韓国の弾劾劇揺るがす謎の疑惑と隠蔽工作
By Andrew Salmon – The Washington Times – Tuesday, December 24, 2024
【ソウル】狂気じみた陰謀論のように聞こえるかもしれないが、韓国では、安全保障が常にメディアの見出しを飾る一方で、この21世紀の都市で、迷信的な慣習が至る所で見られる。真実は小説よりも奇なりである。
その一例を挙げる。警察によれば、12月3日に尹錫悦大統領が戒厳令を発令した際、国家安全保障の危機を演出するために国境で秘密工作が行われた証拠を発見したという。検察はまた、シャーマンが最高レベルの政策決定に関与していた可能性があるとしている。
これらの出来事によって、韓国政界での陰謀論はさらに深まり、その一方で尹氏への弾劾が可決され、政治生命が絶たれるかどうかの瀬戸際にある。韓国は今、一つの危機から抜け出そうとしているが、それは、これらのストーリーのうちの一つにすぎない。米国などでは、東アジアで特に繁栄した民主主義国家の一つ、韓国の安定性について、不安視する声が高まっている。
安全保障上の敵である北朝鮮が国内政治に影響を与えるために利用されたのは、これが初めてではないだろう。韓国の工作員は、1997年に非武装地帯でそのような目的で事件を企てたとして投獄されている。
尹氏は人前に、手のひらに神秘的な意味を持つ文字を書いて現れ、さらにシャーマンの助言によって2022年に大統領官邸を移転させたと非難されている。シャーマニズムは韓国文化に深く根ざしているが、現代では偏見の目で見られている。
尹氏には、国境警備と霊的助言を巡る疑惑がつきまとい、反国家勢力の存在と国会による妨害を理由に戒厳令を宣言した。
国会議員らは尹氏の宣言を3時間以内に取り消し、11日後に弾劾を可決した。
尹氏の運命は憲法裁判所の判断に委ねられている。その一方で、警察、検察、調査報道機関は、尹氏の動機と意思決定過程の詳細を把握しようと必死だ。
政治的策略としての北朝鮮危機
野党議員らによれば、謀略家らは尹氏の戒厳令を正当化するために安全保障上の危機を引き起こそうとしたという。その主張を裏付ける証拠もあるようだ。
拘束されたノ・サンウォン元国防情報局長は暴動罪で検察に送致された。彼は軍退役後、ソウルの南、水原で占い業を営んでいた。
ノ容疑者は、地方の著名シャーマンに尹氏の将来を相談したとされ、昨年12月にハンバーガーフランチャイズのロッテリア(台湾の記者に「マーシャル・ロー(戒厳令)テリア」と呼ばれた)で開いた会合で、部隊に戒厳令の目標と戦術について助言した罪に問われている。
ノ容疑者の自宅を家宅捜索した警察は、戒厳令と「北方限界線(NLL)で北朝鮮の挑発を誘発せよ」という文言が複数記載されたノートを発見したという。
NLLは紛争中の朝鮮半島の沿岸境界線に当たる。1990年代と2000年代には、哨戒艇の衝突、韓国軍艦艇の沈没、韓国の島への砲撃が起こった。
ノ容疑者が謀ったとされる事件には前例がある。
1997年の大統領選挙の前、韓国の工作員が北京で北朝鮮の高官と密会した。これは「北風作戦」として知られている。
彼らは北朝鮮政府を買収して安全保障上の危機を引き起こし、韓国の保守派に利益をもたらそうと考えていた。
この計画は発覚し、首謀者は拘束された。そのうちの一人、元情報部長は後に自殺を図った。リベラル派の金大中氏が1997年の大統領選で勝利した。
韓国のある退役大佐はこの事件について「むかつく政治家の猿芝居だ」と語った。
神秘的な政策決定の疑惑
ノ容疑者は、シャーマンとつながりがあり、尹大統領とのつながりが証明された初めての人物である可能性がある。
裁判官は、汚職の証拠が不十分だとして、シャーマンの逮捕状を求める検察の要求を却下した。このシャーマンは、尹氏の2022年の大統領選挙キャンペーンに関係していたと言われている。
神秘主義者が政策に影響を及ぼしているといううわさは以前からあった。
尹氏は選挙期間中、手のひらをカメラに向け、「王」という漢字を見せた。これは、迷信的なものに頼る傾向があるのではないかと懸念を呼び起こした。
尹氏の最初の大きな決断は、大統領府と官邸を、青い屋根にちなんで名づけられた青瓦台から、国防省に隣接するビジネスオフィスに移すことだった。
青瓦台は14世紀に建てられたソウルの宮殿の裏手にあり、風水的にも優れている。
だが、青瓦台は星回りが悪いと考える人もいる。尹氏はこの建物を「帝国的」と呼んだ。青瓦台は、植民地時代の日本の総督邸の跡地に建っている。
青瓦台を支配した韓国の歴代大統領には、亡命、暗殺、投獄、自殺などの悲劇が降りかかってきた。
尹氏は2022年、記者会見で、移転の背景に風水があったことを否定したが、党の顧問はこれを否定した。
批評家らは、尹氏の妻で、株価操作、選挙妨害、政治への影響力が批判されている金建希氏を崔順実氏になぞらえている。
崔氏は保守派の朴槿恵元大統領の腹心だった。宗教を創設した父を持ち、シャーマニズムとつながりがあると考えられていた。
2017年、朴氏は弾劾され、崔氏は刑務所に収監された。
野党指導者の文在寅氏は、尹氏を取り巻く2022年のうわさを非難し、「21世紀の現代社会では…シャーマンが意思決定に影響を及ぼすことは絶対に許されない」と主張した。
2024年の調査によると、韓国人の52%が無宗教で、32%がキリスト教徒、17%が仏教徒である。その他のスピリチュアルな活動を公言しているのはわずか1%だ。
シャーマンは、予言、悪魔払い、その他の儀式で莫大な報酬を得ることができる。公式なデータは存在しないが、シャーマンが数万ドルを集めることはよく知られている。
都市、町、韓国のサイバースペースには、出生日時、出生名、人相、タロットカードに基づく占いを提供する占い師のビジネスが点在している。
韓国の政治家が仏教徒やキリスト教徒であることを公言することはよくあり、これらの宗教の指導者に会っても論争になることはないが、主流以外の神秘主義的な行動は偏見に直面する。
韓国の民間伝承の専門家であり作家でもあるジョアン・リー氏は、「キリスト教や仏教の信者だと言っても、問題にはならない」と言う。
リー氏によると、シャーマニズムと占いは「あまり受け入れられていない」が、「それは本当に文化の奥深くにあり、それを生業とする人々はたくさんいる」。
1910年に滅亡した韓国最後の王朝は、宋明理学を支持してシャーマニズムを弾圧した。リー氏は新聞の星占いを読むことを認め、神秘的な行動に対する否定的な感情は1910~1945年の日本による韓国併合までさかのぼると指摘した。
「日本人は既存の民間伝承や伝統を、悪いもの、無教養なもの、無知なもの、貧しいものと分類した。それは非理性的として排除されるべきだった。ここから始まった」