プーチン露大統領の強硬路線の背後に極右民族主義勢力
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Tuesday, February 21, 2023
西側諸国は、ウクライナへの強力な軍事支援、国際世論の力、ロシアへの経済的圧力によって、ウクライナ戦争を停戦させられることを期待したが、ロシアのプーチン大統領に立ちはだかる最も批判的な勢力は、間違いなくもっと身近なところにいる。
ロシアの著名な右派民族主義者たちの多くは、ウクライナ侵攻を最初は支持していたが、ロシア軍のパフォーマンスを厳しく批判するようになった。この1年で彼らの影響力と知名度は上がり、ロシアの将来を左右する存在にまでなり、必要であればプーチン氏を権力の座から追い出す手段を手に入れているかもしれない。
かつては戦争終結への理論的な道と考えられていたロシアの宮殿クーデターが、今では逆の結果をもたらす可能性もある。実際、プーチン氏が今年失脚すれば、より冷酷で軍国主義的な指導者が誕生するかもしれない。それはロシアを北大西洋条約機構(NATO)との全面戦争に引きずり込み、核兵器を解き放つこともいとわない人物である可能性がある。
すべてのアナリストがこの暗い分析に同意しているわけではない。しかし、ロシア国内の右翼勢力は、ソ連崩壊後の比較的短い政治史の中で、前例のない特異な位置を占めていることは明らかだ。彼らはプーチン氏の最も強力な公の支援者であり、戦争を強く支持しているが、紛争を実行するロシアのやり方や彼らが無能とみなす指導体制に対しては、最も辛辣に批判している。
テレグラムなどのソーシャルメディア上では、戦争に対する率直な批判も見られるようになり、ロシア社会の底流にある不満を表している。戦争における軍の最大の失態の数々を最初に明るみに出したのは、批判的なロシア人ブロガーのコミュニティーだった。
この批判によって、プーチン氏は脆弱な立場に置かれた。政治的に生き残るためには、ウクライナでの損害から手を引くという選択肢はあり得ない。
「プーチン氏とってこれは罠(わな)だ。このような集団の中では、勝者でなければならないからだ」。こう指摘したのは、亡命ロシア人ジャーナリストのミハイル・ルービン氏だ。「この人たちはプーチン氏を支持し、プーチン氏はこの人たちに依存している。彼らは勝者としての大統領とだけ一緒にいることができ、敗者としての大統領とは一緒にいることはできない」
「プーチン氏は新しい支持者たちを失望させるわけにはいかない」。ルービン氏はワシントン・タイムズ紙にこう語った。
2014~20年に英国の対外情報機関、秘密情報部(MI6)のトップを務めたアレックス・ヤンガー氏は昨年10月、英BBC放送に対し、プーチン氏は不安定な立場にあると指摘した。
「プーチン氏は、自らが作り出した極めて政治的な有権者に包囲される危険にさらされている」と、ヤンガー氏は述べた。「彼の支持基盤であった排外主義的、民族主義的、そして間違いなくファシズム的な右翼勢力は今、プーチン氏が十分強くやっていないと厳しく非難している」
プーチン氏は戦争から1年を前に、断固たる堂々とした姿勢を示している。同氏は21日、先延ばししていた年次教書演説を行い、ロシアの議員や政府高官、退役軍人らの聴衆に対し、ウクライナとその西側同盟国を侵略者と表現した。
「西側のエリートたちは、ロシアに『戦略的敗北』を与えるという目標を隠そうとしていない」。プーチン氏の不満に満ちたこの演説は、ロシアの全国営テレビ局で放送された。「彼らは地域紛争を世界的な対立に変えようとしている」