バイデン氏が初の一般教書演説

(2022年3月7日)

2022年3月1日(火)、ワシントンの国会議事堂で、カマラ・ハリス副大統領とナンシー・ペロシ下院議長が見守る中、連邦議会合同会議で一般教書演説を行うジョー・バイデン大統領。(Saul Loeb, Pool via AP)

By Jeff Mordock – The Washington Times – Tuesday, March 1, 2022

 バイデン大統領は1日夜、初の一般教書演説を行い、大統領のリーダーシップへ強まる疑念、エスカレートする欧州の戦争、高進するインフレ、発生から2年がたつ新型コロナウイルスパンデミックに不安を感じている国民を安心させようとした。

 ロシアの戦車と砲兵がウクライナの奥深くまで攻め込み、民間人の死者が増える中、バイデン氏はプライムタイムの演説で、米国の対モスクワ制裁がプーチン政権を機能不全に陥れていると主張した。

 演説の中でバイデン氏は、米国はロシア機の飛行を禁止すると発表し、ウクライナで続く攻撃に対してプーチン大統領を罰する取り組みを強化させた。これは、カナダと欧州連合(EU)が今週初めに行った同様の措置に続くものだ。

 昨年のアフガニスタン撤退時の惨事を受けバイデン氏は、国民が自分をどう見ているかを再確認するために、厳しい言葉でプーチン氏を非難し、冷戦終結後、最大の危機に直面している欧州でのロシアの侵略に対する防波堤として、北大西洋条約機構(NATO)の価値を強調した。

 バイデン氏は「プーチン氏の戦争は計画的であり、いわれのないものだ。彼は外交努力を拒否した。プーチン氏は、西側とNATOは反応しないと思っていた。米国内で私たちを分裂させられると考えていた。プーチン氏は間違っていた。私たちは準備ができていた」と述べた。

 バイデン氏が大統領に就任してわずか1年で発生したこの紛争は核戦争の恐怖を高め、議会ではロシアの侵攻を阻止するためにもっと早く行動すべきだったという批判が噴出した。バイデン氏は、NATO諸国の防衛を強化するため、数千人の米軍を欧州に派遣するよう命じている。

 またバイデン氏は国民に、「はっきり言っておくが、私たちの軍隊はウクライナのロシア軍と交戦していないし、交戦することもない」と言った。

 演説の数時間前、バイデン氏はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と30分間電話会談を行い、混乱する国家への援助継続とロシアの責任追及を約束した。

 ホワイトハウスは、ウクライナに対する米国の支援を強調するため、オクサナ・マルカロバ駐米ウクライナ大使を大統領夫人席に招いた。

 議員らは、青や黄色のスーツ、ドレス、ネクタイ、リボンなどを身につけ、ウクライナとの連帯を示した。ウクライナの国旗を手にする議員もいた。バイデン氏が、ウクライナを支持する議員に起立を促すと、議員らはマルカロワ氏にスタンディングオベーションを送った。

 バイデン氏は演説で、経済制裁はプーチン氏に対抗する最善の方法だと主張した。

 「私たちは歴史を通じて、この教訓を学んだ。独裁者が侵略の代償を払わないとき、彼らはさらなる混乱を引き起こす。彼らは動き続ける。そして、米国と世界に対するコストと脅威は増大し続ける」

 この対立は、燃料費がさらに高騰するなど、米国に経済的なリスクももたらしている。経済学者によれば、米国がロシアに科した金融制裁がエスカレートし、ガソリン価格が1ガロン(3.7リッター)あたり5ドルにも上昇する可能性があるという。すでにいくつかの州では、ガソリン価格が4ドルを超えている。

 インフレ率が40年来の高水準にあり、バイデン氏も対応を迫られていることから、教書では家計のコストを下げ、労働市場を活性化させるためのプランに焦点を当てている。食料品からガソリンに至るまで、あらゆるもののコスト上昇に対抗するための4項目の計画を打ち出した。

 バイデン氏は、「私たちには選択肢がある。インフレに対抗する一つの方法は、賃金を引き下げ、国民をより貧しくすることだ。だが、もっといい方法がある」、それは、物価を下げ、赤字を削減することだと述べた。

 「賃金を下げるのではなく、コストを下げる。米国でもっと自動車や半導体を作ろう。もっとインフラを整備し、イノベーションを起こそう。より速く、より安く、より多くの商品を米国内で流通させる。米国で、より速く、より安く、より多くの商品を生産し、米国でより多くの仕事をし、米国でより多くの収入を得ることができるようにする。そして、外国のサプライチェーン(供給網)に依存するのではなく、米国で作ろう」

 バイデン氏の支持率は就任以来最低で、中間選挙を前に有権者はバイデン氏に多くの課題で低い評価をしている。

 バイデン氏は、過去1年間の経済での実績を強調したが、インフレを抑えるためにもっとやるべきことがあることも認め、国民人がまだ彼の経済への対応に懐疑的であることを認めた。

 「パンデミック(新型コロナの世界的大流行)は大きな痛手だった。そして、多くの家庭がぎりぎりの生活を強いられている。食費やガソリン代、住宅費など、さまざまなコストの上昇のせいで、やりくりに苦労している。私はそれを理解している」

