イラン情勢巡り強気のロシア 中東での影響力低下が顕著

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左)とイランのマスード・ペゼシュキアン大統領が、2025年1月17日にロシア・モスクワのクレムリンで行われた会談中に記念撮影に応じる。(ヴィャチェスラフ・プロコフィエフ、スプートニク、クレムリン・プール写真 via AP、ファイル)
By Joseph Hammond – Special to The Washington Times – Tuesday, January 20, 2026
【ロンドン】ロシアは、トランプ米政権がイランの反体制デモを支援するため、新たな軍事行動を検討していることを受け、いかなる外部からの介入に対しても反対すると強い警告を発した。しかし、ロシアの中東での影響力は、ソ連崩壊以降で最も低い水準に低下している。
かつてロシアは、アルジェリアからイランに至るまでの重要なパワーブローカーだったが、今や取引に基づく外交に後退し、軍事的プレゼンスも象徴的なものになっている。
「外部から扇動された不安定化を口実に、2025年6月に行われたようなイラン侵略を繰り返そうとする者は、中東情勢および国際的な安全保障にとって破滅的な結果を招くことを認識しなければならない」。ロシア外務省は先週の声明でこう主張した。
イランはロシアにとって中東で最も緊密な同盟国であり、ウクライナ侵攻でも事実上の同盟国だ。イランは、ウクライナ戦争を巡ってロシアの戦争機構を支えるため、ウラジーミル・プーチン大統領に、無人機などの軍事支援を供与してきた。それでも、ロシアが中東で自国の利益を積極的に支援する能力や意思は、かつてと比べれば大幅に低下している。
ロシア専門家で、世界の金融リスクを評価する国際コンサルティング会社エメンテナ・アドバイザリーの創業者、マクシミリアン・ヘス氏は「ロシアは中東での影響力を劇的に失った。イランでの蜂起が続けば、プーチン大統領は、イスラム聖職者支配体制を直接支援するよりも、石油市場に動揺を引き起こすことを狙った形で介入する可能性の方が高いだろう」と述べた。
ロシアが中東の同盟国重視から、資源を大量に消耗するウクライナ戦争へと軸足を移したため、イランが米国からの脅威に対処する能力には制約が生じている。例えばイランが、ロシア製の防空システムを追加取得する可能性は低い。イランの防空網はロシアからのものが多いが、昨年6月の米イスラエルによる攻撃で多くが破壊された。
12月には、イランの隣国トルコがロシア製地対空ミサイルS400の返還計画を発表した。これによって地域でのロシアの威信は大きく傷ついた。2019年にS400の取得を開始したことでトルコは、米国防総省の戦闘機F35計画への参加を停止された。現在、北大西洋条約機構(NATO)で2番目の規模の軍を擁するトルコは、トランプ政権とF35計画への復帰を協議している。
ヘス氏は「ウラジーミル・プーチンは必ず、中東が混乱の様相を呈していることを利用し、地域の指導者との取引や経済的利益の確保を図る。戦争への執念と制裁で経済が逼迫する中、そうした利益はますます重要になっている」と述べた。
ロシアの地域での後退の例は他にもある。イラクは今月、ロシアの資産の国有化に踏み切った。イラク政府は、世界最大級の油田の一つウェストクルナ2の国有化を承認した。ロシアのルクオイルはこの油田の75%を保有していたが、米国の制裁で操業が困難になっていた。
イラクの石油産業に関与する企業ウイ・スクティのCEO、サルワン・ダウーディ氏は、「ロシア企業は今、社名変更と現地化を進めている。制裁を避けるため、現地企業と提携し別名で操業している。例えばガスプロムが『ガルミアン・ペトロリアム』として活動するなどだ。ロシアは目立つことなく事業に取り組むことで、プレゼンスを維持しようとしている」と述べた。
ガスプロムはロシアの国有エネルギー企業だ。
ウェストクルナ2は日量およそ50万バレルを産出している。これは世界の石油供給の約0.5%、イラク全体の9%に相当する。ロシアは2009年に契約を獲得し、ノルウェーの国営エネルギー企業スタトイル(現エクイノール)と共同でこの油田に参画した。
イラク軍の元将軍で情報分析部長のマジド・カイシ氏は、「ロシアの主要企業がこのような状態にあることが直ちに、中東でのロシアの影響力の終焉を意味するわけではない。大きな打撃を受けていることは確かだ。2024年12月にはシリアのアサド政権が崩壊し、地域でのプレゼンスの後退を余儀なくされたばかりだ」と述べた。
1年前にシリアの強権指導者バッシャール・アサド氏が失脚したことで、シリアでのロシア最大の資産フメイミム空軍基地とタルトゥス海軍施設の将来は不透明になった。
トランプ大統領と異例の関係を築いたシリアのアフマド・シャラア大統領は、ロシアに対し、既存の合意を尊重すると約束している。これは、政権崩壊時にロシアへ逃れたアサド氏の身柄引き渡しをロシアに迫るための、ダマスカス側の交渉材料にもなる。
外交的には望み薄だが、同国の残虐な元指導者の公開裁判が実現すれば、新生シリア政府の正統性は大きく高まるだろう。
カイシ氏は「ロシアは、地域の強力なプレーヤーから、すぐに成果を出すことを求め、象徴的であっても存在感の維持を図る実利的なプレーヤーへと変わった」と語った。
10月に予定されていた「ロシア・アラブ世界」サミットは、アラブ諸国の関心不足により中止された。これも、ロシアの求心力低下を示す明確な兆候だ。
英政府の元情報顧問、リネット・ナスバッハー氏は、「プーチンはロシアを『文明国家』と見ており、それにはまず、文明圏内のウクライナを手中に納めることが必要だ。そのため中東での立ち位置は選択的なものとなり、中国に依存するロシアは、ペルシャ湾岸で中国に対抗できる力を持ちにくくなっている」と述べた。
石油・ガス生産国という共通利益は、ロシアがオマーンやカタールと比較的強い関係を維持する助けとなっている。
オマーンは昨年、ロシアに対してビザ(査証)免除を認め、カタールはウクライナとロシアの間で人道面での交渉の一部を仲介してきた。
ロシアのステルス戦闘機スホイSu57フェロンは、ドバイエアショー2025で主役となり、アクロバット飛行で観衆を沸かせた。だが、うたわれているステルス性能が披露されることはなかった。
Su57が披露されたのは、エアロ・インディアと珠海航空ショーに続き3回目に過ぎない。ロシアはドバイエアショーで他国と別のパビリオンを構えており、ワシントン・タイムズに対し、複数の照会があったことを明らかにした。
ロシアは依然、中東での影響力確保への野心を持っているが、それを実現する能力は目に見えて低下している。警告を発し続けているものの、制裁と経済的制約により、ロシアにそれ以上のことをする余地はほとんど残されていない。
