中国「戦狼外交」復活か 高市首相、台湾副総統の発言に反発

台湾の蕭美琴副総統が2025年11月7日金曜日、ブリュッセルの欧州議会で開催されたイベントで演説する。(AP通信/バージニア・メイヨー撮影)
By Andrew Salmon – The Washington Times – Wednesday, November 12, 2025
【ソウル(韓国)】台湾問題が今週、二つの大陸で外交問題として改めて浮上した。台湾領有に固執する中国は、台湾政府高官が7日にブリュッセルで突然行った演説と、同日に東京で日本の新首相が台湾防衛について率直に発言したことに激怒している。
トランプ政権はこれについてコメントしておらず、米国が台湾とその同盟国に暗黙の支持を示しているのではないかという臆測を呼んでいる。一方、中国はかつて放棄した「戦狼」外交というレトリックを復活させる形で応酬した。
台湾の蕭美琴副総統が欧州連合(EU)欧州議会で演説したことを受け、中国は抗議を申し入れた。中国当局者は蕭氏を「分離主義者」と非難した。
中国は台湾を「離反した省」と位置付け、いずれ本土と再統一されるべきだと主張。武力行使も排除していない。独裁体制の中国は、経済力を効果的に活用し、世界各国に台湾を承認しないよう働きかけてきた。
蕭氏の演説は当初、ビデオ演説とされていたが、実際には、自身が登壇し、「europarl.eu」と書かれた横断幕を背景に、「対中政策に関する列国議会連盟」(IPAC)の代表らを前に演説した。
IPACによれば、「欧州議会で台湾政府高官が演説するのは初めて」。
蕭氏はIPACの代表らに「欧州は砲火の下で自由を守り抜いた。そして台湾は圧力の下で民主主義を守り抜いた。この会議は欧州だけのフォーラムではない。世界的に影響を及ぼす瞬間だ」と語った。
厳密に言うと、蕭氏の演説は欧州議会に向けたものではなかった。IPACは欧州だけでなく英国、カナダ、日本、インド、米国、台湾など民主主義諸国の議員を結束させる利益団体だからだ。
ウェブサイトによればIPACは「中国共産党は、国内ではますます権威主義的になり、国外ではますます強硬になっている」と考え、議員らに対し、中国に説明責任を求めるよう呼び掛けている。
EUは、蕭氏のIPACへの演説は公式のものではなく、問題はないと主張している。
蕭氏に同行した台湾の林佳龍外相は、この演説を「台湾外交の歴史的一歩であり、台湾とEUの関係の新たな段階」と主張した。蕭氏の演説は先週ブリュッセルで開催されたIPAC第5回年次サミットの目玉となった。
その後、台湾の賴清徳総統は自ら蕭氏をブリュッセルに派遣したことを明らかにした。シンガポール在住の中国ウオッチャー、アレックス・ニール氏は蕭氏を「雄弁で魅力的」と評した。
中国は頼氏の与党・民進党を激しく非難した。
国営メディア「環球時報」によると、中国国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は「民進党当局が(IPACと)結託して茶番を演じた。笑いものなり、恥をかくだけだ」と述べた。
地球の反対側では、日本の高市早苗新首相が国会で、議員の質問に対し、「戦艦を使い、武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になり得るケースであると私は考える」と答弁した。
2015年の平和憲法「解釈の変更」によって、国家存亡の危機に直面した場合、日本は「集団的自衛権」を行使できるとされた。
中国は親台湾と見なされている高市氏の発言に強く反発した。
中国の薛剣駐大阪総領事はX(旧ツイッター)で高市氏の発言に言及し「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか」と投稿した。
日本政府はこの投稿を「極めて不適切」と非難、広く知られることになり、その後削除された。しかし中国による薛氏への懲戒はなかった。
環球時報は10日、中国外務省の林剣副報道局長の発言を引用し、高市氏の立場は「これまでの日本政府の政治的約束と著しく矛盾し、その性質と影響の両面で甚だしい」とした上で、「中国はこれを遺憾に思い、日本に対し厳重な抗議と申し入れを行った」と報じた。
実際には、高市氏の立場は新しいものではない。
台湾が日本の安全保障にとって重要であることは、日本の2021年版防衛白書で明らかにされた。表紙に騎馬武者を描いた同白書は「台湾情勢の安定は、わが国の安全保障や国際社会の安定にとって重要」と記した。
東京大学の安全保障専門家、松田康博氏は2021年、全米アジア研究所に対し、それでも、日本の「戦略的曖昧さ」という基本方針は変わらなかったと語っている。
「これらの新たな表現は、台湾海峡をめぐる差し迫った危機感や懸念を反映しているにすぎず、大きな政策変更を示すものではない」
ある専門家は、ここ数日の動きは米政府で静かに進められている新たな親台湾政策、中国で再燃する強硬なレトリックを反映している可能性があると指摘した。
中国軍事問題の専門家ニール氏は「二つの要因があると思う」と語った。
「米国は、国際舞台での台湾の活動への干渉を弱めている可能性がある。これまで、米国は、海外の議会への接触に関して自制を求めることがあったが、今は、台湾の裁量に任せられている」
マルコ・ルビオ氏率いる米国務省は、IPACなどの団体に対して「かなり友好的な」姿勢を示しているかもしれない、とニール氏は述べた。
大阪にある中国総領事館の薛氏の発言についてニール氏は、「大阪は、沖縄や(日本の)琉球諸島などの問題について波風を立てる『戦狼』外交の一種の先駆けとなっている」と述べた。
戦狼外交とは、2010年代から2020年代初めにかけて、中国の当局者がメディアやインターネット上の批判に対して展開した、怒りに満ちた国家主義的なレトリックの手法である。
戦狼とは、2015年と2017年に公開された「ランボー」風の中国アクション映画2作から来ている。
この過激な手法は、中国に対する反発を招いたと一部で指摘され、2021年から2022年にかけてトーンダウンした。
ニール氏は、外交官が他国の指導者に対して「あのような全く外交的でない言葉」を用いることは「信頼を失う可能性がある」ものの、中国当局は薛氏の発言を批判していないと述べた。