トランプ氏再登板は東南アジア各国に利益
By Richard S. Ehrlich – Special to The Washington Times – Monday, November 11, 2024
ドナルド・トランプ前大統領の再登板が決まり、従来の同盟国や国際機関、同氏の「アメリカ・ファースト」外交政策に挑もうとする国々は不安にかられ、現状の見直しを迫られ、眠れない夜を過ごしている。
だが、トランプ氏の勝利は、米国と中国の覇権争いに巻き込まれた東南アジアの権威主義国家、ミャンマー、ラオス、カンボジアという3カ国の指導者らの緊張を解くことになるかもしれない。
トランプ氏は安全保障、経済の将来性、国益に改めて重点を置くと予想されている。
タイのカンタティ・スパモンコン元外相はインタビューで、「トランプ氏は最初の任期中、民主主義や人権の促進に関心を示さなかった」と指摘し、「この傾向は今後も続くと予想される」と述べた。
さらにカンタティ氏は、「人権や民主主義の問題を抱える東南アジアの政府は、この点に関して圧力をほとんど、あるいは全く感じないだろう」と語った。
こうした国々の指導者らは、公正な選挙、言論の自由、その他市民の自由の欠如をたびたび強調してきた米民主党政権時代に比べ、米政府からは今後、はるかに穏やかな対応を期待できるだろう。
それ以外にも、アジアの指導者らは外交上の行動やスタイルを調整して、トランプ次期大統領のしばしば突飛な発言に対応し、その大言壮語の先にあるものに備えようとしているようだ。トランプ氏を味方につけることは、外交上の最大の責務なのである。
カンタティ氏は「(トランプ氏の)独裁的なリーダーシップスタイルのもとでは、同氏との個人的な関係の重要性が高まる」と強調し、「トランプ氏を褒めるスキルを持つ指導者は恩恵を受けるだろう。魅力をアピールするスキルが重要になってくる」と述べた。また、この地域の多くの人々はトランプ氏のより取引的な外交政策へのアプローチを歓迎しており、カンタティ氏は米国との貿易均衡に向けて取り組む決意が好意的に受け止められるだろうと語った。
世界の企業や投資家市場はトランプ氏の復帰について懸念しているが、アナリストらは米中の貿易戦争はタイ、カンボジア、ベトナムなどの新興国に利益をもたらす可能性があると指摘している。
野心的で低賃金の東南アジア諸国は、トランプ次期大統領が中国製品に厳しい輸入関税を課した場合、中国に取って代わり、特に関税が課せられる自動車や電子機器を含む製品を米国に輸出することを望んでいる。
第1次トランプ政権の任期中、米中間の貿易関係は冷え込んでいたため、企業は「中国製」の製品やサービスに対する関税や割当などの金融障壁を回避するため、中国のオフィスや事業所を東南アジアへ移転した。
カンボジア・プノンペンを拠点とするクメール・タイムズ・オンライン紙は今週、「米国の次期大統領ドナルド・トランプ氏が中国製品への関税を大幅に引き上げるという脅しを実行に移せば、カンボジアは大きな勝利を収める可能性がある」とし、「米国企業はすでに、代替品の供給源を求めて中国からカンボジアへ生産拠点を移す計画を立てている」と報じた。
カンボジア商工会議所のリム・ヘン副会長は同紙に対し、「中国企業はこれを恐れて、カンボジアにさらなる投資を行うだろう。中国企業や地域企業がカンボジアにやって来て投資し、米国や欧州などへ輸出するだろう」と語った。
カンボジアの衣料品や電化製品、原材料、旅行用品の輸出は、米国の中国に対する関税引き上げの恩恵を受ける可能性がある。