トランス選手増加に危機感、自転車競技 国内レースで優勝も

(2023年5月5日)

サイクリストのオースティン・キリップス(中央)は、2023年4月30日にニューメキシコ州シルバーシティで開催された女子レース「ツアー・オブ・ザ・ギラ」で、トランスジェンダー選手として初めて優勝を飾った。(写真提供:スカイウェスト・メディア)

By Valerie Richardson – The Washington Times – Tuesday, May 2, 2023

 女子プロ自転車競技で、男性として生まれたトランスジェンダー選手が増加し、上位に食い込むケースが増えていることから、女性選手らから不満の声が上がっている。

 トッププロ選手のハンナ・アレンスマンさんは、昨年12月に行われた全米シクロクロス選手権で4位になり、24歳で引退を決意した。3位にはトランスジェンダーのオースティン・キリップス選手、5位も同じくトランスジェンダー選手だった。

 アレンスマンさんはワシントン・タイムズ紙に「このような形で終えることはとても残念だ。もしルールを変えて女性のための女性のスポーツにしなければ、次の世代に女性スポーツは存在しない」と悔しさをにじませた。

 2019年に競技を始めた27歳のキリップス選手は、先月末にニューメキシコ州で開催された権威ある女子ロードレース「ツアー・オブ・ザ・ギラ」を制し、数万㌦の賞金を獲得。女子ロードレース「ツール・ド・フランス・ファム」や24年パリ五輪の出場権を得るのではないかとみられている。

 キリップス選手は、大学競泳選手だったトランスジェンダーのリア・トーマス選手とよく比較されるが、大きな違いが少なくとも一つある。トーマス選手は、22年全米大学体育協会(NCAA)選手権に出場した際、唯一の男性からのトランスジェンダー選手だった。だが、キリップス選手には仲間がたくさんいる。

 女性アスリートで構成される権利擁護団体「女性スポーツ独立評議会(ICONS)」によると、現在、女子の有力自転車国際レースで活躍しているトランスジェンダー選手は50人に上る。

 ICONSの共同設立者であるマーシ・スミス氏は、「現時点で男性が女性のカテゴリーに参戦している競技は、自転車が最も多い」と述べた。

 その中には、18年と19年の国際自転車競技連合(UCI)マスターズトラック世界選手権で優勝したレイチェル・マッキノン選手や、21年の東京五輪のBMXフリースタイル米代表の補欠だったチェルシー・ウルフ選手らがいる。

 NCAAディビジョン1の選手だったスミス氏は「女子自転車では毎シーズン、トランスジェンダー選手が増えている。賞金額が男子の賞金額に匹敵するようになり、ますます多くの男性選手が、脚光を浴びる瞬間を求めて女性の表彰台に立つようになっている」と述べた。

 キリップス選手のようなトランスジェンダーの自転車選手が競泳のトーマスさんのように有名にならないのは、自転車競技が長い間、米国で人気スポーツではなかったからだろう。しかし、女子の自転車競技にトランスジェンダー選手が増えるにつれて、反発も強まっている。

 自転車競技の国際統括団体であるUCIは昨年、トランスジェンダー選手のテストステロン制限値を1リットル当たり5から2・5ナノモルに引き下げ、反発を鎮めようとした。また、テストステロンの抑制期間も12カ月から24カ月に引き上げられた。

 だが、男女別スポーツの擁護者は、テストステロンだけでは、男性アスリートの筋肉量、優れた酸素運搬能力、長く大きな骨といった利点を補うには十分ではないと主張している。

 アレンスマンさんは、女性選手らはスポンサーを失ったり、ソーシャルメディアで反発を招いたりすることを恐れて、公に発言することを控えていると指摘。「この件に関して非常に動揺している選手はたくさんいる。ただ一つ言えるのは、声を上げたらどうなるのかが怖くて、何も言えないということだ」と窮状を訴えた。

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