対ロシア強硬策が不調で、形無しのバイデン大統領

(2021年10月12日)

ジョー・バイデン大統領は、2021年10月7日(木)、イリノイ州エルクグローブビレッジにあるマイクロソフトのデータセンターを建設するClayco Corporationの建設現場を視察した後、COVID-19の予防接種について講演しました。(AP Photo/Susan Walsh)

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Thursday, October 7, 2021

 合衆国議会ではホワイトハウスに対して、ロシア外交官を数百人規模で国外退去させるよう超党派の圧力がかけられてきた。しかしバイデン大統領を追い詰めるだけで、ロシア政府に厳しく対処するとの公約も疑わしくなっており、米国はウラジミール・プーチン・ロシア大統領に対する政治的梃子を無駄にしたのではないか、との疑問が起こっている。

 ロシアが在モスクワ米国大使館に対し、ロシア市民と第三国の国籍保持者のスタッフを雇うことを事実上禁止し、アメリカの出先機関は180人以上のスタッフ解雇を余儀なくされた。これに対し米国の議員たちはバイデン大統領に、外交上の報復措置を採るよう圧力をかけている。普通にはあり得ないほどの今回の攻撃的措置は、冷戦時代に敵同士だった両国の間柄が、その後どれほど悪化したかを端的に示した。

 これに対してバイデン政府が強硬な対応をしないため、同大統領の選挙公約でもあった、プーチン政権を監視し、ロシアが時と場所を問わず米国に対抗できるなどと考えられないようにする、という公約を果たしていないのでは、との批判の火に油が注がれている。 2020年の選挙戦の際、民主党はトランプ大統領について、プーチン大統領の責任を追及できていないことを繰り返し鋭く批判していた。

 一部の外交政策専門家は、米政府が議会の要求に応じる形での、ロシア外交官をワシントンから退去させることはしない可能性があると指摘している。彼らに言わせれば、プーチン大統領に厳しい態度を採るどころか、対テロ作戦やイランとの核交渉などでロシアから恩義を被っているからだという。

 クレムリンが木曜日に発表したところでは今月、アフガニスタンのタリバン新政府から代表団を迎えるという。ロシアはアフガニスタンを取り囲む中央アジア諸国の中で最大の軍事力を保有しており、バイデン政府がアフガニスタンでの大失態から立て直しを図る中で、ロシアは新たな影響力を有しているのだ。

 「問題はバイデン政権がアフガニスタン情勢に関して、ロシアと関係悪化させないことが必要になってきたからだ」、保守派のヘリテージ財団のアリソン外交政策研究所のルーク・コフィー所長は指摘した。「米国は中央アジアの関連諸国にアクセスしたり関与することが必要だが、ロシアはそれに直接影響を及ぼすことが可能なのだ。」

 コフィ所長はまた、「イランに関してバイデン政権は新たな核合意を確実にしたいのだが、従来から国際舞台でイランに外交上のスペースを提供したのはロシアだった」と指摘した。「今やバイデン政権はある意味、自らを脇に追いやったのだ。」

 米国のアントニー・ブリンケン国務長官は今週の欧州訪問の際、パリで記者団に対し、2015年のイラン核合意を復活させる方策について、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と協議したことを明らかにした。トランプ前大統領は2018年に同合意から撤退した。イランと強い関係を保持するロシアが、同交渉の再開と新たな協定調印まで重要な仲介役を務める可能性が高い。

 ブリンケン長官は記者団に、「我々は現在の立ち位置と、これから目指す地点に関して要点を確認できた」と語った。ロシアでの会談の際ラブロフ外相は、イラン核合意を復活させる交渉は「できるだけ早く再開するべきだ」と述べた。

 一方、国防総省は先週、米軍幹部たちがロシア側と協議し、米軍がこの地域にあるロシア軍基地を使用する可能性について話し合ったことを確認した。それは途方もない論議を要する内容だが、米軍が8月の全面撤退後、アフガニスタンとその周辺でテロリストを標的にした攻撃を開始するため、米国が非常に必要としている作戦基地を提供される可能性があるわけだ。

