イラン核協議とIRGCのテロ指定解除めぐりバイデン政権に圧力

(2022年4月2日)

2022年3月26日(土)、ポーランド・ワルシャワの王城で演説を行うジョー・バイデン米大統領。バイデン氏は、同盟国間の結束を維持し、ウクライナの防衛支援のため、4日間の欧州歴訪の最終行程としてポーランドに滞在。(AP写真/Petr David Josek)

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Friday, March 25, 2022

 元米政府高官や国家安全保障専門家らは25日、バイデン政権は、イランのエリート軍事組織に対するテロ組織指定を正式に解除することを検討しており、非常に危険だと述べ、2015年のイラン核合意を復活させるために米国がそのような譲歩をすれば、米国民の命はより危険にさらされると警告した。

 イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)を国務省の「外国テロ組織」の公式リストから外すかどうかの議論は、イラン核合意の再建をめぐる交渉の焦点となっている。オバマ政権時に交わされた核合意をめぐって、イラン、米国、ロシア、その他少数の国の担当者がウィーンで交渉を行っている。トランプ大統領は2018年にこの合意から離脱した。

 IRGCは、イラクとシリアで日常的に米軍を標的にしている過激派組織を支援し、数週間前にイラク北部への弾道ミサイル攻撃で犯行を名乗り出たばかりだ。トランプ政権はイランへの制裁を再開して「最大限の圧力」を掛け、IRGCは2019年にテロ組織に指定された。

 非常に困難な交渉の中、アントニー・ブリンケン国務長官は20日、イスラエルを訪れ、ナフタリ・ベネット首相と4人のアラブ諸国訪問団に対し、新たな合意が交わされても、バイデン政権はイランと核開発計画を封じ込めるために引き続き尽力すると約束した。

 AP通信によると、会合ではブリンケン氏に対し、IRGCの地位や、新たな合意によってIRGCが新たな資金と活動場所を得るとみられていることが主な懸念材料であることが伝えられた。

 指定解除に否定的な人々は、IRGCがもはや脅威ではないと宣言することの意味以外に、イランへの経済制裁を解除することが、イランを守る特別な義務を負うイランで最も強力な軍事力にとって、経済的に有利に働くだろうと指摘している。IRGCは、制裁解除で得た資金を使って、ハマスやヒズボラ、イエメンのフーシ派、イラクの反米民兵、その他の過激派組織など、この地域の民兵組織への支援を開始するはずだとみられている。

 国防情報局(DIA)の元長官代理、デビッド・シェッド氏は、イラン人亡命者らからなる反体制派組織「イラン抵抗評議会(NCRI)」が主催するフォーラムで25日、「イラン革命防衛隊は、国力を示す手段としてテロリズムを利用する戦略を担っている」と述べた。

 保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の客員研究員、シェッド氏は、テロ指定を解除すればIRGCの行動が変わると主張するのは、「誰かにDNAを変えさせるのと同じことだ」と主張、「彼らのDNAは、国力を誇示するための手段としてのテロであり、それはイラン国民に向けられ、イランの中にも外にも…世界中に存在する」と述べた。

 バイデン政権は、ウィーンでの核交渉の詳細について口を閉ざしているが、当局者はここ数週間、交渉はゴールに近づいていると述べている。イラン政府関係者は、合意は近く、米国が最終合意を妨げていると主張している。

 米国の交渉担当者は、イランの担当者と直接会うことが許されていない。その代わり、ロシアなどの仲介者に頼っている。米国、ロシア、英国、フランス、ドイツ、中国はP5(国連安保理常任理事国)+1を構成し、2015年に「包括的共同行動計画(JCPOA)」で合意した。この合意は、経済制裁の緩和と引き換えに、イランの核計画を制限するものだ。同じ国々が、合意への復帰を交渉しようとしている。

 トランプ氏が合意から米国を離脱させた直後、国務省はIRGCをテロ組織に指定した。

 トランプ氏は2020年1月、バグダッド空港付近の攻撃を許可し、IRGCのクドス部隊のカセム・ソレイマニ司令官を殺害、これまでと違う強い姿勢を示した。ソレイマニ氏は、イラク駐留米軍を攻撃している現地のシーア派民兵組織との協議のためにイラクを訪れていたと伝えられている。米情報機関は、トランプ氏が攻撃を承認したとき、ソレイマニ氏がさらなる攻撃を計画しているという情報を得ていたとしている。

 殺害は直接の戦争に発展する可能性があった。イランは、ミサイルで反撃し、イラク北部の米軍基地付近に着弾、多数の米軍兵士が脳に損傷を負った。

「承認の印」

 専門家によれば、多くの理由から米国によるIRGCのテロ組織指定は継続すべきであり、IRGCがイラン国外への資金や資産の移動を今後も制限する方法としても有効であるという。

