日本政府に求められるセキュリティ・クリアランスの導入

(2022年9月9日)

By Y.Watase – The Washington Times Japan– September 9, 2022

 ロシアによるウクライナ侵攻から半年が経過し、新たに米中による台湾有事の可能性が高まりつつある。リアルな空間における戦闘が注目されている一方、サイバー空間における攻防も激しさを増し続けている。

 ロシアの関与が指摘されるサイバー攻撃及びフェイクニュース流布などは西側諸国を混乱させており、ペロシ訪台時には中国のハッキングとみられる主要駅やコンビニの電光掲示板の障害が発生し同訪台を批判するメッセージが表示された。我々が視認できる大規模なサイバー攻撃だけでなく、現在でも毎日のようにサイバー空間上の大小様々な攻防が行われていることは言うまでもない。

 このような中、日本でも内閣サイバーセキュリティセンターが発足し、日本のサイバーセキュリティ政策に関する基本戦略を立案し、各府省庁等と連携した取り組みを推進されている。また、新設のデジタル庁では、セキュリティの確保に向けて。情報システムに関する整備方針においてサイバーセキュリティについての基本的な方針を示し、その実装を推進するとともに、デジタル庁にセキュリティの専門チームを置き、デジタル庁が整備・運用するシステムを中心に検証・監査を実施することになっている。

 日本にとって台湾有事発生時などの初動時のサイバー攻撃から身を守ることは死活的な利益に関わる問題であり、米中対立が激化する中でサイバーセキュリティは最重要政策だと言えるだろう。

 しかし、日本はサイバーセキュリティの構築以前に、その体制構築の前提となるセキュリティ・クリアランスの管理すらままならない。セキュリティ・クリアランスとは、国家等の秘密にすべき情報を扱う職員に対して、その適格性を確認する制度のことだ。米国などではセキュリティ・クリアランスの整備・運用は当然に行われており、今後日米で連携する際には更に重要性が増す取り組みとなる。

 高市早苗経済安全保障担当相は就任記者会見で「セキュリティ・クリアランスは非常に重要だと考えている。なんとしても盛り込みたいという強い思いだ」と発言し、経済安全保障推進法の改正に意欲を見せたが、日本のレベルはそれ以前に常識的な情報管理のレベルに到達しているかすら怪しいものと思う。

 具体例を挙げると、今回の内閣改造以前の日本政府の人事として、人民解放軍国防七大学に指定されている北京航空航天大学名誉教授の肩書を持って活動してきた山田太郎参議院議員が内閣サイバーセキュリティを担当し、その上でデジタル庁の政務官の任に就いていたことは驚愕すべきことだ。実際、筆者は山田太郎参議院議員が当該職務在任中に中国関連で何らかの問題が存在したとは考えてはいないが、仮に日本政府のセキュリティ・クリアランス制度が存在していたなら、外形的な条件だけで当該役職に就任することは望ましくない人事であったことは明らかだ。(少なくとも米軍は常識的にそのように理解する可能性があり、日米同盟の信頼関係にとって好ましいものとは言えない。)

 政治・経済・社会がグローバル化する中で、個々の日本人が有するバックグラウンド(特に海外との関係)も多種多様な人物を持った人々が増加することは当然のことだ。そのため、従来までのような情報管理体制では、国家として安全保障体制を構築することは困難であろう。

 今後、政権交代などが発生した場合でも、セキュリティ・クリアランスは首尾一貫した外交安全保障政策を実施する上での土台ともなる。日本政府は外交安全保障に関わる人選に対し、早急にセキュリティ・クリアランスを導入するべきであり、政治家として政府入りする人物には徹底した調査を実施することが必要だ。

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