺激されて、政治の世界に足を踏み入れることになったと語っている。
ラウフ氏はワシントン・タイムズに「本当は予備選に出たいとは思っていないが、アダムは否定的な意味で名を馳せた」と語った。
2020年、キンジンガー氏は、民主党の対抗馬に対して64%以上の票を獲得し、同選挙区で大勝した。また、州全体ではバイデン氏が勝利したものの、トランプ氏は共和党が押さえているイリノイ州北西部のいくつかの郡で勝利していた。
キンジンガー氏は今年、トランプ氏の弾劾に賛成し、1月6日の暴動を調査するための超党派委員会の設立に失敗した際に、設立を支持した2人の共和党員のうちの1人として、全米の注目を集めた。この2人のうちのもう一人はチェイニー氏だった。
カリフォルニア州の民主党議員であるペロシ氏は18日、上院共和党がトランプ氏支持派による暴動を調査する独立委員会の提案を却下したため、キンジンガー氏に1月6日の特別委員会への参加を要請すると述べた。
キンジンガー氏が受け入れれば、チェイニー氏とともに共和党員として委員会に参加することになる。共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務は、ペロシ氏が共和党下院議員2人を委員に任命することを拒否したため、委員会をボイコットすると警告した。
キンジンガー氏は18日にペロシ氏の申し出を受け入れ、ペロシ氏が設立した特別委員会に参加することになった。特別委員会は、上院共和党が、暴動を調査する独立委員会の設立を拒否したことから、ペロシ氏が提案していた。
キンジンガー氏とチェイニー氏は、特別委員会で唯一の共和党員となる見込み。マッカーシー氏は先週、ペロシ議員が指名した2人の共和党議員を拒否したため、委員会をボイコットすると脅していました。
キンジンガー氏が2021年第1四半期に110万㌦という巨額の資金調達を行ったにもかかわらず、ラウフ氏は、トランプ氏を支持する同地区の有権者からは現職への反感が続いていると述べた。
「彼は自分の選挙区の有権者を理解していない。彼は彼らを軽蔑している」とラウフ氏は語った。
イリノイ州では1つの議席を失うことになっているが、どの選挙区対象となるかは分かっていない。
キンジンガー氏は、下院再選以外の政治的決断を示しておらず、陣営からはコメントを得られなかった。
グランドラピッズを含むミシガン州西部の第3選挙区のピーター・メイジャー議員(1期目)には、米陸軍退役軍人で中小企業経営者のトム・ノートン氏をはじめとする数人の共和党員が対抗馬として出馬している。
この選挙区は、1949年から1973年までジェラルド・フォード大統領が下院議員を務めたことがある。ノートン氏は、共和党から無所属に転向し、2019年にトランプ氏の最初の弾劾を党内で最初に呼びかけたジャスティン・アマッシュ前下院議員の後を継いだメイジャー氏からの転換が必要だと主張している。
アマッシュ氏は、大統領選への出馬を一時、ちらつかせた後、2020年に再選を目指さないことを発表、共和党から孤立し、議席を維持することが困難になった。
ノートン氏はインタビューで、「この地区の有権者は、アマッシュ氏に裏切られたと感じている。今度はメイジャーに裏切られたと感じている。彼らは、ワシントンに送っても、10分後には自分たちを裏切るようなことのない人物を求めている」と語った。
超党派のクック・ポリティカル・レポートが7月に発表した分析によると、メイジャー氏の弾劾投票は、前任者の政治的キャリアと同様に、予備選挙で影響を及ぼす可能性があるという。
「メイジャー氏がトランプ氏の弾劾に投票したことは、予備選挙では非常に問題になる可能性が高いが、選挙戦が大規模で決選投票がないということは、彼が再選される可能性もあるということだ。興味深いことに、アマッシュ氏は弾劾を支持した後、再選を求めなかった」と報告書は指摘している。
第3区は何十年にもわたって共和党の牙城であり、トランプ氏の存在は、メイジャー氏が1期限りとなるかどうかの試金石となる。
メイジャー氏は、自党を批判することがあり、メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)には一部党員を「内戦を仕掛けている」として「裏切り者のヘビ」と呼んだことがある。
ノートン氏は、このような発言が有権者の注目を集めると言う。
「まず、新人であることで支持を集められたのだと思う。私たちを裏切り者のヘビと呼ぶことは、自身の政治的棺桶に自分でくぎを打ち込むようなものだ」
メイジャー陣営からはコメントを得られなかった。