中国、生成AI利用し共産主義体制を強化、批判を抑圧

(2025年10月21日)

2025年8月4日(月)、シカゴでコンピューター画面に表示されたChat GPTのランディングページ。(AP Photo/Kiichiro Sato)

By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, October 16, 2025

 生成AI(人工知能)チャットGPTを運用するオープンAIの最新報告によると、中国政府関連組織がチャットGPTを利用して独裁的な共産主義体制を強化、保護しているという。

 報告書は、中国が共産主義イデオロギーを組み込んだAIの開発で「実質的な進展」を遂げており、中国政府に関連する多くのアカウントがチャットGPTを不正利用したとしてブロックされたと指摘している。

 中国当局は全てのAIに対し「社会主義中核的価値観」の推進を義務付けている。これは事実上、共産主義を指す。

 オープンAIによれば、2024年2月に脅威インテリジェンス報告を初めて公開して以降、チャットGPT上での利用規約違反により40以上のネットワークが遮断された。

 無力化された脅威には、中国政府関係者、マルウエア(悪意あるソフト)作成にチャットGPTを利用したロシア人ハッカー、北朝鮮ハッカーによるとみられる反韓国活動などがある。

 報告書は「これには、独裁政権による国民統制や他国への威嚇、詐欺、悪意あるサイバー活動、秘密工作などの悪用防止も含まれる」と指摘している。

 サンフランシスコを拠点とするオープンAIは今年初め、ホワイトハウス科学技術政策局に、「民主的なAI」の構築に取り組んでいると通告。「常識ルール」を用いて人々を危害から守り、可能な限り多くの人々に利益をもたらすことを目指していると明らかにした。

 民主的なAIについて報告書は、「米国が常に掲げてきた民主主義の原則によって形作られるAI」と説明。「これには、権威主義体制が権力を集積し市民を支配するためにAIツールを利用することを防ぐことも含まれる」と規定している。

 チャットGPTは、ユーザーのプロンプト(質問)に応じてテキスト、音声、画像を生成できる生成AIアプリケーションだ。

 X(旧ツイッター)やフェイスブックなどのSNSからは、数千もの中国の自動化されたプロパガンダ・情報ボットが削除された。

 しかしオープンAIが脅威インテリジェンス報告を始めるまで、中国による生成AI利用の試みについて報告したハイテク企業はほとんどなかった。

 チャットGPTは2022年にデビューし、現在のAIブームに大きな役割を果たしたと評価されている。同社によるとユーザーは1億人以上に上る。

 オープンAIにこの報告書に関するコメントを求めたが、回答は得られなかった。

 マイクロソフトのコパイロット、グーグルのジェミニ、xAIのグロックなどの主要チャットボットも不適切な使用に直面している。

 37ページに及ぶオープンAIのインテリジェンス報告書「AIの悪用を阻止する 2025年10月」は10月7日に公開された。

 中国政府の利用に関して報告書は、中国共産党系組織がチャットGPTをオンライン/オフライン通信の大規模監視に悪用しようとしたと指摘した。

 その他の悪用例として、中国共産党関連対象の詳細なプロファイリング目的でのチャットボット利用が挙げられ、関連アカウントは凍結されたと報告書は指摘している。

 「中国政府機関との関連が明らかな個人によるチャットGPTアカウントの遮断は、この権威主義体制下におけるAI利用の実態を浮き彫りにしている」

 凍結されたアカウントの一部は、欧米の情報源や中国SNSから収集したデータセットを分析し、大規模監視にチャットGPTを利用しようとしていたという。

 ある事例では、チャットボットを用いてAI搭載型SNS監視ツールを設計しようとしており、運営者は中国治安機関向けと説明していた。

 チャットGPTにはツール設計や宣伝資料作成が依頼されたが、実際の監視実施には至っていない。

 中国人とみられる凍結処分を受けたユーザーは、VPN(仮想プライベートネットワーク)を利用して中国国内からチャットGPTサービスにアクセスし、中国政府クライアント向けのSNS監視ツール設計を行っていた。

 このツールはSNS「プローブ」と称され、ツイッター/X、フェイスブック、インスタグラム、レディット、TikTok(ティックトック)、ユーチューブをスキャンし、中国政府が「過激派発言及び民族・宗教・政治的コンテンツ」とみなす情報を検知する機能を持つと説明されている。

 別の使用停止処分を受けたユーザー(こちらも中国政府機関との関連が疑われる)は、チャットGPTに対し「高リスクウイグル関連流入警告モデル」と称する文書の作成への支援を求めていた。

 米国務省は2021年、中国政府が西部新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル族に対するジェノサイド(集団殺害)を行っていると宣言した。同地域では100万人以上のウイグル族が収容されている。

 中国はジェノサイドの非難を否定している。

 オープンAIの報告書によると、中国当局はチャットGPTに対し、交通機関の予約情報を分析し警察記録と照合して標的とされたウイグル族の移動を検知するソフトウエアの開発を命じたという。

 このユーザーはツールの構築ではなく提案書の作成を指示しており、これはソフトウエア監視が不正使用と判断するのを回避するためとみられる。

 オープンAIは、調査官が中国政府関係者がチャットGPTを「より特注的で標的を絞ったプロファイリングやオンライン調査」に利用していることを検知し、同ユーザーも使用禁止処分にしたことを明らかにしている。

 ある事例では、中国政府関係者と疑われるユーザーが、中国政府を批判するXアカウントの資金源を特定するためにチャットボットを利用しようとした。

 別の事例では、中国北部に位置するモンゴルである嘆願を組織した人物の特定をチャットGPTに依頼した。

 中国からの第3の事例では、チャットボットを用いて中国関連の速報ニュース(1989年6月の天安門事件記念日や亡命チベット仏教指導者ダライ・ラマの誕生日など中国で検閲される敏感な話題を含む)を特定、要約していた。

 その他の悪用事例として、ロシア人がチャットGPTを利用して悪意のあるソフトウエアツールを開発しようとした兆候が確認されたため、アカウントがブロックされたと報告書は述べた。

 オープンAIは報告書発表にあたり「脅威アクターがAIを従来の攻撃手法に組み込み、スピードアップを図っている事例は引き続き確認されているが、当社のモデルから新たな攻撃能力を獲得しているわけではない」と説明した。

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