 IRGCのテロ指定を解除することは、IRGCとの直接の取引が容認されたと米政府が考えていることをこの地域に示すことになる。

 マイケル・ミュケイジー元司法長官は25日のNCRIのフォーラムで「テロ指定されることで、一部の企業や人々は、IRGCと公然と取引することをためらうようになる。IRGCをリストから外した場合の影響を考えてみてほしい。それは、事実上、米国がIRGCはテロ組織ではないと言うことになる。IRGCはつまり、米政府から品質保証をもらったのと同じだ」と述べた。

 バイデン大統領は、イランとの外交を再開し、新たな核合意を交わすと約束し、就任した。イランは自国の経済と貿易相手国に対する制裁の撤回を要求しており、IRGCの地位が協議の最後の難関として浮上した。米政権は、イランの核開発を阻止するための制限と国際的監視を回復するには、新たな合意しかないと考えている。

 賛成派はまた、テロ指定は実質的というより象徴的であり、IRGCを抑制するために他の人権や軍に関する制裁は継続されると主張している。2019年のテロ指定は、米政府が初めて外国政府機関にテロ組織の烙印を押したもので、やがて同じ戦術が米軍に対して使われる可能性があると警告する声もある。

 バイデン氏は、会談の詳細が漏れるにつれ、国内外で激しい抵抗にさらされている。

 共和党議員や一部の民主党議員は、政権は現在の形でのイランとの交渉を放棄すべきであり、合意は議会で過半数の支持を得ることはできないだろうと述べている。

 イスラエルの指導者らは、IRGCと、米国とイスラエルがテロ組織とみなす中東全域の他の組織との間に、さまざまなつながりがあることが分かっていると指摘している。

 ベネット氏は先週の声明で、「イラン革命防衛隊はレバノンのヒズボラであり、ガザのイスラム聖戦であり、イエメンのフーシ派であり、イラクの民兵だ。IRGCは、昨年を含め、中東全域で米市民と米軍への攻撃に責任がある。彼らはユダヤ人だからユダヤ人を、キリスト教徒だからキリスト教徒を、そして彼らに従うことを拒否しているとしてイスラム教徒を殺害している」と述べた。

 「IRGCのテロ指定解除の試みは、犠牲者に対する侮辱であり、明白な証拠に裏付けられた確認済みの事実を無視することになる。米国民に危害を加えないという約束と引き換えにIRGCのテロ組織指定が解除されることはあってはならない」

 バイデン政権は、テロ組織としてのIRGCが問題視されていることを認めているようだが、当局者は具体的なことを議論することを避けている。

 国務省のネッド・プライス報道官は先週、IRGCのテロ組織指定と核協議での役割について質問された後、「われわれは残りの問題は解決できると考えている。前にも言ったように、重要な進展があり、合意に近づいているが、まだそこには至っていない。われわれの立場からすると、非常に微妙な段階であるため、正確にはこれらの残された問題の数や性質を具体的に説明することは控える」と述べた。

 米政権は、IRGCのテロ組織指定が解除されたら、IRGCは米国人に対する全ての攻撃をやめると確約すると考えているようだ。外交政策の専門家の中には、JCPOAが施行されたときのイランの行動を見ても、それを信じることは難しいと言う人もいる。

 中央情報局(CIA)の元職員で、長年にわたり米国の外交顧問を務めてきたジョセフ・デトラニ氏はNCRIフォーラムで、「私たちはこのことを忘れてはならないと思う。JCPOAについて話し、その実施について話していたとき、イランはこれで行動を穏やかにするだろうという希望と感触があった」と指摘、イランは「イエメンであれ、イラク、シリア、レバノンであれ、テロ活動や威嚇行動をやめるだろうと期待していた」と述べた。

 「しかし、その通りにはなっていない」

トランプ氏再登板は東南アジア各国に利益

(2024年11月15日)

中国国営メディア、米民主主義を批判 マルクス主義推進の一環か

(2024年11月11日)

賭けに出る北朝鮮 米国の影響力は低下-ギングリッチ元下院議長

(2024年11月06日)

イラン・ロシア、大統領選後の米社会分断を画策か

(2024年10月24日)

中国・イラン、オープンAIのツール利用しサイバー攻撃

(2024年10月21日)

輸入規制に抜け穴、安価な中国製品に健康被害懸念 若い世代が標的に

(2024年10月18日)

宗教の「中国化」推進 イエス像を習主席に差し替え命令

(2024年10月15日)

米軍、インド太平洋にドローンを大量投入へ 中国の攻撃を阻止

(2024年10月05日)

中国で残虐な動物実験 研究所に米が補助金

(2024年09月27日)

台湾の国際機関への加盟妨害は不当 駐米代表が中国を非難

(2024年09月24日)
→その他のニュース