リーダー不在で分裂する民主党 ハリス氏は結束呼び掛け

(2025年5月6日)

2025年4月30日(水)、サンフランシスコで開催されたエマージ20周年記念ガラで基調講演を行うカマラ・ハリス前副大統領。(AP Photo/Godofredo A. Vasquez)

By Susan Ferrechio – The Washington Times – Sunday, May 4, 2025

 カマラ・ハリス前副大統領は、有権者からホワイトハウスを追放されて以来初の主要演説を行い、トランプ大統領との政治的戦いを地震の際に身を寄せ合う象の群れに例え、民主党議員を鼓舞した。

 ハリス氏はサンフランシスコで民主党支持者らで満席となった会場で、「私たちが散り散りになることはない。団結し、リーダーとなり、浮上する」と述べた。

 だが実際は、トランプ氏の政策と、ハリス氏の選挙敗北後の民主党指導部の空白が党を分裂させている。

 誰が党をリードするかを巡る党内抗争があらわになり、議員らの党の方向性を巡る駆け引きが続いている。世論調査では民主党の支持率が急落しており、共和党はこれをもとに、民主党支持層がかつてないほどの不満を党に対して持っていると訴えている。

 マイク・ジョンソン下院議長(共和党、ルイジアナ州)は「彼らにはメッセージがない。明確なリーダーがいない。明確なビジョンもない。綱領は否定され、自分自身に反旗を翻している」と述べた。

 有権者を取り戻すためにどう行動すべきかを巡る民主党の議論は、激化している。

 民主党全国委員会(DNC)の指導者らは、超リベラル派のデビッド・ホッグ副委員長を追い落とそうとしている。ホッグ氏は、2000万ドルを投じて「高齢」で「非効率的」な現職議員を予備選挙で落選させようとしている。

 25歳のホッグ氏は、若い有権者がハリス氏や他の民主党議員を見捨てたことを示す11月の選挙結果を引き合いに出し、高齢化した現職議員を、党を再建できる「世代のリーダーら」に交代させる時だと述べた。

 ケン・マーティン委員長(51)は、ホッグ氏を民主党指導部から排除しようとしている。現職の民主党議員を標的にするつもりなら、ホッグ氏は組織から去るべきだと述べた。

 マーティン氏はFOXニュースに「DNCの職員が、現職議員や対抗馬らの予備選挙の結果に影響を与えようとしてはならない」と語った。

 党内抗争が議会内を駆け巡っている。前下院議長のナンシー・ペロシ議員の元最高補佐官は、ハキーム・ジェフリーズ院内総務(54)が率いる党の下院指導部はもたもたするばかりで、敗北した党の舵取りについて85歳のペロシ氏の助言を聞こうとしないと不満を漏らした。

 ジェフリーズ陣営は、数十年にわたるペロシ時代からの脱却を望んでいるが、ペロシ氏の元側近はこれについてポリティコに「史上最も愚かなことだと思う」と語った。

 民主党は、ギャングとつながりのある不法移民の強制送還を含むトランプ氏の政策にどう対応するかで党内が分裂し、議員らは議会のあちこちで冒涜的な言葉を吐いている。

 極左4人組「スクワッド」の一人イルハン・オマル下院議員は、ギャング組織「MS13」とされ、強制送還された不法移民キルマール・アブレゴ・ガルシアさんを訪ねるためにエルサルバドルに行くことが賢明かどうか尋ねられた際、記者に「失せろ」と言った。民主党は、アブレゴ・ガルシアさんをトランプ氏の移民政策の犠牲者として擁護してきた。

 世論調査によると、不法移民をなくすためのトランプ氏の積極的なアプローチ、特にギャングメンバーの強制送還は有権者に人気があるため、この微妙な問題を巡って民主党下院議員らは分裂している。

 4人の民主党下院議員がアブレゴ・ガルシアさんを解放するためにエルサルバドルへ向かったが、その際、ガルシアさんが妻から家庭内暴力で訴えられ、妻を殺して、逃げると脅していたことが明らかになった。

 ニューヨーク選出のジェフリーズ氏は、議員らがアブレゴ・ガルシアさんを訪ねるための追加視察を水面下で止めている。

 ジェフリーズ氏は先週、大統領を追い落とそうとする支持層の声にもかかわらず、2期目のトランプ氏を弾劾しようとする民主党の最初の動きを封じるために再び介入した。

 ジェフリーズ氏が不支持を表明した後、民主党の共同提案者らは、ミシガン州のシュリ・タネダー議員が提出した弾劾訴追案の支持をすぐに取り下げた。

 トランプ氏は民主党議員らを「狂人」「完全に狂っている

」と呼んでおり、弾劾訴追はトランプ氏に新たな武器を持たせることになる。また、弾劾への民主党の新たな取り組みについては、アイデアが尽きた分裂した党によるもので、古くさく飽き飽きしていると述べている。

 トランプ氏はミシガン州での集会で「党としての自信はもうない。候補者もいない」と述べ、ホワイトハウスに復帰してからの100日間の成果を誇示した。

 サウスカロライナ州の民主党戦略家アントジュアン・シーライト氏は、民主党は「もっと団結できるはずだ」としながらも、一部の人々が主張するほど極端に分裂しているわけではないと述べた。

 「意見の相違を分裂とは言わない。意見の一致するところでは叫び、意見の異なるところではささやく。私たちが成功したいのであれば、それが私たちの進むべき道だと思いう」

 一方、党内の極左勢力は、このメッセージの空白を埋めようと動き出している。

 民主社会主義者を自認するバーナード・サンダース上院議員(バーモント州)と、下院進歩的議員連盟のトップ、プラミラ・ジャヤパル下院議員は、民主党議員らにポピュリズムでリベラルな政策を受け入れるよう呼びかけた。

 シアトルの選挙区選出のジャヤパル氏はネーション誌に、「民主党はプロセスやルールについて右往左往するのをやめるべきだ。私たちは、この不正なシステムを覆し、生活賃金、手頃な価格の住宅、国民皆保険、社会保障の拡大といった約束を果たすために必要なことを明確にしなければならない。団結権を拡大し、国内の製造業に投資することで、組織労働者の基盤強化に実際に投資する必要がある」と書いた。

 こういった不満は、政策や歳出政策にあまりリベラルではないアプローチを取っている民主党指導者に対する反発をもたらす可能性がある。

 スクワッドの創設メンバーであり、サンダース氏に近いアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員は3月、支持者を率いて、同じニューヨーク出身のチャールズ・シューマー上院院内総務による共和党が作成した政府歳出法案の通過を支援するという決定に抗議した。

 カリフォルニア州知事への出馬、大統領選への再出馬を検討しているハリス氏は、党の左翼にも目を向けている。サンフランシスコでの演説で、彼女はサンダース氏とオカシオコルテス氏にエールを送った。

 オカシオコルテス氏 (35) は現在、模擬予備選でシューマー氏 (74) を19ポイント上回っており、上院の守旧派の民主党指導部を打倒する可能性がある。

 その一方で、現職との予備選を好まない下院民主党指導部は、オカシオコルテス氏が注目している有力な下院監視・政府改革委員会のリーダーの席を埋めるのを拒否している。

 下院民主党幹部会のピート・アギラー委員長 (カリフォルニア州) は「監視委員会に欠員はない。それが私たちの立場だ」と述べた。

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