 2月27日に発表されたABCニュース/ワシントン・ポストの世論調査では、調査対象者の37%のみが彼の経済政策を支持、58%が不支持であることが分かった。バイデン氏は、海上輸送コストと、高騰する高齢者の介護費用の削減という二つの新しい構想を発表した。しかし、バイデン氏が発表した国内政策の残りの部分は、すでに可決された歳出案や、議会が阻止してきた費用のかかるセーフティーネット構想の焼き直しが主だった。

 他にも党派的な場面があった。バイデン氏は、トランプ時代の減税が 「国民のトップ1%に利益をもたらした」と非難する一方で、自身の「アメリカン・レスキュー・プラン」は働く人々を助け、誰も置き去りにしなかったと自賛し、共和党員から反発を買った。

 共和党は早速、ブーイングの大合唱で再生プランにヤジを飛ばした。一方の民主党は、「ジョー」の呼び掛けでそれをかき消そうとしたが、ほとんど効果はなかった。

 バイデン氏が、ジョー・マンチン上院議員(民主、ウェストバージニア州)に鼻であしらわれたように見えた瞬間があった。彼は下院の議場で、所属政党ではなく、伝統的に共和党が確保してきた側に座ることを選択したのだ。

 「デジグネイテッド・サバイバー」(大統領の代理となりうる人物らが何らかの惨事で行動できなくなった場合に備えて、慣習として、一般教書演説の間、議事堂の外にとどまる閣僚)はジーナ・ライモンド商務長官だった。

 バイデン氏は、気候変動とガソリン価格の上昇の両方に対処するため、クリーンエネルギーの重要性を強くアピール。1兆7500億ドルの経済・気候政策に含まれる優先事項として、クリーンエネルギー事業に対する税額控除などを訴えた。

 バイデン氏は、クリーンエネルギー製造業、温室効果ガス排出量の削減、その他の気候変動対策に注力することで、2035年までに炭素排出ゼロ電力100%を達成することを改めて強調した。共和党は、バイデン氏に対し、石油・ガスの国内生産を強化することで、より迅速にコスト削減に取り組むよう要求している。

 エリーゼ・ステファニク下院共和党会議議長(ニューヨーク州)は、「ジョー・バイデン氏は大統領就任の初日に、キーストーンXLパイプラインを中止し、米国のエネルギー独立に対して戦争を開始した。そればかりかバイデン氏は、昨年ロシアから記録的な量の石油を輸入し、プーチン氏にノルド・ストリーム2パイプラインを贈った」と述べた。

 バイデン氏は1日、ロシアのウクライナ侵攻による供給への影響を緩和するための世界的な取り組みの一環として、エネルギー省に米国の戦略的石油備蓄から3000万バレルを放出するよう命じた。また、上院共和党もこの日、ロシアの石油の米国への輸入を禁止する法案を提出した。

 演説に先立ち、共和党はバイデン氏に対し、ロシアのウクライナ侵攻を防ぐために努力しなかったと非難し、悪質な攻撃にさらされているウクライナの人々を助けるためにもっと努力するよう呼びかけた。彼らは、もっと多くの軍事・医療物資を提供すべきだと述べた。

 共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務(カリフォルニア州)は「彼らは米兵が戦うことを求めてはない。ただ物資が欲しいだけなのだ。そうなれば少なくとも公正な戦いができる」と述べた。

 国内に関してバイデン氏は、全国的な犯罪の急増の中で、地方警察への予算停止を求める進歩的な人々の要求に反対を表明した。議会に対し、警察への予算を増やすよう求めたが、これには政権が犯罪に甘いという共和党の批判をかわす狙いがある。

 バイデン氏は「私たちは皆、同意するはずだ。答えは『警察の予算を削ること』ではない。その答えは、私たちのコミュニティーを守るために必要な資源と訓練を警察に提供することだ」と述べた。

 さらにバイデン氏は、銃規制法案を可決し、いわゆるゴーストガン(製造番号のない自家製銃)を取り締まるよう議会に要請した。

 バイデン氏は、精神衛生の危機と呼ばれる事態に対処することを約束した。3桁の数字の危機管理ホットラインがすでに国内の一部で利用可能で、7月には全国に拡大する予定という。また、2023年度予算で、地域の危機管理センターの人員を確保するために7億ドル近い連邦政府予算を提供することを提案した。バイデン氏はまた、ソーシャルメディア(SNS)の害を研究し、「ソーシャルメディアとメンタルウェルネスに関する国立センター」を立ち上げるために500万ドルを議会に要求した。

 パンデミックが、精神衛生上の問題の増加の原因とされている。90万人以上の国民が新型コロナで死亡したが、変異株オミクロン株は沈静化しつつあり、バイデン氏はパンデミックの収束に向かって態勢を整えているようだ。ホワイトハウスは今週、ホワイトハウスの訪問者や従業員にマスクを義務付けないことを発表した。

 バイデン氏は演説の最後に、毎日約2000人の米国民の命を奪っているパンデミックについて話した。全米の民主党が優勢な州ではマスク義務付けが緩和され、疾病対策センター(CDC)は先週、マスクに関する指導を緩和し、バイデン政権は連邦政府職員を職場に戻す構えだ。

 バイデン氏は「この1年の進歩のおかげで、新型コロナにはもはや私たちの生活を支配する力はない」と述べた。

 バイデン氏は、ペル・グラント(高等教育を受けようとする低所得の学生を支援するための連邦補助金)を最大2000ドル引き上げるよう議会に要請した。また、歴史的黒人大学を支援するために、さらに6500万ドルを要求した。

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