劇的に変化している

 米国・ロシアの力関係は、2020年大統領選挙の当時にバイデン氏が思い描いたものとはまったく異なってきた。候補者バイデンとしては、トランプ大統領がプーチン大統領に宥和的だったと批判して、自分は厳しい態度をとって相応の成果をもたらすと約束した。バイデン政権はロシアの指導者たちに新たな経済制裁を課し、ウクライナに相当の武器輸出をした。しかしそれらの政策は、西側諸国が対ロシア関係を30年来の最低レベルにする理由となったロシアの有害な行動をほとんど阻止できていない。

 「北大西洋条約機構(NATO)、大西洋をはさんだ国家連合とロシアとの関係は、冷戦後最低レベルであることを認識すべきだ」、NATOのイェンス・ストルテンバーグ事務総長は今週、ジョージタウン大学での政策講演でこう指摘した。

 バイデン大統領は、昨年ロシアが野党党首アレクセイ・ナワルニーを中毒させ拘留したことや、米国企業や連邦機関に頻繁なサイバー攻撃を行ったこと、その他の問題でプーチン大統領を非難してきた。

 バイデン大統領の民主党の同僚の中にも、もっと具体的な行動を望む議員たちがいる。9人の民主党議員を含む17人の上院議員が今週、大統領に書簡を送り、ロシアの対外行動に直接対抗するよう働きかけた。その中にはロバート・メネンデス上院議員(外交委員会委員長、民主党、ニュージャージー州)とマーク・R・ワーナー上院議員(諜報特別委員会・委員長、民主党、バージニア州)がいた。ジェームズ・E・リッシュ上院議員(アイダホ州)と、マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)など、これら委員会の共和党幹部も署名している。

 「ロシア側の今回の突然かつ一方的な措置は、在モスクワ米国大使館の日常業務と、ロシアに居住・勤務・旅行するアメリカ人が必要とする領事サービスを遂行する国務省の能力を危険にさらすものだ」、と同書簡は書いている。「また大使をふくむ大使館職員が、モスクワで米国の政策的利益を代表し重要な業務を遂行する能力を害するものだ。」

 「国家安全保障チームは、ロシア政府の挑発的行動に対し、責任を持って相応かつ迅速な行動を採ることで、在モスクワ米国大使館が必要な人員配置と応援をするための迅速で具体的な措置を講じることを求める」、同書簡は締めくくっている。

 国務省当局者はロシアが米国大使館に人員削減を強制したことを非難したが、新たな措置を検討しているか否かについてはコメントしなかった。

 「一般的に我々は議会内の書簡のやりとりにコメントしない。ロシアの措置は、ロシアの活動に対する米国の外交活動や我が国の職員の安全、さらにロシア政府との外交に従事する我々の能力に悪影響を及ぼした」、国務省報道官はワシントンタイムズに語った。「我々はロシアにいる外交使節団を支援して、これらの問題に関しロシア政府に引き続き働きかけているところだ。」

 同報道官はまた、米国政府が「ロシアの措置に対し、然るべき対応措置を講じる権利を留保する」と言明した。

 NATOは木曜日、ブリュッセルに勤務するロシア外交使節団の少なくとも8人のメンバーを国外退去させることで、ロシア側への対抗措置をとった。NATO当局者は、彼らが未申告の諜報員だとしている。

 ロシア高官は、一連の動きはロシアを世界有数の悪役に仕立てあげようとする西側の試みであり、緊張を和らげるあらゆる努力に有害だと語った。

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、「NATO当局者の声明には、我が国と関係正常化したいという願望と実際の行動に明らかな矛盾がある」と指摘した。「当然ながらこうした行動のおかげで、関係正常化やNATOとの対話再開に関して幻想を抱く余地を与えない。」

 ペスコフ報道官はワシントンでのロシア外交官削減を議会が目論んでいることは逆効果であり、「むしろ感情的なものだ」と語った。同報道官はタス通信に対し、「事態を観察している限り、議員たちはワシントンに勤務するロシア外交官の人数さえ知っていないようだ」とも語った。

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