ミリー統参議長、ウクライナ支援による兵器不足懸念を否定
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Tuesday, August 8, 2023
マーク・ミリー米統合参謀本部議長はワシントン・タイムズ紙の独占インタビューで、ウクライナへの武器供与が続いているが、米国の武器備蓄量は「許容可能な危険レベル」を下回ることはないと述べ、ロシアの侵攻を受けたウクライナに大量の軍事支援を送ることで、米国が自国を危険にさらしているのではないかという見方を否定した。
ミリー氏は、国防総省幹部らは、手元にある兵器の量を監視しており、それが許容できる最低量を下回ることはないと述べた。ロシア軍に対する勝利の見込みや、バイデン政権がどの時点でウクライナを和平交渉に向けて後押しするかなどをめぐって、政界や国家安全保障専門家の間でウクライナに関する議論が高まっている。
1年半に及ぶ戦争を受けて、米国の軍需品の備蓄は減少している。米国の国防産業基盤全体で疲弊が進み、需要を満たすことができなくなっていると警告する声も多い。一部の国家安全保障アナリストは、現在の不足分と、予期せぬ紛争に備えて軍需品を迅速に補充する能力について警鐘を鳴らしている。
ミリー氏は、国防総省は防衛産業と緊密に協力し、可能な限り迅速に物資を補充していると述べた。また、ウクライナへの援助のレベルは、米国の国家安全保障を脅かすものではなく、今後も脅かすことはないと述べた。
「ロイド・オースティン国防長官と大統領のために、毎日、監視し、毎日、報告している」
ミリー氏は、「(オースティン国防長官は)『どのようなカテゴリーの軍需品であれ、許容できるリスクのレベルを下回ってはならない』と指示している。詳細は話さないが、非常に注意深く監視している。だから、弾薬の備蓄などが原因で、米国の国家安全保障上の必要性や戦闘活動に従事する能力を危険にさらすことはない。そのようなリスクを冒すつもりはない」と述べた。
米国から膨大な量の武器が供与され、その量はNATO同盟国を凌駕している。国防総省は今週、これまでに2000基以上の地対空ミサイル「スティンガー」、1万基以上の対戦車ミサイル「ジャベリン」、200万発以上の155ミリ榴弾砲を供与したと発表した。
ダグラス・ブッシュ陸軍次官補(取得・兵站・技術担当)によると、米国防産業は月産2万4000発のペースで砲弾を生産しており、ウクライナ支援の増強に伴い、来年には月産8万発を超える見込みだという。
ウクライナ侵攻に関する幅広い会話の中でミリー氏は、ウクライナがドンバス地方で塹壕にこもるロシア軍を撃退しているという「目の覚めるような」公式評価にもかかわらず、ウクライナの2カ月に及ぶ反攻について結論を出すのは時期尚早だと強調。ウクライナの進撃状況について「見えない部分が多い」と認めている。
ウクライナの反攻と、広い範囲に広がる戦闘を続けられるかどうかは、米国の火砲、対空システム、ミサイル防衛システムの供与など欧米からの支援にかかっている。2022年2月の開戦以来、米国はウクライナに410億㌦以上のシステム、武器、装備、その他の軍事援助を与えている。
バイデン政権の最近の戦略的決定の一部は、軍需品不足、あるいは不足の懸念に影響を受けたのではないかと見えるものもある。
クラスター爆弾の供与は、民間人が犠牲となる危険性がはるかに高いと強い反発を招いた。バイデン大統領はCNNのインタビューで、ウクライナも米国も主要な155㍉砲弾が不足しているため、クラスター弾が唯一の選択肢であることを示唆した。
バイデン氏は防弾について「不足している」と述べ、米国の備蓄が枯渇しつつあることを公式に認めた。具体的な数字は機密扱いのままだ。
存続を左右する戦い
ミリー氏は、米国の支援は帳簿上の数字だけではなく、もっと広い範囲に及んでいると強調した。
「国防長官や大統領、そして議会が、(軍需品の)レベルについて常に情報を得ていることを確認し、補充するために産業界と協力することがわれわれの仕事だ。同時に、ウクライナが自国防衛を成功させるために必要なものを持っていることを確認する必要がある。ウクライナの問題は、ウクライナだけにとどまらない。ウクライナにとって、これは存亡をかけた戦いだ。ロシアはウクライナを制圧しようとしている。…だから、ウクライナにとっては存亡をかけた戦いになっている。しかし、欧州にとっても、米国にとっても、世界の他の国々にとっても、それはもっと大きな問題だ」
「大国が自国の欲求を満たすために軍事力を行使して国境を恣意的に変更することを防ぐために、第2次世界大戦の終わりに米国が一連のルールを導入した」
非常に大きな問題だが、最近のデータによると、米国民はウクライナへの多額の援助に反感を抱いているようだ。ピュー・リサーチが6月に実施した調査によると、ウクライナへの援助が「多すぎる」と答えた米国民は28%で、プーチン氏が侵攻を開始した3カ月後の2022年5月の12%から上昇した。
この変化は主に共和党支持者によるもので、44%の共和党員が米国は援助し過ぎだと答えている。2022年5月には17%だった。米国が援助し過ぎていると答えた民主党支持者は、同じ期間に8%から14%に増加した。
共和党の有力議員らは、ウクライナが明確な勝利を収めることができるかどうかは疑わしいとして、米国の巨額の援助に疑問を投げかけている。
マイク・リー上院議員(ユタ州)、ランド・ポール上院議員(ケンタッキー州)ら19人の共和党議員は、今年バイデン氏に宛てた書簡で、「補充に何年もかかる物資を、ウクライナは数週間で使い果たしている。米国がウクライナの人々を支援する適切な方法はあるが、終わりのない戦争を支援するための無制限の武器供給はその一つではない。この紛争を解決に導くために緊急に必要とされている交渉を推進することこそが、米国とウクライナの人々の国益となる」と述べた。
米国とウクライナは、終わりのない戦争よりも和平交渉を優先させるべきだという考え方は、特にウクライナの反攻が明確で注目されるような進展を見せなかった場合、今年いっぱいはさらに支持を集める可能性がある。
ミリー氏は、ウクライナ軍が地雷原を通過し、最終的にはロシア軍が数カ月かけて固めた防衛線を突き破ろうとし、厳しい状況に直面していることを認めながらも、反攻が成功するかどうかを結論づけるのは時期尚早だと述べた。
「彼らは自分たちの領土で戦っているが、攻撃的な機動戦を実行している。そして、非常に危険な高密度の地雷原を通過している」
「見えない部分が多く、恐怖があり、血が流れ、暴力がある。そして、この槍の尖端では、ロシア軍とウクライナ軍が双方、非常に大きな犠牲を払いながら、非常に激しい通常戦を行っている。そしてそれは終わっていない。そして、一方的に勝利や敗北を言うのは時期尚早だと思う。まだ終わっていない」