米中関係の転換点
By Editorial Board – The Washington Times – Thursday, November 18, 2021
米国と中国の関係はこのところ、不安定な動きを示してきた。しかし、その不確実性は終わった――突然の変化は15日夜、起きた。世界的決闘に意欲満々の超大国がビデオ会議で対決したからだ。
バイデン大統領が―個人的にではないものの―世界に破壊的な新型コロナウイルスをばらまいたことに責任のある人物と対決するチャンスを得た。しかし、彼は、口をつぐんだ。世界は誰が首謀者なのか分かっている。習近平国家主席だ。
バイデン氏は米大統領として初めて、オンラインで中国の国家主席と、向かい合って座り、愛国心で裏打ちされた鋼のような目に凝視されても、しようとすればにらみ返すこともできたに違いない。その瞬間、中国がやったこと―意図的であろうと、なかろうと―76万5000人の米国人と、世界中の500万人以上を殺したウイルスをまき散らしたことに対する、誠意ある説明を求めなければならなかった。その機会は失われた。もう戻ってこない。
中国のボスは、説明責任の要求に屈服したはずだと言っているのではない。中国政府当局者らは、4カ月前に世界保健機関(WHO)の調査官らへの協力を拒否して以来、透明性の要請をうまくかわしてきた。政府の中でそれほど強硬でない人物らでも、そのウイルスは「母なる大地」の邪悪な産物だというおとぎ話に仕立て上げている。
バイデン氏は勇気をもって立ち向かうべきだが、パンデミックをうやむやにし、責任を回避してきた。エドマンド・バーク(英国の政治家、政治哲学者)はかつて、「悪の勝利に必要な唯一のことは善人が何もしないことである」と指摘したが、これを各世代に思い出させるには、繰り返される人類の苦しみでは不十分とでも言っているようだ。
確かに、「新疆ウイグル自治区で行われているPRC検査に関する懸念」について大統領は問題提起をした。これは、中国北西部に住むイスラム教徒のウイグル人に対する組織的迫害に対する毒消し的説明にはなる。しかし、米プロバスケットボール協会(NBA)のスター選手エネス・カンターは、「フリーチャイナ」と刻まれたゲームスニーカーを着用することで、この問題で、もっと大きな注目を集めている。
バイデン氏は、「戦略的リスクの管理」の必要性についても言及した。これは、極超音速ミサイルによる核戦力の増強がもたらす脅威について触れたものだ。そして、彼は、併合から自らを守ろうとする離島・台湾の権利を支持する一方で、同時に、北京の主権をも認める米国の「一つの中国」政策を是認した。
荒野を旅する人は、熊と小道で出くわしたら、その生き物が攻撃されると感じないように、目を合わせないよう事前の注意を受ける。恐らく大統領は、同じ警告が共産主義国中国にも当てはまると思っている。なぜならば、そこは、しばしば竜のよう似顔絵で描かれているからだ。
中国で発生した致死性の高いウイルスによって沈黙させられた何百万人もの人々に代わってバイデン氏がはっきり物を言わなかったことは、一つの転換点を象徴している。それは、この「自由な世界のリーダー」を恐れる必要はないと、習氏に伝えたことになる。孫子が「兵法」で論じているように「戦わずして勝つのが最善である」からだ。